新しい種類の栄養素がサプリメントとしてどんどん商品化される今、注目を浴びているのが「HMB」と呼ばれるサプリメントです。プロテインやマルチビタミンなどに比べ一般的にはまだまだ認知されておらず、最近よく広告を目にするけどどんな効果があるの?本当に効果があるの?といったような疑問が多いようです。
最近では芸能人が広告のモデルをしていたり、プロテインの何倍もの効果があるという宣伝広告を目にすることもあり、気になっているという人も多いのではないでしょうか。
今回はHMBについて、どのような栄養成分なのかを詳しく解説し、活用方法を紹介していきます。
HMBとは何か?正式名称や成分
HMBは正式名称「β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸:β-Hydroxy - β-Methyl Butyrate」の頭文字をとった略称で、日本語では「3-ヒドロキシイソ吉草(キッソウ)酸」とも呼ばれています。
そもそもHMBは新しい成分ではなく、海外では1996年に効能が発見され、サプリメントとして活用されていました。日本では2010年頃からサプリメントとして販売されるようになり、厚生労働省が2015年にHMBに高齢者の筋肉分解を防ぐ効果があると発表したことで人気が一気に高まり、カラダ作りに励む人たちの間でも徐々に活用されるようになってきています。
HMBは、筋肉づくりに効果の高い必須アミノ酸の一つ“ロイシン”から生成される成分です。ロイシンは必須アミノ酸であるイソロイシン・バリンと一緒に配合することでBCAAとなり、人気のサプリメントとして販売されています。では、BCAAやロイシンとの違いは何なのでしょうか。
BCAAはHMBと似たような効果があります。なぜなら元となる成分が一緒だからです。しかし、BCAAはカラダの組織の材料となったり、エネルギーになったりと様々な働きを持っています。BCAAを摂取した場合、ロイシンがHMBに変化し、HMBの効果をもたらすのです。
摂取したロイシンは5~10%ほどしかHMBに変換されないため、筋肉づくりに効果のある量のHMBを生成するためには大量のロイシンを摂取する必要がありますし、ロイシンを大量に摂取したとしてもHMBの効果を発揮するまでに体内で生成する時間が必要なため、素早い補給が困難です。
そのため、初めからHMBの形で摂取したほうが効率が良いと考えられ、サプリメントとして販売され人気を博しています。
HMBの効果効能3つ
HMBは筋肉づくりに効果が高いとされる成分ですが、その効果は細かく分けると3つあります。ここではその効果を詳しく紹介します。
■①筋肉の合成を促す
HMBはたんぱく質のように筋肉の材料になるというよりは、筋肉の合成を促し再生を早める役割を持っている成分です。HMBを摂取することにより、筋肉の合成を促すmTORと呼ばれるシグナル伝達経路が活発になることが分かっています。HMBにはmTORというスイッチを入れ、筋肉の合成を活発化させる重要な働きを持っているといえるでしょう。
HMBを摂取しながら筋肉の材料となるたんぱく質を中心としたバランスの良い食事を心がけることで、筋肉が効率よく大きくなります。そのため、プロテインやアミノ酸などの筋肉づくりに効果のある他のサプリメントと一緒に摂取する人が多いようです。
■②筋肉の分解を防ぐ
カラダには、古くなったたんぱく質や日常生活で必要とされないたんぱく質を分解するという働きが備わっています。この働きは「ユビキチンプロテアソーム系」と呼ばれており、例えば細胞の入れ替わり周期を調整したり、がんや感染症などで発生した異常なたんぱく質を除去するなど、重要な役割を担っています。しかし、この働きが筋肉を大きくするための阻害要因の一つにもなってしまうのです。
筋トレで大きくした筋肉は、日常生活では必要ないものであるとカラダが判断し、筋肉を分解していきます。筋肉は使わなければ分解されて衰えていくのです。また、ダイエットなどでカロリーを制限したことによるカラダのエネルギー不足が起こると、筋肉が優先的に分解されてエネルギーとして使われてしまいます。
これらの筋肉の分解を防ぐ効果が高いのがHMBなのです。
カラダを大きくしようとトレーニングをしている人にとって、筋肉の分解はできるだけ防ぎたいものですよね。筋トレをしていても栄養摂取が適切でなければ、筋肉は分解されてしまい思うように筋肥大してくれません。また、ダイエットをするときは筋肉量を極力落としたくないものです。筋肉量の低下は基礎代謝量の低下につながり、リバウンドしやすいカラダになってしまうからです。筋肉の分解を抑える効果の高いHMBを摂取することで、筋量の維持や筋肥大の効果を最大限に高めてくれるといえるでしょう。
