薬剤師資格を持つライターが書いています。
風邪をひいて咳が止まらなくなった経験がある方も多いのではないでしょうか?
咳が続くと息苦しくなりますし、周りに人がいる場合には迷惑にならないか気になりますよね。
それに咳が長引くと、ノドや気道を痛めることもありますので、咳止め薬で止めた方が良い場合が多くあります。
咳に困った場合には、病院を受診して咳止めの薬をもらうのがベストなのですが、病院に行く時間を作れない方も多いと思います。そういう時には、ドラッグストアやインターネットで購入できる市販薬を使うことをお勧めします。
ただ、市販薬の咳止めも種類が多いので、どれを使うか悩むかもしれません。そこで、市販薬の咳止めについて、それぞれの特徴を紹介します。
咳止めによく効く風邪薬の選び方3つ
市販薬の風邪薬は種類が多いので、ここでは選ぶ場合のポイントとその流れを紹介します。
1. 咳のタイプを把握する
2. 他の症状の有無を把握する
3. 抑えたい症状を決める
風邪症候群(いわゆる風邪)の原因となるウイルスを殺すことのできる薬はありませんので、市販されている風邪薬は、風邪の症状を抑えるために飲むことになります。そのための成分が風邪薬には配合されています。
つまり、咳を止めたい場合には、咳止めの成分が入っている風邪薬を選ぶことになりますが、咳止めの成分もいくつかありますので、咳のタイプでどれを使えばいいか変わってきます。
■①咳のタイプを把握する
大きく分けると咳は2種類のタイプに分けられます。
コホンという渇いた感じの「乾性タイプ」と、ゴホンという湿った感じの「湿性タイプ」です。
湿性タイプは気道に痰がからんでいること(痰が咳の原因)が多いので、痰で判断するのも一つの手です。乾性タイプでは、咳中枢と呼ばれる部分に作用する薬(中枢性鎮咳薬)が効果を発揮しますし、湿性タイプでは、いわゆる痰切りの薬(去痰薬)が咳止めに効果を発揮します。
また、気管支を広げる作用を持つ薬は、どちらのタイプでも効果を発揮します。
効果がある成分の具体例を挙げると、次のようになります。
乾性タイプ (中枢性鎮咳薬) | ジヒドロコデインリン酸塩、コデインリン酸塩水和物、ノスカピン、デキストロメトルファンなど |
湿性タイプ(去痰薬) | グアイフェネシン、ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、カンゾウエキス、セネガエキスなど |
どちらにも効果あり(気管支拡張薬) | テオフィリン、ジプロフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩など |
■②他の症状の有無を把握する
さらに、風邪の症状は咳の他にも、発熱、鼻水など様々な症状がありますので、多くの風邪薬は複数の効果を持つ成分を組み合わせることで作られています。そして、商品によって配合する成分や量が異なりますので、ターゲットとする症状が異なっています。例えば、咳・痰を抑える商品、咳・痰・喉の痛みを抑える商品、風邪の症状全般を抑える商品といった感じです。
ですので、咳の他に抑えたい症状があるかどうかで選ぶ風邪薬が変わってくることになります。
■③抑えたい症状を決める
咳が出て寝られないので寝ている間の咳だけを止めたいという場合は、咳止めに特化した商品を選ぶのが良いでしょうし、仕事中で咳だけでなく熱や鼻水も一緒に抑えたいという場合は症状全般を抑えることができる商品を選ぶのが良いでしょう。
ということで、
「咳のタイプを把握」して、「他の症状があるかどうか」、そして「他の抑えたい症状」を決めることが風邪薬を選ぶ上で重要となってきます。
咳止めに効く!おすすめの風邪薬ランキングTOP15
それでは、咳止めにおすすめの風邪薬のランキングを紹介します。今回は、一般的に容易に購入できる「amazon」や「楽天」のサイトで販売されている中から、おすすめの商品を紹介します。今回は、使用目的や【風邪薬=風邪の症状に使う薬】という定義に従い、鎮咳去痰薬も含めました。
それぞれについてランキング付けしていますが、先ほど説明したように「咳のタイプ」や「他に出ている症状」によって選ぶべき商品は変わりますので、ランクよりも自身の状況によりお選びください。
また、市販薬の場合、似たような名前でも配合されている成分が異なるため、効能・効果が違ってくる場合が多々あります。「新ルルAゴールドDX」と「新ルルA錠S」などです。紛らわしいものもありますので、商品名は細かい部分までしっかりと気にするようにしましょう。
なお、記載している効能、対象年齢は、説明文書の記載内容によるものです。販売会社の判断により変更になる可能性もありますので、購入前もしくは使用前に確認してください。
■第1位:ミルコデ®錠
