※この記事は、管理栄養士資格を持つライターが書いています。
鉄分が多い食品と言えば「レバー」のイメージですが、レバーは調理することも味も苦手な人が意外と多い物です。レバー以外に、野菜でも鉄分を多く含むものがあるとは聞いているけど、忙しいと野菜料理を作る時間がないこともあるし、継続することが大切と言われると正直敷居が高いものになってしまいますね。
レバーを毎日食べることを思えば、野菜ならまだなんとか続けられるかもしれないし、それならなんとか頑張ってみようと思えるかもしれませんね。また、野菜ジュースで代用することも可能なのか?気になるところでしょう。
そんなあなたにぜひ読んでいただきたい記事になっています。
野菜からも十分な鉄分は摂れる?
鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄とに分類されます。
その違いは、小腸における吸収率です。
ヘム鉄というのは鶏レバー、豚レバー、牛レバー、豚もも肉、牛赤身肉、かつお、赤貝、あじ、まぐろ、いわしなどの動物性食品に多く含まれ、吸収率は10~20%程度です。
非ヘム鉄のほうはひじきや小松菜、ブロッコリー、いちご、バナナなど海草や野菜や果物など植物性食品に含まれ、吸収率は1~5%程度です。ヘム鉄と比較すると4分の1程度の吸収率であり、かなり効率が悪いことが分かります。たくさん食べても意外と身体に取り入れられていないものなのです。
効率がいいのはヘム鉄である動物性食品を摂ることですが、非ヘム鉄は吸収をサポートする栄養素と一緒に摂ることや調理法の工夫で吸収されやすくなるという特徴があります。
吸収を良くするサポーターは「たんぱく質」と「ビタミンC」です。非ヘム鉄は、ビタミンCの作用でヘム鉄に還元されて吸収されますし、たんぱく質は、鉄とともにヘモグロビンを構成する成分になり、鉄とくっつくことで腸からの吸収を促す作用もあります。
また、鉄分を積極的に摂取する必要がある人は貧血のことが多いと思われますが、その場合造血作用がある栄養素の「ビタミンB6」、「ビタミンB12」、「葉酸」と併せて摂ることもおすすめです。工夫次第では野菜からも十分な鉄分は摂れるということになります。
鉄分の多い野菜ランキングTOP30
100g中に含有する鉄分の多い野菜からご紹介します。同等の含有量の野菜は並記しました。
1位・・・きくらげ(乾燥):35.2mg
2位・・・菊のり:11.0mg
3位・・・干しずいき:9.0mg
4位・・・干しぜんまい:7.7mg
5位・・・パセリ:7.5mg
6位・・・よもぎ:4.3mg
7位・・・ドライトマト:4.2mg
8位・・・ふだんそう:3.6mg
9位・・・つまみな:3.3mg
10位・・・大根葉・切り干し大根:3.1mg
11位・・・つるな:3.0mg
12位・・・乾燥かんぴょう:2.9mg
13位・・・小松菜:2.8mg
14位・・・すぐきな・のびる:2.6mg
15位・・・枝豆:2.5mg
16位・・・そら豆:2.3mg
17位・・・からしな:2.2mg
18位・・・小松菜・つくし・かぶ葉:2.1mg
19位・・・ほうれんそう:2.0mg
20位・・・三つ葉:1.8mg
21位・・・春菊・高菜・しそ:1.7mg
22位・・・せり:1.6mg
23位・・・ふきのとう・おかひじき:1.3mg
24位・・・クレソン・チンゲン菜:1.1mg
25位・・・ブロッコリー・葉ねぎ:1.0mg
26位・・・菜の花・たらのめ:0.9mg
27位・・・にんにく・とうもろこし・くあい:0.8mg
28位・・・ごぼう・にら:0.7mg
29位・・・つるむらさき:0.5mg
