無酸素運動とは?5つの効果と筋力トレーニング方法7選

無酸素運動とは?5つの効果と筋力トレーニング方法7選

トレーニングやダイエットのときに有酸素運動とよく比較される無酸素運動。無酸素運動とは何なのか?無酸素運動の効果・メリット・トレーニング方法などを詳しく説明します。無酸素運動をトレーニングに効率的に取り入れていきましょう。


無酸素運動とは短距離を呼吸せずに走るだけのものではありません。
例えば筋トレも無酸素運動のひとつです。上手に筋トレを行えば、ダイエットに役立ちますし、将来のために身体の「保険」を作ることもできます。

無酸素運動の特徴とメリット、トレーニング方法をチェックしていきましょう。

無酸素運動とは?

無酸素運動とは「短時間で激しい強度が要求される運動」のことを指します。
息継ぎをしない≠無酸素運動ではないので、その点は注意が必要です。

例えば、競泳自由形の日本記録保持者である塩浦慎理さんは50mを息継ぎなしで一気に泳ぎ抜きます。こうした短距離を呼吸なしでやりきる競技のことを無酸素運動だと考えている方も少なくないのではないでしょうか。

実は、塩浦選手のような無呼吸を武器にするアスリートはレアケース。たとえば、陸上100m走は無酸素運動にカテゴライズできますが、選手たちはちゃんと酸素を使って競技しています。100mを全力疾走しながら選手たちはちゃんと走りながら呼吸を行っています。

もちろん、日常と同じように呼吸しているわけではありません。スタート前に深呼吸を繰り返して体内に酸素をためこみ、レース中は最小限の呼吸で走り抜きます。それでも、100m走るのに必要な酸素量の3割は、レース中の呼吸から得ているのです。

こういったレース中に呼吸する競技でも無酸素運動に含まれます。

無酸素運動で息が荒くなる理由

全力疾走した後は息がゼイゼイしますよね。吐く息が荒くなるのは無酸素運動の特徴です。激しい運動をする→体内から酸素がなくなる(無酸素)→息が荒くなる、という単純な構図ではありません。私たちの身体の中ではもっと複雑な働きが行われているのです。

激しい運動をすると体内から酸素がなくなってしまいます。エネルギーを生み出すために分解されたグリコーゲンという物質は、無酸素状態だと「乳酸」と呼ばれる物質に変化します。乳酸はかつて「疲労物質」と呼ばれ、筋肉痛の原因になると言われていたので(現在この考えは否定されつつあります)、聞き覚えのある方も多いでしょう。

「酸」の名前がつくように、乳酸は酸性の物質。無酸素運動によって生成された乳酸は血液を酸性に傾けようとします。私たちの血液は中性に近い弱アルカリ性ですから、身体のバランスを保つために、炭酸ガスの形に変えてさかんに体外へ排出しようとするのです。これが無酸素運動すると息が荒くなる理由なのです。

実は、有酸素運動の代表格であるマラソンも、競技レベルのアスリートになると、むしろ無酸素運動の割合が高くなるのです。無酸素運動と有酸素運動の違いをじっくりご説明していきましょう。

無酸素運動と有酸素運動の違い

無酸素or有酸素は運動の強度で変わる

短距離走、投てきやウエイトリフティングは無酸素運動。対してジョギングやウォーキング、エアロビクスは有酸素運動。この分け方は基本的に間違っていません。

重いバーベルやダンベルを持ち上げるような、短時間で激しい強度が要求される競技を無酸素運動と呼びます。動作の最中に息継ぎをするかどうかは、無酸素運動の定義に関係ありません。

なぜなら、軽めのダンベルを動かし続ける場合は、有酸素運動になってしまうからです。どんな運動でも負荷のかけかたによって無酸素運動から有酸素運動にスイッチすることができるのです。