商品名:ミルコデ®錠(サトウ製薬)
分類:第1類医薬品
効能:せき、喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)をともなうせき、たん
対象:15歳以上
ミルコデ錠は、咳止めに特化した商品です。気管支喘息の治療薬として医療現場で幅広く使われている「テオフィリン」の配合量が最も多い商品です。テオフィリンは気管支を広げる作用が強いので、服用すると咳や呼吸を楽にしてくれます。また、その他に痰切りの成分も3種類配合されていますので、乾性タイプ、湿性タイプのどちらにも高い効果を発揮する風邪薬です。
ただ、強力な成分が配合されている分、注意しなければいけない事が多くなりますので、『第1類医薬品』に分類されています。そのため、購入時には薬剤師による確認や情報提供が必要となります。この点が煩わしいと感じる方もいると思いますが、咳止めとしての効果が非常に高いことを考えると致し方ないのではないでしょうか。
ガツンと咳を止めたい方や他の咳止めを使っても効果が不十分だった場合にお勧めの商品です。
効果が落ちることがありますので、この薬を飲んでいる間は、セイヨウオトギリソウを含むサプリメント・健康食品の摂取は避けてください。
■第2位:アネトン®せき止め液
商品名:アネトン®せき止め液(武田コンシューマーヘルスケア)
分類:指定第2類医薬品
効能:せき、たん
対象:12歳以上
咳中枢に作用する「コデインリン酸塩水和物」の含有量が多い商品です。1日当たりの服用量あたりにすると、市販薬の中で最も多く含まれています。そのため、乾性タイプの咳をしっかりと抑えてくれることが期待できます。また、痰切りの成分も1種類ですが配合されていますので、湿性タイプにもある程度の効果が期待できます。
さわやかなレモンティー風味の液剤で、飲みやすいのもポイントです。液剤は、いわゆるシロップ薬、シロップ剤のことです。子供が飲むイメージを持っている方もいるでしょうが、大人が飲んでも全然構いません。
この液剤タイプは、飲んでから吸収されるまでの時間が他のタイプと比べて早いので、効果が出るまでが数分~十数分程度早くなると考えられます。これもメリットの一つでしょう。
錠剤やカプセル、顆粒を飲むのが苦手な方や少しでも早く咳を抑えたい方は、このような液剤タイプを選ぶとよいでしょう。1回分が1包に小分けされている、携帯に便利な分包品も発売されています。
また、本剤を含め咳止めの成分が入っている商品は、『指定第2類医薬品』に分類されるものが多くあります。第2類の中でもリスクの高いものがこれに含まれます。ドラッグストアでは売り場が別になっていますので、薬剤師か登録販売員に声を掛けて購入することになります。
ただ、リスクが高いとなっていますが、あくまで比較した場合ですので、指示通りの量を服用していれば、問題となる可能性はわずかです。ですので、ラベルや箱に書かれてある服用量をしっかりと守るようにしてください。もし、指示通りに服用していても、気になる症状が出た場合には、すぐに飲むのを止めて、医師か薬剤師に相談するようにしましょう。
注意:アネトンせき止め液の服用により、糖尿病の検査値(血糖値など)に影響を及ぼすことがあるようです。糖尿病の治療をされている方は、アネトンせき止め液を飲んだこと(時期・回数)を主治医にお伝えください。
■第3位:パブロンS®せき止めカプセル
商品名:パブロンS®せき止めカプセル(大正製薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:せき、たん
対象:8歳以上
最も強力な中枢性鎮咳薬とされている「ジヒドロコデインリン酸塩」の含有量が多い風邪薬です。
第3位~5位の商品は、成人1日量あたりジヒドロコデインリン酸塩を30 mg含んでいて、市販薬の中では最高量となっています。
さらに、中枢性鎮咳薬の「ノスカピン」も一緒に配合されていますので、乾性タイプの咳をしっかりと抑えてくれるとされています。このように中枢性鎮咳薬の配合が最も多い商品ですので、第三位としました。乾性タイプの咳をガツンと抑えたい方にお勧めです。
また、痰切りもしっかりと配合されていますので、湿性タイプにも効果が期待できます。
さらに8歳以上で使えるとなっていますので、子供に使い場合にも適しています。子供が飲みやすいように液剤タイプも発売されています。
■第4位:新コルゲンコーワ®咳止め透明カプセル
商品名:新コルゲンコーワ®咳止め透明カプセル(興和新薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:せき、たん
対象:15歳以上
