最近、何だか物忘れが多くなった。覚えたと思ってもすぐ忘れてしまう。
年齢的に仕方がないのかな?子どもの頃は覚えが良かったのに、どうしてだろう?また、勉強の効率を上げるために、記憶力を良くしたいけれど、どうしたらよいのだろう?
そんな悩みをかかえている人はいませんか?
記憶の仕方を工夫することで、記憶力をアップすることも不可能ではないんです。
ここでは、記憶のメカニズムと記憶力を高めるトレーニング方法、そして、脳に良い食べ物についてご紹介します。
記憶力とは?
脳には、約1,000億個の神経細胞があるといわれており、お互い繋がりあって、ネットワークを作り、ぎっしり張り巡らされています。
記憶とは、情報を覚えること、または、覚えておくことをいいますが、脳の中にある神経細胞(ニューロン)同士が繋がり合うネットワークを作ることと考えられています。
そして、記憶力とは、記憶するための能力をいいます。
■記憶の3分類
記憶は、大きく①感覚記憶、②短期記憶、③長期記憶に分けられます。
①「感覚記憶」とは、外部からの刺激、たとえば通り過ぎる風景などを意識することなく、ほんの1~2秒ほど保持することをいいます。気に留めなければ、そのまま消えてしまいます。
②「短期記憶」とは、数十秒間保持される記憶をいいます。情報が繰り返しインプットされることにより、保持時間が延びます。情報の反復が無ければ、そのまま消えてしまいます。
③「長期記憶」とは、何年もの長い期間保持しておくことができる記憶をいいます。とても大量の情報を保存しておくことができるといわれています。長期記憶にできれば、記憶効率はアップするということですね。
■長期記憶には種類がある?
長期記憶には、大きく分けて、頭で覚えるシステム(陳述的記憶:ちんじゅつてききおく)と手や足など身体で覚えるシステム(手続き記憶)の2種類があります。
どちらも脳が記憶しているのですが、陳述的記憶は、「海馬(かいば)」が深く関わっており、計算の仕方や漢字、英単語を覚えるなどの記憶をいいます。一度覚えても忘れてしまうことがあるのがこの記憶です。通常、この陳述的記憶を、「記憶」と呼ばれます。
一方、手続き記憶は、「大脳基底核(だいのうきていかく)」や「小脳(しょうのう)」で覚える記憶をいいます。大脳基底核は、筋肉の動きをコントロールする部位で、小脳は、筋肉の動きを微調整する部位といわれています。たとえば、自転車の乗り方を覚えたり、泳ぎ方を覚えたり、箸の持ち方を覚えたりすることをいいます。一度収得すると、しばらくブランクがあっても忘れることがないのがこの記憶です。
子どもの頃は、どんどん新しいことを覚えられたのに、大人になると、なかなか新しいことが覚えられなかったり、覚えたと思ってもすぐ忘れてしまうため、記憶力が低下したと感じがちです。
子どもは、興味のあることには集中して、何度も繰り返し、遊びながら、そして、楽しみながら物事を覚えていきます。これが、記憶力をアップさせるキーポイントになります。
記憶のメカニズム
もしも、脳に入ってくる情報を全て記憶したら、数分で脳はいっぱいいっぱいになってしまうため、人間の脳というのは、物事を忘れるようにできているといわれています。
■海馬(かいば)の働き
記憶は、脳の『海馬』と呼ばれる部位で行われます。見たり、聞いたり、嗅いだり、触ったり、味わったりといった五感から得た情報は、海馬に伝わり、短期記憶として保存されます。
海馬は、入ってきた情報が必要であるか不必要であるかを判断し、必要であると判断した情報のみを長期記憶として、大脳皮質に保存されます。海馬は、反復して入ってくる情報を「必要な情報である」と判断しやすく、記憶が長期記憶に変わりやすくなります。
短期記憶として保存された情報を反復することをリハーサルといいます。リハーサルには、短期記憶の情報を単純に反復する維持的リハーサルと短期記憶の情報と他の知識と組み合わせて反復する精緻化(せいちか)リハーサルがあります。
■扁桃体(へんとうたい)の関与
また、海馬の近くに位置する『扁桃体』は、感情を司る部位ですが、この扁桃体が活性化すると、海馬も活性化されます。感動したり、ショックを受けたり、強く感情が働いたときの物事は長く記憶されるのはこのためです。
■報酬系の関与
さらに、脳内の報酬系と呼ばれるシステムが活性化すると、記憶力も高まることが知られています。
報酬系とは、報酬がもらえる(褒められる、ご褒美がもらえるなど)状態であるとき活性化し、「うれしい、楽しい」というような心地のよい感覚を与える神経のシステムで、報酬系が活性化すると、神経伝達物質である『ドパミン』の分泌が増えます。このドパミンが多く分泌されることで、記憶力もアップします。興味のあることや楽しみながら覚えたことは、記憶に残りやすいのはこのためです。
