「痛み」があると天気が良くても、休みの日でも憂鬱になりませんか?
何もしたくない・・・。けど忙しい日常は待ってくれませんね。特に「腰痛」って仕事をしてても、家事をしてても、寝てる時に寝返りをうっても、何をしても痛みが伴いますよね。
逆に考えると「動作」を行うことで「腰痛」が出現してしまう=何をするにも腰(脊柱)が関わってくる!のです。
ここでは腰痛が起きる原因から、ストレッチ方法、また腰痛にならないために何をした方が良いかなどを、整形外科の理学療法士がお伝えしていこうと思います。詳しいことを知りたい人向けにメカニズムについても詳しく解説しています。
腰痛が起こる原因6つ
腰痛が起こる原因といってもさまざまです。筋肉が背景にある場合や、骨、関節自体に問題がある場合。また腰だけでなく他の部位に原因がある場合があります。
腰が痛くなる原因はズバリ「腰部筋の緊張」がほとんどだと思います。
会議やPC作業などでの長時間の座位姿勢、運動をしてない人が激しい運動をした時などは腰痛が起きます。
ではここで腰痛の種類と原因、対処方法についてお話ししていきます。
■①急性疼痛(とうつう)
急性疼痛:急な運動を行ったり、過度な動きのせいで、腰に大きなストレスが起きることで引き起こさせた痛みのこと(ぎっくり腰)を言います。腰の捻挫とも言えます。
<対処方法>
まず急性腰痛は冷やすこと!そして安静!です。寝返りを打つのも痛いという方は膝を曲げて、楽な姿勢を取りましょう。またそのような方が起き上がる時はまずは膝を曲げて寝返りを行い、横向きになります。ベッドであれば、先に足を垂らして横向きのまま肘→手を使い起き上がるようにしてください。
この時期にむやみに動かしたりするとより悪化する恐れがあります。部活生、肉体労働の人は部活を休む、体を休めることに専念してください。どうしても休むことができないのであれば、必ずコルセットを着用してください。この時期に無理をすると、腰だけでなく他の部位を痛めることも多いです。できる限り「身体を休める」ことに専念してください。ストレッチは痛みが引いてきたとき(炎症が治癒してきた時)に行うようにしてください。
■②慢性的な疼痛
慢性的な疼痛:なんらかの疾患、障害により継続的な痛みに悩まされる痛み
<対処方法>
慢性腰痛は温めることで痛みは緩和されます。よく整形外科などではホットパックなどがありますが、温めることで筋肉が弛緩し、血液循環が良くなり痛みが軽減するということが目的です。自宅では温湿布がおすすめです。
慢性疼痛のメカニズムを簡潔に上記にまとめています。
もっと簡単に言うなれば、
「痛みがでました」
⇒「痛くないようにしよう」
⇒「痛くないように膝をつかって腰を下ろそう」、「痛くないように体を曲げておこう」などの代償動作を行う
⇒「他の部位にストレスがかかり、痛みがでる」
⇒「こうやると痛いから」という恐怖心にかられる。
という流れです。
このようにして急性疼痛から慢性疼痛への変化してきます。
■③骨、神経に明らかな病変があるもの
骨、神経に明らかな病変があるもの:加齢による椎間板や関節の変形、変性で痛みが起こるもの(腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど)
<対処方法>
腰部脊柱管狭窄症、腰部椎間板ヘルニアによる痛みは神経圧迫による痛みです。痛みを軽減させるにはそれぞれのやり方があります。この疾患には「前かがみになると楽になる」といったように疾患ごとに疼痛軽減姿勢や禁忌姿勢などもあります。
■④内臓からくる腰痛
内臓からくる腰痛:腎臓に異常が起きると痛くなるといいますが、一般の方だと判断しにくい可能性があります。不安な場合は内科へ行かれることをお勧めします。
■⑤心因性の腰痛