こちらも「ジヒドロコデインリン酸塩」を最大量含有している商品です。そのため、乾性タイプの咳と抑えてくれることが期待できますし、さらに痰切りや気管支拡張作用を持つ薬も高用量で配合されています。第5位の新ブロン液エースよりも、これらの成分の含有量が多いため、効果を考えてこちらの方を上位としました。
また、商品名の通りカプセルに入っていますが、飲んだ後に液状成分がいち早く溶け出し、効果が出やすいという特徴もあります。効果が出るまでの時間は、液剤タイプよりわずかに遅いくらいでしょうか。
■第5位:新ブロン液エース
商品名:新ブロン液エース(エスエス製薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:せき、たん
対象:8歳以上
こちらも「ジヒドロコデインリン酸塩」を最大量含有している商品です。痰切りなどのその他の成分が少ないので効果は若干劣りますが、逆にその分8歳以上に使えることになっています。8歳から12歳までのお子さんが服用できる薬としては、もっとも咳止めの効果が高いと言えるでしょう。
液剤タイプでもありますし、早く効かせたい方やお子さんの咳を止めたい方にお勧めの薬です。
■第6位:アストフィリン®S
商品名:アストフィリン®S(エーザイ)
分類:指定第2類医薬品
効能:喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)をともなうせき、たん
対象:15歳以上
中枢性鎮咳薬、気管支拡張薬が数種類バランスよく配合されていますので、乾性タイプにお勧めの商品です。糖で包まれた錠剤(糖衣錠)となっていますので、飲む時に甘みを感じることができます。そのため、乾性タイプの咳が出ていて、錠剤や細粒を飲む時に苦味を感じやすい方にお勧めの商品です。もちろん、気管支拡張薬が配合されていますので、湿性タイプにもある程度の効果は期待できます。
■第7位:アスクロン®
商品名:アスクロン®(エスエス製薬)
分類:第2類医薬品
効能:せき、喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)をともなうせき、たん
対象:8歳以上
中枢性鎮咳薬、気管支拡張薬、去痰薬がバランスよく配合されている商品です。第6位の「アストフィリンS」もそうですが、咳止め薬に含まれることの多い「ジヒドロコデインリン酸塩」ではなく、「ノスカピン」という中枢性鎮咳薬が入っています。そのため、他の咳止め薬の効き目が悪かった、眠気などの副作用が出たという方はアストフィリンやアスクロンを試してみてはどうでしょうか?
アスクロンは、風邪薬の中では数少ない『第2類医薬品』(指定ではない)ですので、副作用などのリスクが指定第2類の医薬品よりも低いとされていることが伺えます。
さらにアスクロンは、8歳以上であれば使えますし、粉薬タイプですので、子供でも飲みやすいという特徴もあります。
■第8位:コフト®顆粒
商品名:コフト®顆粒(日本臓器製薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、せき、たん、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:1歳以上
第7位までは咳止めがメインの風邪薬でしたが、ここからはその他の症状を抑える成分も配合されている総合的な風邪薬が続きます。咳以外にも抑えたい症状がある方はこのような薬をお選びください。効能を参考にされると分かりやすいと思います。
コフト顆粒は、漢方薬である葛根湯と中枢性鎮咳薬、解熱剤などが配合されているので、幅広い症状に効果が認められています。
葛根湯は、「かぜのひきはじめに効く漢方薬」ということで広く使用されているので、飲んだことがある方もいるのではないでしょうか。葛根湯を飲み慣れている方には、ちょうど良い咳止めになると思います。
風邪のひき始めで咳を止めたい方にお勧めの商品です。
また、コフト顆粒は1歳以上から使用可能ですので、幼児も飲むことができます。咳がひどくて眠れないお子さんがいる場合には、飲ませてみてはどうでしょうか? ただ、年齢によって服用量が異なりますので、その点だけご注意ください。
■第9位:ベンザブロック®トローチ
商品名:ベンザブロック®トローチ(武田コンシューマーヘルスケア)
分類:第2類医薬品
効能:せき、たん、のどの炎症によるのどのはれ・のどの痛み・のどのあれ・のどの不快感・声がれ
対象:5歳以上
今回紹介する風邪薬の中では唯一の「トローチ剤」です。
トローチ剤は、飲み込まずの舐め続けることで効果を発揮する薬のタイプのことです。中枢性鎮咳薬とのどの腫れ・痛みを抑える薬が配合されています。配合されている成分の種類は少ないのですが、舐めるという珍しい使い方をする薬なので、この順位としました。