このことから、記憶は、海馬や扁桃体、神経ネットワークの働きを活発にすることが、記憶力アップに繋がると考えられます。
それでは、実際にどのようにしたら、記憶力をアップできるのか、そのトレーニング方法をご紹介します。
記憶力を高めるトレーニング方法21選
■1. 繰り返し覚える
記憶は、情報を覚える『記銘』、情報を保存する『保持』、情報を思い出す『想起』、情報を思い出せなくなる『忘却』という過程をたどります。想起が行われないと、情報は少しずつ消えて、忘れてしまうということです。
海馬が必要な情報と判断する基準のひとつに、繰り返しの情報であることがあげられ、情報のインプットを反復して、繰り返し覚えることにより、長期記憶にかわります。
さらに、繰り返し脳が刺激されることによって、脳内のネットワークが大きく成長するといわれています。
一度記憶してもそのままにしておくと、長期記憶にはならず、忘れていくため、1ヶ月以内、可能であれば24時間以内に覚えた内容を復習すると効果的です。その後も定期的に繰り返し覚える(リハーサルを繰り返し行う)ことで、記憶力が高まります。
■2. 主体性を持って覚える
たとえばテスト勉強の際、自分の好きな科目や興味のある事柄については、どんどん頭に入ってくるのに、苦手な科目や興味の薄い事柄については、なかなか覚えられないといった経験はありませんか?
あるものに興味を持っていると、脳の中心にある脳幹の青斑核(せいはんかく)と呼ばれる部位からノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されます。脳内にノルアドレナリンが増えると、神経のネットワークが作られやすくなり、情報が伝わりやすくなることから、記憶力が高まるといわれています。
記憶する物や事柄に興味を持って、自分から進んで取り組むことが記憶力を高めるのに大切です。
■3. 目、口、耳を活用して覚える
かけ算の九九は、小学生の頃、大きな声に出して、覚えましたね。しばらく使っていなくても、いつでも口に出してスラスラ言えるということは経験があります。このように、物事は、五感とともに記憶すると覚えやすいといわれます。
記憶したい内容を目で見て、声に出して言うことで、耳からも聞いて覚えることになります。これにより、目読して覚えるより、はるかに多く記憶することができます。
■4. 絵や図とともに覚える
海馬は、空間的な情報に刺激され、働きが活発になるといわれています。
そのため、文章だけを暗記するよりも、絵や図とともに暗記するほうが、覚えやすくなります。
■5. 手で書いて覚える
漢字を覚えるとき、何回も書いて覚えませんでしたか?他にも覚えたいことを紙に書いて覚えた経験はありませんか?
手を動かすことで、大脳の働きが活発になり、記憶力が高まります。
■6. 顎を動かしながら覚える
口の周囲には、神経が集中しているため、顎を動かすことで、脳が活性化され、記憶力が高まります。
食事をするときは、よく噛んで、顎を動かすようにしましょう。また、ガムを噛みながら勉強するという方法もあります。
■7. 動きながら覚える
暗記をするとき、歩きながら行ってみてください。歩くことで、全身の血行が良くなります。もちろん、脳の血行も良くなるため、脳の働きが活発になります。
さらに、場所を移動している時や運動をしている時は、海馬が活性化され、脳の記憶力が高まります。
■8. 目移りせずに覚える
たとえば、良いといわれる参考書を何冊も掛け持ちして勉強した場合、参考書ごとに微妙に表現が異なっていたりして、情報の一貫性がなくなり、記憶力が低下してしまうことがあります。参考書は一冊に決めて、勉強すると良いですね。
また、何ヶ国語も同時に学習することも効率が悪くなるそうです。一定期間は、英語であれば、英語の学習に集中するほうが学習効率はよくなります。
■9. 連想しながら覚える
記憶したい物事から連想するものと関連つけて覚える方法があります。
これにより、連想ゲームのように、記憶を引き出しやすくなります。たとえば、数字の羅列を覚えるとき、一つ一つの数字を物や動物などに喩えて、それぞれを関連付けながら覚えていくと記憶に残りやすくなります。
はじめは、なかなかイメージを結び付けて記憶することに慣れるまでは大変ですが、このように記憶する訓練をすると記憶力のアップに繋がります。
■10. 感情とともに覚える
とても感動したことや恐怖を感じたことは、長きに渡って覚えていますよね。このように、感情が動いたときの記憶は、長期記憶となりやすいといわれています。
これは、感情をコントロールしている扁桃体が活発に働くことで、海馬の働きも活発になり、記憶力が高まるためです。
■11. 香りとともに覚える
昔嗅いだ事のある匂いを嗅いだだけで、昔の記憶が思い出されたという経験のある方も多いのではないでしょうか?