心因性の腰痛:精神的なストレスにより痛みがでてくることがあります。学校や仕事によって腰痛が増悪する方もおられます。また腰痛によって動くことが制限され、それによりうつ状態になる方も少なくありません。
元々うつ病で悩まれている方にも腰痛が多く、痛みは腰だけでなく肩こり、頸部痛、頭痛も合併していることが多いです。うつ病が回復に向かっている方で、外にでることができる方は外出を。また身体を動かすことができる方はストレッチをすることで、痛みが大幅に軽減します。
■⑥運動不足による腰痛
運動不足による腰痛:腰痛の原因には運動不足による腰痛もあります。
運動不足で腰痛になるって?!と思いがちですが、腰痛を引き起こす原因として股関節周囲筋、膝周囲筋、上肢(肩甲帯周囲筋)、頸部筋の筋が関係してきます。
仕事はデスクワークなのに、無理な運動なんてしてないのに・・・という方は、それが原因なのです。デスクワークの場合は特に体幹、下肢の筋肉を使うことがないので、身体の筋肉に刺激が入りません。骨や筋を丈夫にするには「刺激」が必要になります。脊椎に刺激を与えることで椎間板の水分が出て、動きを促すということも言われています。
腰痛といってもさまざまな種類があるように、対処方法もさまざまです。
ストレッチで改善できる腰痛の種類
ストレッチで改善できる腰痛の種類としては筋肉由来の疼痛です。
運動不足が原因の腰痛などには効果がかなり期待できます。
ストレッチができる対象者としては
●現在全く腰痛がない人
●過去に腰痛があって困ったことがある人
●デスクワークが多い人
●肉体労働で腰に負担がかかる人
●運動がしたいけどする時間がない人
痛みがある場合はNGです。これは守ってください。
ストレッチは必ず
「呼吸を行いながら」
「程よい痛みを感じるレベル(筋肉が伸びているのを感じながら)」
「反動をつけない」
「伸ばす時間は15秒~30秒」
「無理な体勢のストレッチは無理に行う必要はない」
です。
腰痛改善に効くストレッチの方法13選
よく患者さんに「腰が痛いんです。腰だけリハビリをしてください」と言われます。おそらくそれを患者さんが言って腰だけにアプローチしている理学療法士さんがいたらやる気がない、もしくは患者さんに嫌われたくない一心なセラピストかもしれませんね。
腰というのは体幹にあります。体幹は腕にも足にも繋がる「体の幹(みき)」なのです。腰だけにアプローチをしても痛みが軽減することはないでしょう。もし一時的に軽減しても再発するケースが多いです。
私が診てきた腰痛で病院に来た人の多数は、背面の筋肉はもちろん固くなっていますが、腹部や肩甲帯、頸部(首)の筋肉もバリっバリに固くなっています。原因が頸部や肩甲帯から来ているのか、腹部からきているのか、腰部が固いから肩甲帯などが固くなったのか起点はさまざまですが、腹部や肩甲帯、頸部、股関節周囲など全身が固いことで、腰部にストレスがかかり、痛みが発生してしまいます。
そのため体幹だけのストレッチでは効果は表れませんので、ここでは頸部、肩甲帯周囲筋、体幹、下肢に対するストレッチを中心に行っていきます。
■1. 頸部の前屈、後屈
頸部のストレッチ1つ目です。
この図は前屈です。後屈は天井を向く動作です。
心地よい痛みを感じる程度におしていきます。
■2. 頸部の側屈
頸部のストレッチ2つ目です。
椅子に座り、姿勢を正して、首を横に倒していきます。(左右とも)
ストレッチに慣れている方は次のこともやってみてください。
正面に向いていた顔を少し右に向き、同じように倒していきましょう。顔を正面にした状態とは違う筋肉が伸びていきます。(左右とも)
■3. 肩甲帯のストレッチ(前面、後面)
この図は後面(背中)を伸ばしています。
前面は手を後ろに組んで、胸を張るような動作です。意外と肩甲骨が固い人が多いのでしっかり伸ばしていきましょう。
■4. 体幹(背面)のストレッチ
体を丸めるようにし、目線は自分のおへそを見るようにしましょう。この時も呼吸は忘れずに!