この薬を舐めることで唾液も分泌されますので、乾性タイプの咳に合っています。
のどを潤しながら咳を止めたい方や勉強・仕事中に舐めて咳を落ち着かせたい方にお勧めです。舐める時の味付け用に緑茶末が配合されていますので、舐めやすくなっています。
トローチ剤ですので、口に含んで、かまずにゆっくり舐めてください。
5歳から使えるのもメリットが大きいでしょう。子供が間違えて飲みこんでしまっても、呼吸ができるように真中が空いた形をしていますので、安心してお使い頂くことができます。
■第10位:ストナ®プラスジェルS
商品名:ストナ®プラスジェルS(サトウ製薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(せき、たん、発熱、悪寒(発熱によるさむけ)、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:8歳以上
効能を見て頂ければわかると思いますが、幅広い風邪の症状を抑えてくれる風邪薬です。中枢性鎮咳薬と去痰薬が配合されていますので、総合風邪薬の中でも咳を止めることを重視している商品です。
咳を止めたい、そしてその他にも止めたい症状がある方にお勧めとなります。咳のタイプでは、去痰薬が2種類配合されていますので、湿性タイプにより効果が高いと考えられます。
■第11位:新ルル®AゴールドDX
商品名:新ルル®AゴールドDX(第一三共)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(鼻水、鼻づまり、せき、たん、のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、くしゃみ、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:7歳以上
第10位のストナと似たような成分が配合されていますが、去痰薬の配合量が少なく湿性タイプでは効果に差が出ると考えられるため、こちらを下の順位としました。ただ、乾性タイプの咳に対しては、効果はほとんど変わりありませんので、好みで選んでもらって良いと思います。
またこちらは7歳から使用することができますので、7歳児であれば新ルルAゴールドDXをお使いください。錠剤が飲みにくいというお子さんに対しては、細粒タイプも発売されていますので、そちらを使うと良いでしょう。
■第12位:エスタックイブ®ファイン
商品名:エスタックイブ®ファイン(エスエス製薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(発熱、悪寒、せき、たん、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:15歳以上
第11位の新ルルAゴールドDXと配合成分は異なりますが、それぞれの成分の特徴を総合すると効果にほとんど差はないと考えられます。ただ、使用できる年齢が15歳となっていますので、子供への使用を考えて、この順位としました。大人が使う分には差がほとんどありませんので、値段やCMのインパクトなどで決めてもらって良いと思います。
■第12位(同率):バファリン®かぜEX
商品名:バファリン®かぜEX(ライオン)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(発熱、悪寒、のどの痛み、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、たん、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:15歳以上
頭痛の薬として有名な「バファリン」の総合的な商品です。新ルルAゴールドDXなどと同様に様々な症状に効く成分が配合されています。ただ、こちらも使用年齢が15歳以上となっていますので、同率の12位としました。こちらも大人が使う分には差がないといえます。普段頭痛にバファリンを飲んでいる方などは信頼して飲めると思いますので、そういう方にお勧めの風邪薬です。
飲んだ後速く溶ける錠剤になっていますので、普通の錠剤よりは少し効き目が早くでると考えられます。数分の差かもしれませんが、少しでも早く咳を止めたい方は試してみると良いでしょう。
■第12位(同率):コルゲンコーワ® IB透明カプセルα
商品名:コルゲンコーワ® IB透明カプセルα(興和新薬)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(発熱、せき、たん、のどの痛み、悪寒、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:15歳以上