30位・・・切り干し大根:0.4mg
(日本食品成分表2017 七訂より)
ただし、ここに挙げた野菜類は100gに対しての量になります。
乾物は鉄分量が多いですが、相当量使用しないとこれだけの量を取り入れることは難しいので、結局は乾燥させていない生の状態で含有量が多いものを利用するのが現実的と言えそうです。
鉄分は摂れる?鉄分の多い野菜ジュース6個
■①野菜一日これ一本 200ml
商品名:野菜一日これ一本 200ml
メーカー名:KAGOME
鉄分量:0.2 ~1.8mg
<原材料>
野菜(トマト、にんじん、メキャベツ(プチヴェール)、ケール、ピーマン、ビート、小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、赤じそ、しょうが、チンゲンサイ、カリフラワー、かぼちゃ、アスパラガス、たまねぎ、クレソン、紫いも、あしたば、グリーンピース、ごぼう、とうもろこし、レタス、セロリ、はくさい、キャベツ、だいこん、紫キャベツ、パセリ、なす)、レモン果汁
<栄養成分>
エネルギー:69kcal、 たんぱく質:2.4g、 脂質:0g、 炭水化物:15.8g、 ナトリウム:0 ~220mg、 糖質:13.7g、食物繊維:2.1g、食塩相当量:0 ~0.6g、 カリウム:700mg、カルシウム:27 ~66mg、鉄:0.2 ~1.8mg、マグネシウム:33mg、 ビタミンE:2.7mg、ビタミンK:11μg、葉酸:10 ~83μg、リコピン:16mg、 β-カロテン:2900 ~13000μg
■②栄養強化型 1日分の野菜 紙パック 200ml
商品名:栄養強化型 1日分の野菜 紙パック 200ml
メーカー名:伊藤園
鉄分量:1.56~2.90mg
<原材料>
野菜汁(にんじん、トマト、有色甘藷、赤ピーマン、インゲン豆、モロヘイヤ、メキャベツの葉、レタス、ケール、ピーマン、大根、白菜、アスパラガス、グリーンピース、セロリ、しそ、ブロッコリー、かぼちゃ、あしたば、小松菜、ごぼう、ゴーヤ、しょうが、緑豆スプラウト(もやし)、パセリ、クレソン、キャベツ、ラディッシュ、ほうれん草、三つ葉)、レモン果汁、水溶性食物繊維、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ビタミンC、ピロリン酸第二鉄
<栄養成分>
エネルギー96kcal、たんぱく質1.9g、脂質0g、ナトリウム32~293mg、糖質 17.4g、食物繊維 7~10g、カルシウム 135mg、鉄 1.56~2.90mg、マグネシウム 51mg、カリウム 770mg、亜鉛 0.1~0.8mg、ビタミンA 497~2476μg(β-カロテン 4720~21459μg)、ビタミンE 2mg、葉酸 8~72μg、ビタミンC 60~187mg、ビタミンK 13μg、ショ糖 5.3~16.7g、リコピン 3.3~9.3mg、食塩相当量 0~0.8g
■③充実野菜 緑の野菜ミックス 紙パック 200ml
商品名:充実野菜 緑の野菜ミックス 紙パック 200ml
メーカー名:伊藤園
鉄分量:1.3~2.9mg
<原材料>
野菜汁(ほうれん草、緑豆スプラウト(もやし)、セロリ、ケール、モロヘイヤ、にんじん、グリーンピース、きゅうり、インゲン豆、アスパラガス、ピーマン、小松菜、白菜、メキャベツの葉、あしたば、パセリ、クレソン、ブロッコリー、かぼちゃ、キャベツ、ラディッシュ、三つ葉)、果汁(りんご、ぶどう、レモン、オレンジ)、りんごエキス/ ピロリン酸第二鉄、ベニバナ黄色素、クチナシ色素
<栄養成分>