香りを嗅ぐことにより、脳が刺激され、海馬の働きも活発になり、記憶力が高まります。
記憶力を高めるといわれるローズヒップや集中力を高めるレモンの香りとともに、覚えるようにすると良いです。
■12. 音楽とともに覚える
かなり時が経つのに、ある曲を聴くと、その曲を聴いていた場所の情景を思い浮かんだり、曲を聴きながら読んでいた本の内容を思い出したりということがあります。
好きな音楽を聴きながら、勉強することは、やる気を起こさせる効果やリラックス効果が期待できたり、集中力や記憶力が高まる場合もあります。
記憶したいものによって聴く音楽を変えるとよいようです。たとえば、一度に多くの単語を覚えたいときは、精神を積極的にするアップテンポの音楽が効果的です。単語の暗記には、歌詞のない曲がよいでしょう。
また、文章の暗記など集中力が必要な場合は、モーツアルトの曲が記憶力アップに効果的であることがわかっています。海外の学校では、授業中にモーツアルトの曲を流しているところもあるそうです。
ただし、逆に、静かな環境では集中できなくなるといった状況になってしまう場合もありますので、音楽に頼りすぎるのはよくありませんが、方法のひとつです。
■13. やりかけて終了する
「今日はこの章をやり切るぞ!」と気合をいれて勉強することはよくあります。しかし、脳にとっては、区切りのいいところで終了するよりも、次の新しい章に少し足を踏み入れた状態で終了したほうが、「新しい章を終了したい」と思い、次の学習意欲に繋がるそうです。
学習意欲だけでなく、記憶スピードのアップにも繋がります。
■14. やる気を持って覚える
勉強していてもやる気がないと、何も頭に入ってこないですよね。やる気を高めれば、記憶力も高まります。
やる気を高めるには、まずは、短時間で完了する簡単な内容のものから勉強を始めるようにしましょう。やり始めることによって、脳の『側坐核(そくざかく)』と呼ばれる部位が刺激され、『ドパミン』という神経伝達物質が分泌されます。このドパミンが分泌されるとやる気が高まります。
また、もともと、人間には、もっと知りたいという「知的好奇心」があります。たとえば、難しい内容が理解できたなど知的好奇心が満たされたとき、いい気持ちになり、さらにがんばろうとやる気が高まります。
■15. 日記をつける
1日の終わりにその日あったことを思い出しながら、日記をつけるようにすると、記憶を思い出すトレーニングになり、記憶力のアップに繋がります。出来事があったとき、自分がどう思ったか、どのうように感じたかも一緒に思い出し書き留めると効果的です。
慣れないうちは、何があったか思い出すのに苦労する場合もありますが、慣れてくるとスムーズに記憶を思い出すことができるようになるでしょう。
■16. 良質な睡眠をとる
脳は、睡眠中に記憶を整理するといわれています。寝ている間に必要な情報を選択し、長期記憶に変えます。
テスト前に「寝たら忘れるから寝ない」と徹夜でテストに臨むという方もいますが、逆に、寝ないと忘れてしまうわけです。そのため、十分に睡眠をとることが必要です。
■17. 寝る前に覚える
前述のように、睡眠中に記憶が整理されるため、朝覚えた情報よりも寝る前に覚えた情報の方が、長期記憶となる率が高いといわれています。
言葉の暗記などは、寝る30分~1時間前に行うのが効果的です。
■18. 脳に刺激を与える
毎日、脳を使うことが、神経のネットワークの形成を促し、脳の働きを良くし、記憶力のアップに繋がります。
新しい言語を覚えたり、日記をつけたり、本や新聞を読む習慣をつけましょう。クロスワードパズルや数独、囲碁、将棋など、楽しみながらできるものもおすすめです。
■19. ストレスを溜めない
心配事やストレスの蓄積は、記憶力の低下を招きます。
毎日、少しでも好きな音楽を聴く、散歩に出るなどリラックスできる空間、時間を持つようにしましょう。
■20. 自分の記憶力を信頼する
「自分は記憶力が悪い」と思っていては、自分で自ら記憶力を低下させています。
まずは、自分は、記憶力が良いと信じることが大切です。