こちらも配合成分を考慮して同率の12位としました。これまでに紹介した新ルルAゴールドDX、エスタックイブファイン、バファリンかぜEXとほぼ同じ効果と考えて良いでしょう。
■第15位:新コンタック®かぜ総合
商品名:新コンタック®かぜ総合(グラクソ・スミスクライン)
分類:指定第2類医薬品
効能:かぜの諸症状(発熱、のどの痛み、せき、鼻みず、鼻づまり、たん、くしゃみ、悪寒、頭痛、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和
対象:7歳以上
今回紹介した飲み薬(錠剤、液剤など)の中で唯一、「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物」が配合されている風邪薬です。中枢性鎮咳薬のひとつで、「ジヒドロコデインリン酸塩」と比べて効果が劣りますが、眠気を引き起こすことが少ないとされています。
多くの風邪薬に含まれる「ジヒドロコデインリン酸塩」を含んでいない点をアピールしている商品ですので、他の風邪薬を飲んで眠気が出たという方にお勧めとなります。
「咳以外の他の症状もキツクて、どの症状もある程度抑えたい」という場合に適している風邪薬です。
■風邪薬の使用についての要相談
次に該当する方は、使ってはいけない場合がありますので、前もって主治医や薬剤師に相談してください。
・医師、歯科医師の治療を受けている方
・妊婦(妊娠の可能性も含む)、授乳婦
・薬に対してアレルギーのある方
咳止めに効く風邪薬の効果と時間
では、風邪薬を飲んだ後に、咳止めの効果がどれくらいで出るのか、そしてどれくらい続くのかについて見ていきましょう。
咳止めの風邪薬の7、8割に含まれる中枢性鎮咳薬のジヒドロコデインリン酸塩とコデインリン酸塩では、粉薬で飲んだ場合に以下のDataが得られています。
効果発現までの時間:30~45分
効果持続時間:4~6時間
湿性タイプの咳に効果を示す去痰薬として配合されている成分は、効果持続時間が少し長いのですが、似たようなDataがありますので、同様に考えても良さそうです。
また、薬の剤形(錠剤、液剤、粉薬などの形)でも効果発現までの時間は変わりますので、錠剤や糖衣錠の場合はこれよりも少し遅くなると考えられます。
一般的には、『液剤、粉薬>溶けやすい錠剤やカプセル剤>通常の錠剤、糖衣錠』という感じで効果発現までの時間が変わってきます。ただ、数分~数十分の差ですので、それほど変わらないと感じる方もいるでしょう。
一方、成分の持続時間を変えることは難しいのですが、錠剤やカプセル剤のタイプ(成分の固まりのタイプ)を工夫することによって、効果発現までの時間を遅くすることはできます。つまり、飲んでから効果が切れるまでの時間を伸ばすことが可能です。例えば、次のような複数の成分の固まりを組み合わせることで、『早めに効く』+『長く効く』を両立させた商品もあります。企業努力により、効果時間が延びて使い易くなっているということです。
<成分の固まりのタイプ:飲んだ後に効果が出ている時間>
早めに溶けるタイプ:30分~4時間
中間タイプ:4~8時間
遅く溶けるタイプ:8~12時間
トータル:30分~12時間
以上の情報より、一般的な咳止め効果については、
・効果発現までの時間:30分~1時間
・効果の持続時間:4~12時間
と考えられます。
あくまでそれぞれの商品の特徴により変わります。効果時間によって、1日に飲む回数も変わってきますので、購入前に商品の説明書を確認すると良いでしょう。
なお、今回は咳止め効果に注目しており、その他の症状に対しては効果持続時間が異なることがありますので、その点はご注意ください。
咳止め風邪薬の副作用
咳止め風邪薬に副作用として報告があるのは以下の通りです。これらの症状に気付いた場合には、服用を中止してください。そして医師や薬剤師に、「飲んだ薬の商品名」と「出た症状」を伝えて、どうすればよいか相談してください。
部位 | 症状 |
皮膚 | 発疹・かぶれ、赤くなる、かゆみ |
消化器 | 吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘 |
神経系 | めまい、眠気、判断力の低下 |
泌尿器 | 排尿困難(尿がでにくくなる) |
その他 | 口の渇き |
このように眠気や判断力の低下が出ることがありますので、服用後、乗物又は機械類の運転操作は避けた方が良いでしょう。ただ、眠気や口の渇きは繰り返し飲む間に身体が慣れて、感じにくくなると言われています。ですので、何度も服用して、眠気や判断力の低下が出なくなったこと、もしくは出ないことが分かっていれば問題ありませんが、服用に慣れていないうちは特に注意してください。
