汗をかきやすい時期になりますと体の臭いが気になってきますよね。人によって体臭の強さは違い、コンプレックスを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は体臭の原因から体臭の遺伝、体臭緩和につながる食べ物を紹介しようと思います。
これを読んで暑い時期を乗り切りましょう。
体臭の原因とは
まず初めに体臭に大きくかかわっている汗腺について説明します。
人間にはエクリン腺とアポクリン腺という2つの汗腺が存在します。全身にある約400万個の汗腺のうち、約300万個が「エクリン腺」、約100万個が「アポクリン腺」で、交感神経に支配されています。
すべての汗腺が活動しているわけではなく、活動している汗腺のことを「能動汗腺」といいます。この能動汗腺の数は2~3歳で決まると言われています。生涯その数は変わりません。
したがって、この時期に汗をかかないと汗腺そのものが活動しなくなります。日本人の能動汗腺は230万個程度と言われています。発汗ができないと熱中症、自律神経失調症になりやすくなります。
詳しくは後述しますが、自律神経の乱れによって体臭が強くなりますので、2~3歳の時期に常にエアコンをかけるなど汗をかけない環境で過ごすのは環境に適応しづらくなりますので注意が必要です。
加齢に伴い、活動量が減ることや筋肉量がへることで発熱量が減り、発汗の必要が減るため下肢末梢から徐々に大腿部、腰部へと汗腺の数が減っていきます。
■エクリン腺とは
エクリン腺は全身に存在しており、エクリン腺から分泌される汗は体温調節を担っており、ほとんど無臭です。
■アポクリン腺とは
アポクリン腺は腋窩(えきか)、乳暈(乳輪)、肛門の周り、外耳道、まぶたなどの特定の部位にある汗腺で、性ホルモンの影響を強く受けるため、思春期に活動が始まります。思春期から体臭が出てくるようになり、性ホルモンの作用が弱まる壮年期からは、アポクリン腺による体臭は減少することになります。
アポクリン腺からの分泌物は、アンモニア、脂肪、鉄分などが含まれています。
乳暈(乳輪)にあるアポクリン腺からは母乳中に脂肪滴を分泌し、外耳道にあるアポクリン腺は耳垢の形成に役立ちます。
体臭は主に皮膚の雑菌によって汗や皮脂に含まれているタンパク質や脂質が分解されて揮発化した物質が鼻粘膜に接触することにより感じられます。
■体臭の原因であるアポクリン腺の役割
体臭の原因はアポクリン腺ですが、アポクリン腺の役割とはなんでしょうか。
一説ではアポクリン腺はフェロモンを分泌する機能があったと考えられています。人間は進化の過程でこのフェロモンを受け取る機能が退化したため、アポクリン腺からの臭いをフェロモンとしてではなく悪臭として受け取るようになったということです。
腋臭症(ワキガ)はアポクリン腺が原因と考えられおり、形成外科ではアポクリン腺を除去する手術が行われています。
腋臭症と耳垢には関係性があり遺伝すると言われています。
耳垢には軟耳垢(wet)、乾耳垢(dry)があり、外耳道にあるアポクリン腺が耳垢をwetの性質にするためです。wetは優性形質、dryが劣性形質なので、夫婦のどちらかがwetでしたら、通常子供はwetになります。ただし、この形質は不完全形質ですので、必ずしもwetになるわけではありませんが、約8割程度発生するという報告があります。
腋臭症との関係ですが、腋臭症の98%がwetであり、wetの約8割に腋臭があるという関係があります。そしてdryで腋臭がある人は稀です。
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体臭と食べ物の関係
脂肪が多く肉類を多く摂る人ほど体臭が強いと言われています。
動物性脂肪や動物性タンパク質は体臭の材料で、アポクリン腺の働きが活発になります。
和食中心の生活をすることで体臭を軽減することが出来るという文献があります。
体から食べ物のニオイがする?!