立てた目標を達成した際に、自分自身に報酬(ご褒美)をあげるのも脳内の報酬系と呼ばれる心地よいと感じるシステムが活性化され、『ドパミン』の分泌が増え、記憶力がアップすることが知られています。
■21. 積極的に料理をする
料理を作るには、どのような材料や調味料を使うのか、その分量、料理の手順を覚える必要があります。
最初は、レシピ本を見ながら作りますが、何度か作っているうちに分量や手順を覚え、レシピを暗記して段取りよく作れるようになります。積極的に料理をすることで、いくつものレシピを覚えることができ、記憶力を高めるトレーニングになります。
料理の腕も磨け、一石二鳥のトレーニング法ですね。
記憶力を高める食べ物8種類
記憶力を高めるためには、充実した食生活を送ることも重要です。
脳の働きを良くし、記憶力アップのためには、栄養バランスの良い食事を規則正しく、よく噛んで食べるようにしましょう。
前述のように、よく噛んで、顎を動かすことは、脳が活性化され、記憶力の向上に繋がります。さらに、脳の機能を良くする食べ物を積極的に摂るようにすると良いですね。
次に、脳に良い食べ物をいくつかご紹介します。
■①糖質を含む食品:脳の活動には欠かせないエネルギーとなるブドウ糖
お腹がすくと、イライラしてきて集中力がなくなるという状態は、誰もが経験があるのではないでしょうか?
ご飯やパン、麺類などの炭水化物やイモ類、果物などに含まれる糖質は、消化管で分解されてブドウ糖になり、体内に吸収されます。このブドウ糖を脳細胞はエネルギー源として使用します。ブドウ糖が不足すると、脳の活動力が低下して、集中力がなくなり、思考が低下したり、精神的にイライラしたりします。
ブドウ糖は、脳の活動には欠かせないエネルギー源であるわけです。記憶力をよくするためには、ブドウ糖が不足しないように、規則正しく、炭水化物を含む食事を取ることが大切です。
さらに、食後は、集中力が低下してしまうという場合は、食べ方を工夫すると良いでしょう。食事により、血糖値が急激に上昇し、その後急激に低下すると、眠気を起こしやすいといわれています。低GI(グリセミック・インデックス)食とよばれる、食後の血糖の上昇が少ない食品を選ぶようにすると良いです。たとえば、炭水化物では、白米よりも玄米や雑穀米の方がGIが低い食材となります。
また、食物繊維は、消化管での糖の吸収を穏やかにするといわれていますので、食物繊維を多く含む野菜や海藻類から食べ始めるのも血糖値の急激な上昇を抑えるのに効果的です。
■②レシチンを多く含む食品
レシチンは、フォスファチジルコリンとも呼ばれ、神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンの原料となり、脳の情報伝達に欠かせない物質です。
海馬に記憶が形成されるために、アセチルコリンが関わっていることが報告されています。
レシチンが不足すると、アセチルコリンの産生量が減り、神経の伝達がスムーズにいかなくなり、記憶力や集中力の低下の原因となります。
レシチンは、卵黄や大豆、大豆製品、レバー、ナッツ類などに多く含まれています。
ただし、卵黄の摂り過ぎは、コレステロールが高くなりやすくなりますので、注意が必要です。その点、納豆や豆腐などの大豆製品は、毎日の献立に加えて、摂取しやすい食材といえますね。
■③DHAやEPAを多く含む青魚
サンマ、ブリ、サバ、イワシなどの青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)と呼ばれる成分が多く含まれていることは有名ですね。
DHAとEPAは、オメガ3系の多加不飽和脂肪酸の一種です。DHAは、脳内へ入る物質を制限する血液-脳関門を通過でき、脳内では海馬の神経細胞膜に多く存在します。
DHAには、神経の伝達をスムーズにし、脳の機能を活発にする作用があり、記憶や学習能力を高めることが報告されています。また、DHAのサプリメント摂取により、アルツハイマー型や脳血管性認知症の症状に改善傾向がみられたとの報告もあります。