有酸素運動は呼吸によって取り入れた酸素を利用して、体内の糖(グリコーゲン)や脂肪をエネルギーに変換して運動することを指します。

対して無酸素運動は、酸素に頼らずグリコーゲンをエネルギーに変えるやり方です。無酸素運動の場合、脂肪はエネルギーに使われません。「ダイエットには有酸素運動がよい」と言われるのはこのためなのです。

同じ競技でも運動強度が高まれば高まるほど、酸素の依存率は低くなり、無酸素運動の要素が強くなってきます。無酸素or有酸素を決めるのは運動強度の差なのです。

運動強度の決め方

同じ「走る」であっても、短距離走は運動強度80~90%、ウォーキングやジョギングなら運動強度50~70%と、運動強度に差が出てきます。

運動強度は心拍数をもとに算出しています。まず安静時の心拍数と、激しい運動をした後の最大心拍数を求めることから始めましょう。最大心拍数は運動しなくても、「220-年齢」で平均的な数値を求めることができます。

ここでは計算しやすいように、安静時の心拍数70、最大心拍数150だとします。この場合、その差は80。これを「予備心拍数」と呼びます。

運動強度70%の場合、予備心拍数の70%+安静時の心拍数がめやすの数値。80×0.7+70=126ですから、運動強度70%のジョギングをしたいなら心拍数126をめやすにすればよいのです。

「フルマラソンで4時間を切る」といった高い目標があるなら、運動強度を高めに設定し、心拍数126を超えていく練習も必要でしょう。競技レベルのマラソンランナーなら運動強度80%以上で走っています。

特にゴール前で順位がもつれた時は、マラソンでもクロスカントリースキーでも全力疾走。もう無酸素運動の領域で勝負しているのです。

もっと感覚的に無酸素運動か有酸素運動かを判断する方法もあります。
スウェーデンの心理学者ボルグの提唱した「主観的運動強度(RPE)」では、「ややきつい」と感じられるまでが有酸素運動、「きつい」と思える以上になると無酸素運動の割合が高くなると考えています。

無酸素運動のメリット・デメリット

両者はタイプの異なる運動法ですから、簡単に優劣をつけることはできません。有酸素運動と比較したときの無酸素運動のメリット、デメリットをよく知って、目的に応じて使い分けましょう。

無酸素運動のメリット

無酸素運動の筋トレは強度の管理がとても簡単。倍の負荷が必要であれば、単純に倍の重さのダンベルを持てばよいだけの話です。

有酸素運動のランニングなら、30分の倍こなそうと思ったら1時間走るしかありません。坂道ばかり選んで負荷を上げるのも大変ですよね。

無酸素運動のデメリット

無酸素運動の筋トレは脂肪を燃焼しないので、ダイエットの主力メニューには使えません。また高度な筋トレを行うにはやはり家よりジムに通うべき。家の周辺でこなせてしまう有酸素運動より手間とコストがかかる面はいなめません。

無酸素運動で得られる効果5つ

1. 身体をデザインできる

無酸素運動はダイエットに向かない反面、筋肉を大きく、強くする効果に優れています。
太い二の腕を作りたい、大きな背中になりたい、引き締まったヒップが欲しいといったボディメイク、ボディデザインにはうってつけの運動なのです。

代表的な無酸素運動である筋トレは主に、大腿四頭筋、大臀筋など身体の中でも大きな部位の筋肉を鍛えることができます。元から大きな筋肉がさらに大きくなるのですから、見た目、基礎代謝のアップなどトレーニングの効果が分かりやすいのです。

一方、有酸素運動の代表例であるウォーキングで主に鍛えることのできる筋肉は、ひらめ筋や腓腹筋といったふくらはぎの部位。決して大きな筋肉ではないので、劇的な変化もありません。もちろん、体脂肪を落とすことのできる有酸素運動は全身の引き締めに役立ちますが、比較的短い期間で分かりやすい効果を出せるという点では、筋トレに軍配が上がるのです。

2. 実はダイエットにも役立つ

ここまで書いてきたことと矛盾するようですが、実は無酸素運動はダイエットにも役立ちます。筋トレによって筋肉量が増えると基礎代謝がアップし、1日の消費カロリーが増えます。これまでと同じ食生活でも、使われるカロリーが多くなるため、痩せやすい体質になるのです。