体臭の臭いの成分は全て食べ物として摂取したものが原因となっているので、食事と体臭には密接な関係がありますが、食べ物の持つ臭いがそのまま体臭として出ているわけではありませんね。
体内へ取り込まれた食べ物や臭いの物質は、体内で分解されてATPなどのエネルギーや筋肉などの体内を構成するものとして合成されたり、脂肪のように蓄積されたり、そして体外へ排泄されたりするためです。そのため、納豆を食べたからといって納豆の臭いが体臭として出るわけではありません。
しかし、ニンニクやニラのような食べ物は別です。ニンニクやニラなどに含まれるアリシンは硫化アリルとも呼ばれる硫黄化合物の一種ですが特有の強烈な臭いの元です。ニンニクなどの野菜を刻んだり熱を加えることでアリインという物質が傷つき、アリイナーゼという酵素と反応することによって生成されます。そして、体内に取り込まれると、アリシンがアリルメチルスルフィド、アリルメチルメルカプタンに代謝されるのですが、この代謝物自体も臭いの元となりますので体臭がきつくなる要因となります。
先ほど納豆の話をしましたが、納豆を食べてすぐは呼気から臭い成分が含まれていますので臭いがします。胃の調子が良くなく消化に時間がかかったり、胃酸が逆流する状態になりますと口臭の原因となります。肝機能が低下している場合でも代謝能力が下がっているので食べ物の臭いのままの呼気が強くなりますし、時に体臭として感じられることもあると思います。
体臭が消える?! 体臭の改善対策におすすめの食べ物21個
■1. 納豆
納豆には整腸作用があります。腸内環境が悪いと、体臭がきつくなりますので、腸内環境を整える効果がある納豆には体臭改善効果があります。しかし納豆自体に臭いがありますので、食後の口臭対策は必要です。
■2. 牛乳
牛乳に含まれるタンパク質によって胃内容物が発する臭いを吸着し、口臭改善に繋がります。ニラ、ニンニクなど臭いがきつい食品を摂った時に有効です。しかし牛乳中に含まれる乳糖を分解できない、乳糖不耐性の人が摂取すると腸内で腐敗し、有害物質が発生することで体臭に繋がることもありますので、注意が必要です。
■3. ヨーグルト
ヨーグルトも納豆と同様に整腸作用がありますので、ヨーグルトを摂取することで体臭改善に繋がります。ただし、ヨーグルトの乳糖不耐性の人では逆効果となります。大腸内で分解されないままの乳糖が腐敗し、日本人は乳製品を摂る習慣がなかったため、乳糖不耐性の人が多いです。ただ、牛乳に比べると乳糖を乳酸菌が増殖するときに使っているため乳糖不耐性の方でも問題になりにくいです。
■4. カボチャ
カボチャにはβカロテンという抗酸化作用のある成分が含まれています。そしてビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、血行を促進する作用があります。
■5. 赤ピーマン
赤ピーマンにはビタミンCが170mg/100gと豊富に含まれています。ビタミンCは抗酸化作用に優れています。
■6. トマト
トマトにはリコピンという抗酸化作用のある成分が含まれています。またβカロテンも含まれており、こちらも抗酸化作用がありますね。詳しくは後述しますが、活性酸素は体臭の原因となります。トマトは抗酸化作用により体内の活性酸素を減らすことで体臭予防に繋がります。
■7. 海藻類
海藻にはフコイダンなどの水溶性食物繊維が豊富に含まれています。腸の粘膜を守る作用と善玉菌を増やす効果があり、腸内環境を改善させることで体臭を予防することになります。
■8. キノコ類
キノコ類には不溶性食物繊維が豊富に含まれています。便に嵩を与え、蠕動運動を促進することで便通を改善します。便秘による体臭発生を予防することになります。
■9. コーヒー
コーヒーに含まれるタンニンには強い消臭効果があります。またクロロゲン酸には抗酸化作用があり、皮脂の酸化を防ぐ効果があります。コーヒーを飲むことで、胃酸分泌が多くなりますので、消化不良による体臭を改善させると考えられます。