また、ごくまれにですが、以下の重篤な症状が副作用として起こることがあります。これらの初期症状が出た場合には、ただちに医師の診察をうけてください。ただ、副作用の頻度について、はっきりした数字は出ていませんが、0.1%未満(1000人に1人よりもまだ少ない)と本当にごくわずかですので、それほど気にしなくても良いと思います。気にしすぎて有用な薬を飲まない方が問題です。
副作用の名称 | 初期症状 |
ショック(アナフィラキシーショック) | 服用後すぐに皮膚やのどのかゆみ、じんましん、声のかすれ、息苦しさ、動悸 など |
皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症 | 高熱、目の充血、唇のただれ、のどの痛み、皮膚の広範囲の発疹・ただれ など |
再生不良性貧血 | 青あざ、鼻血、出血しやすくなる、発熱、顔色が悪くなる、疲労感、動悸、貧血、息切れ など |
無顆粒球症 | 突然の高熱、さむけ など |
こんなときは病院へ!咳止め風邪薬が効かないパターン6つ
今回紹介した咳止め風邪薬は、風邪をひいた時に出る咳を止める薬になります。
それ以外の病気では、効果が出ない場合が多くあります。なにより咳止め薬を使い続けると病気が悪化することもありますので、早めの見極めが重要です。
風邪と似た咳が出る病気や状態は以下の6つのパターンがあります。
1. 肺炎
2. 慢性気管支炎
3. 気管支喘息
4. COPD(慢性閉塞性肺疾患)
5. 肺がん
6. 別の薬の副作用
■①肺炎、②慢性気管支炎
「肺炎」と「慢性気管支炎」は、咳以外の症状でも風邪と似ていますので、区別するのが難しいかもしれません。風邪をこじらせて肺炎になる場合もありますので、風邪が悪化した病気というイメージをお持ちの方もいるでしょう。そのイメージもある程度は当っていて、風邪のさらに酷い症状が出るようになったものと考えてもらっても構わないと思います。
背中や胸の痛み、関節痛、倦怠感、頻脈(脈が早くなる)などの症状が出てきた場合には、風邪ではない可能性が高くなります。特に痰がベトベトして緑色や黄色っぽくなった場合や、休養を取っても高熱が4日以上続く場合には、かなり高い確率で「肺炎」か「慢性気管支炎」になっていると考えられます。こうなったら、風邪薬を飲むのを止めて、すぐに病院を受診することをお勧めします。
ちなみに、風邪の場合は、休養と栄養を十分に取っていれば、高熱は3日以内で落ち着くとされています。休養・栄養を取っても高熱が4日以上続く場合には、違う病気の可能性が高いということです。つまり、このように判断するためにも、回復を早めるためにも、風邪をひいた時には休養と栄養をしっかりとることが重要なのです。
■③気管支喘息
アレルギーなどによって気道の炎症が起きる病気です。息が苦しくなったり、咳が続いたりします。これらの症状が夜間から明け方に出てくるのが、気管支喘息の特徴となります。また、痰は透明なことがほとんどです。夜間に咳が出ることが数日~一週間以上続く、そして熱や鼻水がまったくない場合には、気管支喘息を疑って呼吸器内科などを受診することをお勧めします。
■④COPD、⑤肺がん
これらも咳が長期間続く病気です。風邪と似たような咳ですので、なかなか見分けがつかないと思います。長い間タバコを吸っていた方に多い病気ですので、そういう方は1,2週間咳が続いた場合に病院を受診してみてはどうでしょうか?
また、禁煙すると症状が楽になることがあるようですので、禁煙した結果も一つの判断基準になりそうです。
■⑥別の薬の副作用
血圧を下げる薬など一部の薬には、咳が副作用として出るものがあります。別に使っている薬の副作用で咳が出るパターンです。このような薬を飲んでいる方は、病院を受診していると思いますので、咳が止まらない場合には、診察時に医師か薬剤師に相談してみると良いでしょう。
■その他の目安
風邪薬をだいたい5、6回服用しても症状がよくならない場合は、風邪ではない可能性が高いので、風邪薬の服用を中止して、病院を受診してください。その際は、風邪薬を飲んでも咳が止まらなかった旨を医師に伝えると、診察がスムーズに進むことでしょう。
咳止め以外の風邪で悩んでいたら、こちらの記事を参考にして下さい。
まとめ
以上、咳止めによく効く風邪薬について紹介しました。
今回紹介したように風邪薬には様々なタイプ、そしてそれぞれの特徴がありますので、ぜひ今の症状に合った商品を見つけてください。
今回の記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。
薬剤師をしています。ヘルスケア分野の情報をわかりやすく説明します。