エネルギー70kcal、たんぱく質0.4g、脂質0g、炭水化物17.0g、ナトリウム0~40mg、糖類 15.3g、食塩相当量 0~0.1g、カリウム106~831mg、カルシウム 8~40mg、鉄 1.3~2.9mg、マグネシウム 7~28mg、リン 14~83mg、ビタミンK 0μg
■④鉄分 1日野菜プラス 200ml
商品名:鉄分 1日野菜プラス
メーカー名:雪印メグミルク
鉄分量:6.8mg
<原材料>
にんじん、トマト、アスパラガス、ブロッコリー、ケール、ほうれん草、小松菜、緑ピーマン、赤ピーマン、かぼちゃ、りんご、レモン、プルーンエキス/香料、ピロリン酸鉄
<栄養成分>
エネルギー67kcal、たんぱく質1.5g、脂質0.2g、炭水化物15.3g、糖質14.5g、糖類12.8g、食物繊維0.8g、食塩相当量0.13~0.60g、カリウム291~1016mg、カルシウム20~51mg、マグネシウム19~45mg、鉄6.8mg、亜鉛0.1~0.6mg、ビタミンC 0~8mg、ビタミンE 1.5mg、ビタミンK 10μg、葉酸41μg、ショ糖6.2g、リコピン6.0mg、β-カロテン 3000~20000μg
■⑤カル鉄飲料(フルーツ&キャロット)
商品名:カル鉄飲料(フルーツ&キャロット)
メーカー名:南日本酪農協同株式会社
鉄分量:2.6mg
<原材料>
果実(りんご、パインアップル)、にんじん、食物繊維含有デキストリン、ミルクカルシウム(乳由来)、糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)、乳酸Ca、酸味料、安定剤(ペクチン)、香料、クエン酸鉄Na
<栄養成分>
エネルギー113kcal、たんぱく質0.0g、脂質0.0g、糖質27.5g、ナトリウム7mg、カルシウム246mg、食物繊維2.8g、鉄分2.6mg
■⑥健康道場 粉末青汁
商品名:健康道場 粉末青汁(1包10g)
メーカー名:サンスター
鉄分量:不明
<原材料>
ブロッコリー、ケール、大麦若葉、明日葉、モロヘイヤ
<栄養成分>
エネルギー30kcal、たんぱく質1.5~3.5g、脂質0.3~0.9g、糖質2.7g、食物繊維3.6g、ナトリウム0~100㎎、カリウム250㎎、ビタミンK180μg、ショ糖0.4~1.1g
このように鉄分を多く含む野菜ジュース、青汁もあります。コンビニや身近なスーパーなどで購入できる商品もあり非常に手軽です。
原材料をご覧になるとお分かりになるように、かなりの野菜や果物を使用しています。ここに挙げられているだけの野菜を生で摂取することは難しいですが、コップ1杯程度でそれに相当する鉄分を補充できるのはとても便利ですね。上手に利用すると良いと思います。
鉄分摂取に役立つ野菜のおすすめ調理方法とレシピ3つ
鉄分を多く含む野菜をより吸収しやすくするには、調理の際以下のことに留意しましょう。
◯ビタミンCを多く含む食材と合わせる
ただし、ビタミンC(かんきつ類、キャベツ、いちご、ブロッコリーなど)は長時間の加熱や水さらし、空気に触れること、茹でるなどの調理法で破壊されることや水に溶け出てしまうという弱点があります。切った野菜を長時間水に浸けておくことや空気に触れた状態で放置することがないようにしましょう。また、できるだけ生の状態で摂るか、高温で短時間加熱する調理法がおすすめです。
◯たんぱく質を一緒に食べる
肉や魚等の動物性たんぱく質は、野菜に含まれる非ヘム鉄の吸収を高める働きがあるので一緒に摂ると良いでしょう。しかし、動物性たんぱく質であっても鶏卵や乳製品は、鉄の吸収促進はされません。
◯鉄製の調理器具で調理を!