ただし、カフェインにはメリット、デメリットがあります。カフェインには便秘状態を改善させる効果がありますので、便秘による体臭を改善させますが、カフェインの交感神経亢進作用によって体臭が発生する可能性があります。
交感神経が亢進されると、皮脂分泌量が増え、その油分が酸化されて体臭となります。
そして、覚醒効果によって睡眠の質が低下・不眠となれば、内臓機能が低下することになり、ストレス、代謝低下、自律神経の乱れによって体臭の原因となりえます。
また過剰なコーヒー摂取はクロロゲン酸を過剰に摂ることになります。クロロゲン酸は鉄と結合しやすいため、体内の鉄分を減少させて血行不良の原因を作ります。血行不良になると唾液量、酸素量の低下を引き起こすため口臭などの体臭の原因となります。
あと、コーヒーには利尿作用があり、過剰摂取により体内の水分量が不足することで汗が濃縮されることになり、体臭がきつくなることもあります。
■10. 緑茶
緑茶に含まれるカテキンはアリシンなどの臭い成分と結合して臭いを軽減する効果があります。また抗酸化作用もあります。
■11. リンゴ
リンゴに含まれるポリフェノールには抗酸化作用があり、臭いを抑えてくれます。食物繊維が豊富で腸内環境を整える効果もあります。リンゴの皮には多くのポリフェノールがありますので、皮ごと食べるのが効果的です。
■12. ホウレンソウ
ほうれん草にはβカロテンが豊富に含まれています。βカロテンはビタミンCと一緒に摂取することで抗酸化作用が高まりますが、ほうれん草にはビタミンCがレモンの2倍含まれています。食物繊維も豊富で腸内環境を整える効果もあります。また、アリルメチルスルフィドを除去する効果があります。
■13. ゴボウ
ゴボウにはポリフェノールであるクロロゲン酸が豊富に含まれており、抗酸化作用があります。また水溶性食物繊維が豊富で、整腸作用とともにアリルメチルスルフィドを除去する効果が高い野菜です。
■14. ウド
ウドにはクロロゲン酸、フラボノイドが含まれ抗酸化作用があります。アリルメチルスルフィドを除去する効果の高い野菜です。
■15. ウーロン茶
ウーロン茶にはタンニンが含まれています。タンニンには物質を吸着する効果があるため臭い物質を吸着して消臭効果が発揮されます。ニンニクなどを摂取した後アリシンが変化したアリルメチルスルフィド、アリルメルカプタンを捕捉する効果があります。
■16. 紅茶
紅茶にはタンニンが含まれています。生体内消臭効果があり、アリルメルカプタンを捕捉する効果があります。カフェインが含まれているため摂取のし過ぎには注意が必要です。
■17. マテ茶
マテ茶には抗酸化作用のあるフラボノイド、ポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノール含有量は緑茶の約3倍です。アリルメチルスルフィドを捕捉する効果もあります。
■18. プルーン
プルーンには食物繊維が豊富で、抗酸化作用のあるポリフェノール、βカロテン、ビタミンEが含まれています。他にもビタミンB群、ビタミンAなどの栄養成分が含まれています。
■19. 梅干し
梅干しはアルカリ性食品の代表格です。通常、健康な人の血液はpH7.36~7.44の弱アルカリ性ですが、酸性に傾くと活性酸素が生じやすい環境となります。活性酸素が生じやすくなることでも体臭はきつくなりやすいですが、体の抵抗力が落ち、様々な不調や病気になりやすくもなるため体臭となりやすいです。梅干しはこの酸性傾向をアルカリ傾向に保つ役割があります。
また、梅干しにはクエン酸が含まれています。クエン酸には体臭を消す作用があると言われています。アポクリン腺から分泌される汗にはタンパク質が含まれていますが、クエン酸には体外に排出されるタンパク質を抑える働きがあるためです。