ダイエットでありがちな失敗は、過度の食事制限によって筋肉まで落としてしまい、基礎代謝が下がってしまうこと。筋肉の落ちた分、体重も減るので一見順調にダイエットできているように思えますが、数か月後から停滞期が延々と続いてしまうのです。

食事制限だけのダイエットは失敗に陥りやすく、筋肉まで落としてしまうだけではありません。女性の場合は生理不順など身体的トラブルの原因にもなりえます。

食事の見直しは必要ですが、有酸素運動と、無酸素運動の筋トレを組み合わせることで、より効果的にダイエットできるのです。

3. 脂肪燃焼を促進する

「筋トレしてから有酸素運動すると脂肪が落ちやすい」と言う話を聞いたことがありませんか? 筋トレを行って15分後くらいから、脳の働きによって成長ホルモンが分泌されます。この成長ホルモン、筋肉を発達させる原動力になるだけでなく、代謝を上げて脂肪燃焼をうながす働きもあるのです。

そのため、筋トレ後さらに20~30分以上の有酸素運動を行えば、さらに脂肪を燃やしやすくなるのです。成長ホルモンには骨の強度を高める作用もあるので、加齢すると骨粗しょう症になりやすい女性におすすめ。筋トレ+有酸素運動の組み合わせはダイエットと健康づくりにうってつけなのです。

筋トレ後に代謝アップする時間には個人差がありますが、長ければ48時間持続すると言われています。仮に筋トレ後に急な用事が入って有酸素運動をこなせなかったとしても、翌日行えばまだ間に合います。1日で筋トレ+有酸素運動ではなく、筋トレの日、有酸素運動の日、休養日という3日間のローテーションを組んでも、十分に脂肪燃焼の効果を得られるのです。

4. 怖いサルコベニアを予防できる

高齢化社会を迎え、これまで以上にクオリティオブライフの重要性が意識されるようになりました。長寿であるだけでなく、何才になっても自分で立ったり、歩いたり、日常動作をこなせることが重要になってきたのです。

加齢が進むと「サルコベニア(筋委縮症)」が起こり、歩行困難などのトラブルを引き起こします。若い頃から筋トレなどで筋肉を鍛えていると、サルコベニアを起こしにくくなることが分かってきました。高重量による圧力に負けまいと骨も成長しますから、筋トレには筋肉だけでなく骨の強化にも役立ちます。

かくしゃくとした元気なおじいちゃん、おばあちゃんになるには、今から無酸素運動の筋トレを始めることが大切なのです。

5. 筋肉を正しく傷つけられる

筋トレとは筋肉を傷つける行為です。筋繊維に微細な傷を生じさせることによって、身体の回復力をうながし、より大きくより強い筋肉へと再生させるのです。

有酸素運動は負荷が低い代わりに、筋肉の再生をうながすほどの傷をつけることができません。やみくもに全力疾走を繰り返してもケガのリスクが高まるだけなので、あまりおすすめできません。

正しいウエイト、回数、フォームで行う無酸素運動の筋トレは、筋肉を正しく傷つけ、成長させることができます。筋肉の再生にはタンパク質などの栄養素が必須ですから、トレーニング前後の食事にも気を配りましょう。

筋トレはケガしやすい、と言うネガティブな印象を持っている方もいるでしょうが、やり方さえ間違えなければ故障のリスクを減らすことができます。

また、筋トレに比べてジョギングなら絶対安全というわけではありません。一歩々々走るたび、地面からの衝撃はほんの少しずつ骨にダメージを与えていきます。オリンピックにも出た長距離ランナーが引退後、自分の骨年齢を計ったら60才代だったというエピソードもあります。常人とは比較にならない練習量をこなす一流アスリートの例を出すのはオーバーかもしれませんが、有酸素運動だから絶対にケガしないという思い込みは禁物です。