また、厚生労働省が推奨しているように、高齢者や低体力者の筋量低下を防ぐ効果も期待されます。人は誰しも年をとり、年齢を重ねるとともに筋量・筋力は低下してしまいます。日頃運動をしていない人は筋肉に対する刺激量が少ないため筋肉の衰えが顕著で、将来的には運動器系疾患リスクが高くなる“ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)”に繋がる可能性が高くなります。ロコモになってしまうと自立した生活ができずに、誰かの介護なしでは生きていけなくなってしまいます。HMBによってロコモを防ぐことができる可能性があるとして、現在も研究が続けられています。
■③筋肉の回復促進
HMBを摂取することで筋損傷を抑え、筋肉の回復を促進する効果があります。日本の研究では、HMB摂取により筋トレ時の筋損傷の指標となるCK(クレアチンキナーゼ)とLDH(乳酸脱水素酵素)の数値が低下したという結果が出ています。運動は筋肉の微細な損傷を伴いますが、この筋損傷を抑え回復を促すことで高負荷のトレーニングや高頻度でのトレーニングにも耐えられるカラダとなり、筋トレ効果も出やすくなることに繋がります。特に毎日のトレーニングが欠かせないアスリートや、ハードな筋トレを毎日行うようなトレーニーの人には活用していただきたいサプリメントです。また、ハードなトレーニング後でも筋肉痛をできるだけ出したくないという人にもオススメです。
毎日でも大丈夫?HMBの飲み方とタイミング
サプリメントには摂取方法によって大きく効果が異なるものがありますが、HMBもその一つです。ここではHMBの効果を高めるための摂取方法を紹介します。
■HMBの飲み方
筋肉づくりを目的とするのであれば、HMBは1日に3g摂取することが望ましいとされています。また、HMBはアミノ酸の一種である「クレアチン」と一緒に摂取することで、より効果が高まるという研究結果が出ています。クレアチンにも高い筋肥大効果がありますが、研究ではHMB・クレアチンのどちらかを単一で摂取した時と比べ、HMBとクレアチンを同時に摂取した時の方が効果が高かったという結果になっています。
その他にも最近の研究でHMBと他のサプリメントとの組み合わせによる効果の検証が行われており、今後更に組み合わせの良いサプリメントが明らかになってくると思われます。
今のところ、他のサプリメントとの飲み合わせによる弊害はないとされていますので、普段摂取しているサプリメントがあればそれも継続して併用してもよいでしょう。
他のサプリメント同様に水やスポーツドリンクなど好きな飲み物で摂取して問題ありません。このような筋肉づくりに効果のあるサプリメントを摂取する場合、トレーニングをした日だけ摂取するという人も多いようですが、効果を高めるのであればトレーニングをしていない日でも摂取することを推奨します。
■HMBの適した摂取タイミング
HMB摂取のタイミングとして重要なポイントは“こまめに摂取する”ことです。HMBは摂取してから2~3時間程度で血中に含まれる量が半分になってしまうとされています。そのため、1日1回ではなく3~4回程度に分けて摂取することが効果的だといえます。そうすることで筋肉の成長を促す効果が長時間続き、効果が高まるのです。
おすすめのタイミングは、トレーニング30分前・トレーニング直後・起床直後・就寝前です。
トレーニング前はトレーニング中の筋肉の分解を防ぐことに繋がりますし、トレーニング直後は筋肉づくりに最も効果のあるサプリメント摂取タイミングです。できればトレーニング後30分以内にプロテインと一緒に摂取するとよいでしょう。寝ている最中のエネルギー枯渇による筋肉の分解を防ぐために、起床直後や就寝前の摂取も効果的です。摂取する間隔が空きすぎないように、食後に摂取するのも良いでしょう。
HMBの副作用
HMBのもとは最初に説明した通りアミノ酸のロイシンです。副作用はありません。実際に厚生労働省も筋肉分解に効果的と認めていますので、副作用に関しては心配ないといえるでしょう。
注意するポイントとしては、多く摂取したから効果が高まるという訳でないことです。海外の研究では、多すぎる摂取量は適切量摂取したよりも効果がないだけでなく、逆に筋肉の成長を阻害してしまうという結果が発表されています。1日3gの摂取推奨量を守るようにしましょう。
アスリートが摂取する場合、気になるポイントの一つが薬やサプリメントを摂取したことによるドーピングの陽性反応です。HMBは食品なので、このドーピングに関しても一切気にする必要はないでしょう。ただし、商品によってはHMB以外に色々な成分が配合されている商品もあります。気になるようであれば専門医に相談の上、摂取するようにしましょう。
また、HMBはビタミンやミネラルのように、飲むだけで効果が現れるサプリメントではありません。HMBの効果を出すためには運動が必要不可欠なのです。その点を勘違いしないように気をつけましょう。
HMBを含む食品
サプリメントに対して抵抗感を持っている人もいると思います。では、サプリメントではなく、食品からHMBを摂取することはできないのでしょうか?