ただし、梅干しには多くの塩分が含まれているため、摂取のし過ぎは健康に良くありません。
■20. こんにゃく
こんにゃくは梅干しと同様にアルカリ食品です。食物繊維を豊富に含んでいるため整腸作用もあります。
■21. しいたけ
しいたけもアルカリ性食品です。食物繊維が豊富に含まれているので整腸作用があります。
体臭がきつくなる!体臭の原因になるNGの食べ物5個
■1. 肉類
肉類にはタンパク質が豊富に含まれていますが、タンパク質を分解する際にはアンモニアが発生します。通常であればアンモニアは肝臓で尿素へ変換されるのですが、肝臓、腎臓の機能が低下している時にはアンモニアが尿素へ変換されず呼気や体臭となります。
また、タンパク質の過剰摂取は腸内環境を悪化させ、ガスが多く発生することになります。このガスは血液中に溶け込み、尿、皮膚、呼気を通して体外へ排出されることになります。
ガスが体外へ排出されるときに体臭として感じることになります。
■2. ニンニクなどのアリシン含有食品
アリシンが多く含まれる食品としては、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、長ネギ、玉葱、エシャロットなどがあります。健康には良いのですが、体臭に影響を与えます。
アリシンが体内で分解されると、アリルメチルスルフィド、メチルメルカプタン、アリルメルカプタンなどの臭い成分へ変化して血液中へ入り呼気や体臭となります。
■3. 動物性脂肪
動物性脂肪は牛脂、ラード、バター、卵黄などに含まれる脂肪分のことを指します。
皮脂腺やアポクリン腺の活動を過剰に刺激したり、アラキドン酸を合成し、アラキドン酸カスケードを過剰に進行させ、炎症反応が起きやすくなります。
■4. リノール酸
リノール酸は植物油に多く含まれていて、特に紅花油(サフラワー油)、コーン油に多く含まれています。リノール酸の不飽和化、炭素鎖の長鎖化の進行によりアラキドン酸が合成され、そこからアラキドン酸カスケードと呼ばれる生体反応を経ることでプロスタグランジンなどの生理活性物質の原料となる他、細胞膜の膜脂質として使われます。
食事からの摂取が不可欠のため体内にとって必須ですが、過剰摂取によって余分な皮脂を皮脂腺が外へ排出しようとして皮脂腺を詰まらせることになります。皮脂腺が詰まると皮脂腺の中に活性酸素が発生します。これは脂肪酸やアルデヒドのような体臭成分を産生することになり体臭を引き起こします。
この酸化の過程で更に活性酸素(フリーラジカル)や過酸化脂質が発生することで更に酸化が進むことになります。このことを脂質過酸化反応といい、フリーラジカルによる連鎖反応で細胞に傷害を及ぼします。抗酸化作用をもつというのは、このフリーラジカルを消去する働きがあるということで、フリーラジカルスカベンジャーとも呼ばれています。過酸化脂質とは中性脂肪やコレステロールが活性酸素によって酸化されたもので、体臭のみならず動脈硬化やがん発生の原因となると考えられており、フリーラジカルスカベンジャーは動脈硬化、がん予防に役立つと考えられています。
■5. 辛いもの
辛いものを食べると汗をかくと思います。これは汗腺を刺激して発汗を促すものが多いためです。汗が皮膚表面の雑菌と混ざり合い、雑菌が繁殖することで体臭が発生します。また辛い物を過剰に摂取することで腸内環境を悪化させることになりますので、体臭に悪影響を与えます。
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まとめ
食品がもつ体臭改善効果をまとめますと、
①腸内環境改善効果
②抗酸化作用
③体内のpH酸性傾向の中和効果
④臭い物質吸着効果
⑤臭い物質の分解効果
と大まかに分類できます。
いずれか、もしくは複数もつ食品を摂ることが効果的です。
薬剤師をしています。ヘルスケア分野の情報をわかりやすく説明します。