■5. 体幹(前面)のストレッチ
次は逆に体を反らしていきます。ポイントはお尻を突き上げること、そして顔は正面を向くようにしていくことです。
■6. 大殿筋、梨状筋、ハムストリングスのストレッチ
右の膝が外側に向くように倒し、90°になるように曲げます。
反対側の足のつま先はたてたままです。身体を前に倒したりすると大殿筋が伸びていくのがわかります。
■7. 股関節周囲筋のストレッチ
■8. 股関節周囲筋のストレッチ
■9. 腸腰筋のストレッチ
腰部のインナーマッスル「腸腰筋」のストレッチです。
この時腰椎伸展位で大腰筋を。腰椎屈曲位で腸骨筋を選択的にストレッチが可能です。
■10. 大腿直筋のストレッチ
大腿直筋も二関節筋で骨盤に付着しています。
この筋肉は歩行にはもちろんですが、立つ、座るという動作に関わる大事な筋肉です。高齢の方で立てない、歩けない人はこの筋肉が弱くなっている人が多いです。しっかり柔軟にし、鍛える必要がある筋肉です。
■11. 下肢のストレッチ
これはアキレス腱を伸ばす、大腿四頭筋を伸ばすという下肢全体のストレッチになります。
■12. ハムストリングスのストレッチ
大事なことは「膝を伸ばして行う」ことです。
理由はハムストリングスは骨盤にも、膝関節にもまたぐ「二関節筋」だからです。
ハムストリングスが固い人はまずは「①の図」からスタートしてください。「①の図」をしても伸びを感じなくなれば「②の図」へ進みましょう。
また「②の図」も容易にできるようになったら、足首を背屈させるとより一層伸びます。
<①の図>
<②の図>
■13. 深呼吸
深呼吸をしっかり行う事により、各関節が動き、呼吸筋の横隔膜、肋間筋への促しにもなります。肋骨は脊柱(背骨)と繋がってますよね!しっかり肋骨が動けば脊柱の動きもよくなるのです。深呼吸はどこででもできるので、ぜひ行ってみてください。
この下記の図は就寝前にでも行ってください。深呼吸はリラクゼーション効果もあります。
①お腹をへっこませる
②床を腰で押すように力を入れる
これは骨盤前後傾の動きも引き出してくれます。
腰痛予防に有効なこと5つ
■1. 痛みがあるときは動かさない
筋肉の周りには関節がありますが、関節自体の動きに問題がある場合はいくらストレッチをしても痛みは軽減せず、逆に助長させることが多いのです。整骨院などに行って痛みが増したという人も多いと思います。
なぜ無理な動きを行うと痛くなるのか。それは筋肉に問題があるのではありません。筋肉は関節に付着しています。関節の可動する範囲(関節可動域)を超えてしまうことによって、筋肉の筋繊維をぶちぶちっと破壊してしまうのです。要するに筋肉の前に関節の動きを良くしてあげないと、いくら整骨院に行き、むやみやたらに過度な力で捻ってもらったり、ストレッチをしてもらっても治りません。痛みがある時は「ストレッチ」も、「痛みがでる動作」もしないことです。
■2. 関節内の動きを良くする
関節内運動といって「関節の中の動き」を良くし、関節運動が良くなることで関節可動域を拡大させ、日常生活の動きに支障がない関節可動域作りをしなければいけません。日常生活において支障がない関節の動き→ストレッチ、運動をしても支障がない関節の動きを手に入れることが大切です。
■3. 適度な運動をする
時間がなくて運動ができない!そんな方はラジオ体操を毎日やってみましょう。ラジオ体操は無理なくできる運動で、また馴染みがありますし、広い場所を使わずとも効率の良い運動ができます。またストレッチ前の準備運動にもなります。ぜひ行ってみてください。
■4. しっかり睡眠をとる
上記にも記載しましたが、精神的なもので痛みが出現してきます。そのために睡眠をしっかり取ることが大切です。睡眠が不足すると人はマイナス思考に陥りやすいです。また腰痛がある人は腰痛があることでストレスを感じているため、仕事、学校、スポーツに影響が出やすく、精神的に追い詰められることもあるでしょう。しっかり身体を休めることで痛みの軽減だけでなく、精神面の安定にもなります。
■5. ちゃんとした病院選びをする
腰痛が起きた時、「ストレッチ」や「腰痛体操」を自宅でするように言う病院もありますが、痛い時は無理に体を動かしてはいけません。はっきり言ってそれをまだ行っている病院は古い病院だと判断して良いでしょう。
何度も言いますが、「痛みがなぜ起きているか」で、することが変わってきます。それがわかっていない理学療法士にあたると腰の痛みは増します。また整骨院にいる柔道整復師にも同様のことが言えます。特に最近多い「◯◯整体」「〇〇整骨院」には医療の知識はない方が多くおられます。整形外科に居る理学療法士と、整体にいる柔道整復師とは全く異なる職種で、勉強内容も違います。(決して整骨院が悪いというわけではありません)
しっかり治したい方は整形外科を、とにかくマッサージなどで一時的な痛みの軽減を図りたい人には整骨院をお勧めします。
また鍼灸院にいくのも一つの手です。鍼灸はトリガーポイントに針を刺すので、かなり効果的と考えます。ちなみに関節内運動は自身で行うことはできません。理学療法士はこの関節内運動を取り入れて、ストレッチを行っています。(SJFという手技を行っている病院が良いと思われます)これができる理学療法士、病院も少ないので、病院選びは慎重に行って下さい。