食品に含まれるHMB量を調べることは難しいでしょう。なぜなら、HMBは直接食品から摂ろうとすると、ごく少量しか摂取できません。ロイシンを原料に体内で生成されることがほとんどだからです。
そのため、ロイシンを多く含む食品を摂取することでHMBを体内に増やすことができるといえるでしょう。
ロイシンは牛乳やチーズなどの乳製品、かつおぶし、大豆・大豆製品などに多く含まれています。とはいえHMB1g=ロイシン20gと考えると、例えば15gで約400㎎のロイシンが摂取できるチーズでは、ロイシン20gを摂取するには750g、150mlで約500㎎のロイシンが摂取できる牛乳は6Lも摂取しなくてはいけなくなります。
HMBの理想摂取量を食品で摂取しようとすると、ほぼ無理であることが分かりますよね。そのため、HMB摂取にはサプリメントを活用した方が効果的なのです。
HMBの効率的な摂取におすすめのサプリメント3つ
ここではおススメのHMBサプリメントを紹介します。今回紹介した3つの商品は、HMB以外に配合されている栄養成分がなく、純粋にHMBのみを摂取できるサプリメントとなっています。もちろん今回紹介していないHMB商品にも優れた商品はありますし、今回紹介した商品が好みに合わない場合もあります。あくまでも購入時の参考としてみてください。
■①HMBパウダー
ブランド名:BULK SPORTS(バルクスポーツ)
商品名:HMBパウダー
本商品の内容量は90gで、90gのHMBを摂取することができます。
国内メーカーである【 BULK SPORTS 】が販売するサプリメントです。BULK SPORTSは多くのプロアスリートに対して栄養のサポートをしており、HMBだけでなくプロテインやアミノ酸など数多くのサプリメントを販売している有名なメーカーです。
このサプリメントは他のHMBサプリメントと比べHMB含有量が多いのが特徴です。その上価格も安く、サプリメント初心者から上級者まで、幅広く活用できるサプリメントとなっています。また、初めてHMB商品を購入する人にも手軽に試せる商品となっています。
様々な研究で使用されているHMBの原料で生産されているため、品質に関しても安心だといえるでしょう。
パウダータイプは味や飲むのが苦手だ…という人や、毎回水に溶かして飲むのが面倒くさい…という人は同じBULK SPORTS からタブレットタイプのHMBサプリメントも販売されています。パウダータイプの方がHMB含有量と値段から見ると若干お得ですが、好みに合わせてタブレットタイプも検討してみましょう。
■②HMB(Optimum Nutrition)
ブランド名:Optimum Nutrition(オプティマムニュートリション)
商品名:HMB
本商品の内容量は90カプセルで、90gのHMBを摂取することができます。
海外のメーカーである【 Optimum Nutrition 】が販売するサプリメントです。海外製品に対して安全性に不安を持つ人もいるかもしれませんが、その点は全く心配ありません。
Optimum Nutritionは生産国であるアメリカでも絶大な人気を誇るサプリメントメーカーであり、日本国内でもOptimum Nutritionのサプリメントを愛用している人が多く評判が高いのです。
このHMBはここで紹介している他の2つと違い、カプセルタイプとなっています。他のメーカーが販売しているカプセル・タブレットタイプのHMBよりもHMB含有量が多く、その上値段も安いのが特徴です。
カプセル・タブレットタイプの嬉しいポイントとしては、パウダーをシェイクする必要がなく楽であることや味を気にする必要がない事が挙げられます。また、ピルケースなどに入れて持ち運ぶことで飲み忘れを防ぐことができますし、仕事などで家を空けることが多い人などは持ち運びが容易なカプセル・タブレットタイプのサプリメントの方が活用しやすいでしょう。
注意点としては、この商品が海外製のためカプセルが大きく(約26mm × 9mm)飲みにくいという点です。薬などの錠剤を飲むことが苦手な人にとっては、あまりオススメできません。
■③HMB(Be LEGEND)
ブランド名:Be LEGEND(ビーレジェンド)
商品名:HMB
本商品の内容量は135gで、90gのHMBを摂取することができます。
国内メーカーである 【 be LEGEND 】が販売するサプリメントです。be LEGENDは安くてお手頃なプロテイン商品を多く販売していることで有名なサプリメントメーカーです。安いからといって品質が悪いわけではありません。その証拠に数多くのプロアスリートがbe LEGENDのサプリメントを愛用しています。
この商品の最大の特徴は味です。そもそもHMBの商品はノンフレーバーのものが多く、味にクセがあり飲みにくい商品が多いのですが、この商品はオレンジ風味となっておりHMB特有の飲みにくさを改善しています。
サプリメントは継続して摂取しなければ効果は現れてきません。効果の高いHMBサプリメントでも、飲み続けなければ意味がないのです。もしも味が原因で他のHMBサプリが飲み続けられない場合は、この商品を試してみましょう。
まとめ
HMBについては、筋肉づくりに効果があるというのはわかってきていますが、まだまだ不明な部分が多い成分です。実際に口コミなどを見てみると、効果があまり感じられなかったという人がいるのも事実です。しかし、効果が出なかった場合、HMBだけが原因ではありません。
HMBは運動を併用しなければ効果が現れないのは確実です。軽い運動程度では効果はあまり感じられない可能性が高いでしょう。カラダづくりのためには筋トレを中心とした運動をしっかり行い、運動の効果を高めるサポート役としてHMBのサプリメントを活用しましょう。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。