鉄なべを使うと鍋の鉄が少しずつ溶けだし、食材に鉄がしみこまれ鉄量が増えるので、調理の際に用いてみましょう。
◯旬の食材を取り入れよう
鉄分に限りませんが、旬の食材は栄養価が高いことが知られています。季節に見合った食材をしっかり利用しましょう。
◯その他注意点
※タンニンが多いコーヒーや紅茶、緑茶は食事中や食直後は控えましょう。少し時間をおいて飲むようにしましょう。
※玄米やおからなど不溶性食物繊維の多い食品と一緒に摂ると鉄の吸収を阻害するので控えましょう。
※加工食品や清涼飲料水、菓子類に使用される「リン酸塩」という添加物は鉄の吸収を悪くするので控えましょう。加工品を利用する際は成分表示を確認するようにしてください。
■①菜の花とチキンの柚子香サラダ
約113kcal
鉄分0.6mg
<材料>1人分
菜の花:50g
鶏ささみ肉:20g
柚子しぼり汁:1ml
柚子皮:少々
マヨネーズ:10g
塩コショウ:少々
<作り方>
①菜の花を洗い、3センチ程度にカットする。
②湯を沸かして①をさっとボイルする。
③ささみは筋を取り、蒸すかボイルして細かく裂きます。
④柚子の皮をすりおろした後、しぼってしぼり汁を取っておく。
⑤茹でた菜の花をしっかりしぼって水けを切って、③と④と合わせる。
⑤マヨネーズと塩コショウを加えて和える。
<ポイント>
柚子のビタミンCが菜の花の鉄分の吸収を良くします。また、かんきつ類や梅干しや酢など酸味のある食材は胃酸の分泌を良くし、鉄の吸収促進効果があります。柚子のしぼり汁や皮は準備してから和えるまで時間がかかる場合は、ラップをして空気に触れないようにしましょう。
■②まぐろの若草揚げ
約220kcal
鉄分1.7mg
<材料>1人分
まぐろ切り身:60g
パセリ:1g
塩コショウ:少々
小麦粉:5g
卵:5g
パン粉:10g
揚げ油:適量
-付け合わせ
レタス:20g
レモン:10g
<作り方>
①まぐろの切り身に塩コショウ少々を振る。
②小麦粉、卵の順に衣をつけたらパセリのみじん切りとパン粉をつける。
③揚げ油を熱し、②をカラリと揚げる。
④レタスは千切りに、レモンは輪切りにする。
⑤揚げた魚に④を添える。
<ポイント>
まぐろはビタミンB6が豊富に含まれます。貧血対策には造血作用のあるビタミンB群もしっかり補っておきたい栄養素ですが、まぐろはビタミンB6を豊富に含むのでぴったりの食材です。パセリは生で付け合わせにして食べるほうが吸収率は良いですが、たくさん摂取するために今レシピでは衣に混ぜてみました。高温でカラリと揚げるのがポイントです。
■③白鮭の粕汁
約115kcal
鉄分1.2mg
<材料>1人分
白鮭:50g
大根:20g
人参:10g
大根葉:10g
豆腐:20g
だし汁:180ml
味噌:8g
酒粕:4g
<作り方>
①大根、人参はいちょう切りにする。
②大根葉は小口切りにしてさっとボイルしておく。
③豆腐はさいの目にカットする。
④白鮭は3枚卸にして、食べやすい大きさにカットする。
⑤だし汁に大根、人参を加えて柔らかくなるまで煮込む。
⑥白鮭、大根菜を加え火が通ったら豆腐を加えて5分程度煮込む。
⑦味噌と酒粕を加えて溶かす。酒粕がだまになりやすいので、先に味噌と合わせて、だし汁でのばしてから加えるようにしましょう。
<ポイント>
酒粕はビタミンB6も葉酸も含まれますので、造血作用がある食材です。鉄分の多い食材と合わせて使用すると効果がアップします。ビタミンB6の豊富な白鮭と一緒に鉄分の多い大根葉を加えるとより貧血対策になります。貧血で冷え症状がある人は温かい汁料理で身体の中から温めると良いですね。鉄なべで煮込むとより鉄の摂取量が増えますよ。長時間の加熱でビタミンCは破壊されやすいですが、汁ごと食べる料理の場合は気にする必要はありません。
まとめ
鉄分を多く含む食材はヘム鉄、非ヘム鉄含めそれなりに存在します。しかしながら、毎日継続してある程度の鉄の量を摂取しようと思うと、料理に飽きたり、作る手間、コストの問題などなかなか難しいのが実際です。
そんなときは野菜ジュースで補うのも一つの方法ですし、調理の際組み合わせや調理法に留意することで鉄の吸収率をアップできます。参考にしながら工夫してみてください。
栄養士の資格を活かして、美容関係の仕事をしています。