知りたい人向け!腰痛が起きるメカニズムと筋肉の関わり
■筋肉は固いほうがいいわけではない
筋肉と聞くと「固い」「力こぶ」をイメージしますが、患者さんなどの一般の方は「筋肉は固ければ固い方がいい!」と思っている方が多いです。しかし固いことがいいわけではありません。力を入れると固くなり、力をいれないと柔らかい。実はこれが理想の筋肉なのです。
自分の体全身を触って今どこが固いですか?今腰が痛い人はもちろん腰の筋肉が固いと思います。固いとなぜいけないの?と思う方もいますよね。
簡単に言えば、筋肉が固い→血液循環が悪いということなのです。血液循環が悪いといつまでも痛みの物質がそこに居座るのです。細かく説明をすると意味がわからないと思いますので、なーんとく理解する程度で良いと思います。とにかく凝り固まった筋肉は柔らかくする必要があります。
腰というものは他の部位に比べて構造的に不安定な場所なため、固定性が求められます。しかし常に緊張していると先程言ったように痛みが出やすいのです。特に腰椎は脊椎の動きの中では屈伸運動の役割を多くもっています。(胸椎は主に回旋要素)そのため日常動作において一番疲れている場所です。
■筋肉から見る「腰痛」が起こる理由
さて腰痛はなぜ起きるのでしょうか。理由はいろいろあるとは思いますが、ここでは筋肉に注目してお話ししていこうと思います。
腰の周りには、大きくいうと「腹筋」「背筋」があります。よく「腰痛を軽減させるには腹筋をすればいい」と、従来の腹筋をされている方も多い様ですが、間違っています。
腰を安定させるためには、アウターマッスルだけでなく、筋肉の深層部にあるインナーマッスルをしっかりストレッチし、筋力増強運動を行わなければいけません。
腰部を司るインナーマッスルは「腸腰筋」です。
※「大腰筋」と「腸骨筋」、2つを合わせると「腸腰筋」。
この腸腰筋は高い段差を登る時に発揮されます。普通の段差では腸腰筋はそんなに優位に働きません。だからこそこの筋がとても大事なのです。
昔から行って来られた腹筋は「腹直筋」がメインの筋としてトレーニングされますが、腹直筋が優位になることで腰痛が出現するということが、近年言われています。筋力をあげるにはまずは痛みがなくなり、十分な筋の柔軟性(伸張性)を出してから行いましょう。
さて、上の画像をご覧ください。この画像を使ってお伝えしたいことは、下肢、特にハムストリングス(ふとももの後ろの筋肉)の柔軟性が乏しいことでどこに影響がくるかということです。ハムストリングスが固い(短縮、もしくは伸張性が低下)と腰痛に発展しやすいです。
それはなぜか。
<ハムストリングス>
※ハムストリングスは3つの筋肉「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」で構成されたものを指します。
ハムストリングスは大腿骨(ふとももの骨)に付着しておらず、腸骨(骨盤を形成する骨)、脛骨(ふくらはぎの骨)に付着しています。もしハムストリングスがしっかり伸びていないとすれば、自然と骨盤、腰に影響してきます。また、膝関節や足関節にも影響が出てきます。
ハムストリングスが固い→骨盤の動きが悪い→腰椎に負担がかかる→腰痛発生→それによる代償動作による疼痛部位出現という形になります。
※ハムストリングスが固いと下図のように、ハムストリングスが短縮すると骨盤が後方に引かれます。
ハムストリングスがしっかりとした柔軟性(伸張性)がないと上記の画像のように膝が曲がる、猫背になるなどといったことにも繋がりやすくなります。バランスをとるために構造的にそうなっていくと考えてもらうといいかもしれません。
しかしこれは「ハムストリングス」だけに原因があるのではありません。全身の筋肉が関係してきます。なぜならば筋肉は個々に存在しているのでないからです。
デスクワークだけなのに腰の痛みがある方は多いのです。その理由は下記の画像を見ていただけるとわかりやすいのではないでしょうか。
パソコンは顔を上げてできるわけではありません。顔、首はどうしても下向きですよね。姿勢を正して顔を下に向けてみましょう。どこが痛みますか?
おそらく首に負担がくるでしょう。では姿勢を楽にして(だらしない座り方)、腕をデスク上に乗せてみましょう。この時はおそらく首の痛みは感じないと思います。しかし腰に手を当ててみてください。腰の筋肉が固くないですか??
要するに楽な姿勢でも腕をデスクに上げるという動作だけで、腰に負担はきているのです。それに伴い、電話を取ったり、電話を耳にかけてメモをとるなどの複合的な動作を行うとさらに腰に負担がかかってきます。
あー疲れた。といって背伸びを急にするのも要注意です。この時に痛みを作りやすいです。背伸びをするなら立ちましょう!立って背伸びをする、腕を伸ばすというのは腰には負担は来ません。
まとめ
腰痛の原因やストレッチ方法、腰痛のメカニズムなどを説明してきました。
ストレッチはあくまでもストレッチです。筋力増強運動を行わなければ、また再発する恐れがあります。
直接的に腰への負担が来ないような運動を毎日行うことが大切です。食事、睡眠、運動の3つを十分に!そしてバランスよく!行うことで心身ともに健康な身体作りができます。