無酸素運動の筋力トレーニング方法7選

ここでは無酸素運動のカテゴリーに属する筋トレ方法をご紹介します。ジムに通わずとも家でできるメニューを中心にセレクトしています。

筋肥大や筋持久力など目的によって回数、セット数も変わっていきますが、ここではボディメイクを目指すことを前提にご説明します。

10~12回で自分が限界だと感じるように強度を調節してください。筋トレ初心者は2セット、慣れてきたら3セットに挑戦してみましょう。セット間のインターバルは30~60秒です。痛みや違和感をおぼえたらすぐに中止してください。

ケガを防ぐために自分に合った回数、強度を選ぶことが必要ですが、もう一点、無酸素運動は長時間続けられないことも意識しておいてください。

15~20分程度の無酸素運動による筋トレを行うと、テストステロンなど成長ホルモンの分泌がうながされます。しかし実験によると、1時間以上にわたり筋トレすると逆にテストステロン分泌量が下がってしまうのです。

テストステロンは筋肉の成長、生殖機能の昂進など身体的な役割だけでなく、意欲や積極性をもたらすなどメンタルにも深くかかわっています。筋トレのしすぎで気持ちが落ち込んでしまった…という事態にならないよう、適切な練習量を心がけてください。

1. レッグランジ

足を一歩前に踏み出してから腰を落とす、下半身のトレーニングです。フロントランジとも呼びます。強度はダンベルで調節しましょう。

2. バックエクステンション

うつぶせになって胸の下あたりまで上体を起こす、いわゆる背筋運動です。

3. プッシュアップ

腕立て伏せです。バランスボールやイスの上に足を乗せて行うと、より強度アップできます。

4. ジャンプランジ

レッグランジで腰を上げる際、勢いよくジャンプするバリエーションメニューです。レッグランジの後、プッシュアップなど上半身のメニューを挟んでからジャンプランジに移行するのがおすすめです。

5. バービージャンプ

立った状態からしゃがんで腕立ての姿勢、足をすぐに引き寄せてジャンプという一連の動きを素早く行います。できるだけ高く跳ぶように心がけましょう。下半身を中心に体幹を含め全身をダイナミックに刺激するメニューです。

6. バイシクルクランチ

あおむけの姿勢で頭を上げ、右ヒジと左膝、左ヒジと右膝を交互にくっつけていきます。腹筋を中心に四肢のトレーニングになります。

7. ストレートアームプランク

腕立て伏せの姿勢で、胸から腹、膝、足首が一直線になるよう姿勢をキープします。回数ではなく時間で行うメニューです。30秒からスタートし、1分以上持続できるようにしましょう。

まとめ

無酸素運動は大きな力を瞬発的に発揮します。そのため、筋肉や関節を痛めやすいというデメリットもあります。また、脂肪燃焼によるダイエット効果が期待できないので、意識的に避けている方もいるでしょう。

しかし、無酸素運動には上でご紹介したようなメリットもあります。超高齢化社会を目の前にして、これまで以上に中高年層には運動の必要性が求められています。

中高年の筋トレはバーベルやダンベル、マシンに頼らなくても可能です。ゴムチューブを使ったり、誰かに押してもらうことで、筋肉に適度な抵抗(レジスタンス)をもたらす、「レジスタンストレーニング」を実践してみましょう。無酸素運動による筋トレを上手に取り入れることが、老後の生活クオリティを決めるかもしれません。

もちろん、有酸素運動も大切。有酸素運動には動脈硬化など血液疾患のリスクを下げる働きがあるので、無酸素運動と並行して実践したいものです。

今回は自宅でもできる筋トレメニューを中心にご紹介しましたが、同じメニューをジムのマシンを使って行うとより効果的です。ジムのマシンは自然と正しいフォームでトレーニングできるよう設計されているので、フォームの乱れをあまり気にしなくて済むのです。深い知識を持ったアスレティック・トレーナーから指導を受けられるのもメリットです。

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この記事のライター

トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。

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