EPAは、血液を固まりにくくし、血栓を予防する作用があり、血液の流れをスムーズにし、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞の予防効果が報告されています。さらに、EPAは、高脂血症や閉塞性動脈硬化症による痛みや冷感の改善に対して、医薬品としても認められています。
■④ルテインが豊富なほうれん草
鉄分を多く含み、貧血の予防に効果的な野菜として有名なほうれん草ですが、このほうれん草に豊富に含まれるルテインという成分は、脳細胞に作用して、記憶力や学習能力を高めることが報告されています。
また、ルテインは目の網膜を構成する成分でもあり、紫外線などから目を保護する働きをしています。
■⑤抗酸化作用のあるベリー類
ベリー類には、ポリフェノールの一種であるフラボノイドが含まれており、抗酸化作用によって、細胞の老化を防ぎ、認知力の低下を予防する効果ががあることが知られています。
ベリー類の中でも特に、ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、脳細胞や神経細胞の機能を良くする効果があることが数多く報告されています。アントシアニンは、目にもよい成分としても有名ですね。
■⑥ビタミンEが豊富なナッツ類
ナッツに含まれるビタミンEは、抗酸化作用により脳神経細胞の老化やストレスなどによる劣化を防ぎ、記憶力の低下を予防します。また、ビタミンEには、血行をよくする働きもあり、脳を活性化する効果も期待されます。
ナッツ類の中でもピーナッツには、ビタミンEの他、レシチンも多く含まれていて、記憶力のアップにより効果的です。
■⑦αリノレン酸が豊富なクルミ
αリノレン酸は、人間の体に必要な必須脂肪酸のひとつで、DHAやEPAと同様の多加不飽和脂肪酸のうちのオメガ3系に分類されます。αリノレン酸は、体内で、EPAを経てDHAが作られる材料にもなります。
αリノレン酸には、脳などの神経伝達を良くする働きや血栓をできにくくする働き、中性脂肪やコレステロールを下げる働きなどがあり、集中力や記憶力を高める効果が期待できます。
このような働きのあるαリノレン酸をナッツの中で最も豊富に含むのがクルミです。
さらに、クルミには、トリプトファンという必須アミノ酸のひとつも豊富に含まれています。トリプトファンは、セロトニンという神経伝達物質の材料になります。
セロトニンは、「幸せホルモン」と呼ばれ、精神の安定や睡眠に関与する神経伝達物質としてよく知られています。セロトニンが増えると、イライラ感や不安を和らげるため、記憶に集中しやすい精神状態となります。
ただし、海馬で長期記憶を形成する際に出るθ波(シータ波)をセロトニン神経は抑える働きがあります。セロトニン神経の働きは、集中したときとレム睡眠中に止まることがわかっています。集中することと十分な睡眠が記憶力を高めるために大切であるのはこのためです。
休憩時のおやつにクルミパンやケーキなどクルミを使用したお菓子を食べるというのもよいですね。
■⑧テオブロミンを含むチョコレート
テオブロミンは、チョコレートやココアの原料であるカカオに含まれているアルカロイドの一種です。テオブロミンには、脳の働きを活発にし、集中力や記憶力を高める効果があるといわれています。
甘いお菓子で記憶力を高める効果も期待できるのはうれしいですね。ただし、食べ過ぎでカロリーオーバーにならないように注意しましょう。
まとめ
脳内でどのように記憶が行われるのか、記憶力を高めるさまざまなトレーニング方法をご紹介しました。
記憶には、脳の海馬が重要な働きをしていますが、その他の脳の働きも、記憶をより鮮明に長期間保存されるために深く関与しています。脳の血流を良くし脳の機能を高めたり、脳が記憶しやすい方法で記憶することで、大人になってからでも記憶力をアップすることが可能です。
また、記憶力を高めるためには、食生活もとても大切です。毎日、栄養バランスのよい食事を規則正しく摂るようにしましょう。食事の献立に記憶力を高めるために効果的な食材を盛り込むとより効果的です。
毎日、脳のトレーニングを行い、脳のさまざまな機能を活性化させることで、記憶力アップを目指しましょう。
薬剤師をしています。ヘルスケア分野の情報をわかりやすく説明します。