納豆菌と乳酸菌の違いと相性を徹底解説

納豆菌と乳酸菌の違いと相性を徹底解説

納豆菌と乳酸菌、どちらもよく知られた菌の種類で、整腸作用など似た効果効能があるのではないかと注目されています。ただ、これらには違いや相性などがあります。どんな違いや相性があるのか詳しく説明します。


納豆菌と乳酸菌は日頃からよく目にする食品である納豆やヨーグルトなどの乳製品を作るために必要な菌ですね。

どちらにも整腸作用が認められていますが、納豆菌と乳酸菌は相性が良いことはご存知でしょうか?納豆菌と乳酸菌の特性や違いとその相性について見ていきましょう。

納豆菌とは

納豆菌(Bacilicus subtilis var.natto)とは枯草菌の一種で、納豆を作る際に利用される菌を総称して言います。

枯草菌は乾燥している環境下では芽胞の状態で存在し、温度や水分の条件が満たられた環境になると一気に増殖します。

納豆菌は芽胞の状態で稲藁に多く存在しています。芽胞は物理、熱に耐える構造をしていることを利用し、旧来の納豆の製法では稲藁を熱湯で煮沸することで納豆菌以外の菌を死滅させることで納豆菌のみを利用できるようにしていました。

乳酸菌とは

乳酸菌(Lactic acid bacteria)とは形態上の分類ではなく、慣用的に用いられている菌です。どのようなものが乳酸菌と呼べるのか1つずつ確認していきましょう。

グラム陽性

細菌の仲間はグラム染色によって青から紫に染まるグラム陽性菌と赤からピンクに染まるグラム陰性菌に大別されおり、乳酸菌はグラム陽性です。グラム染色は細菌の細胞壁構造の違いを反映したものと考えられています。一般にグラム陽性菌は陰性菌に比べて細胞壁の抗生物質であるペプチドグリカンの層が厚くなっています。

乳酸菌の形状

乳酸菌の形状は球菌と桿菌(かんきん)が存在します。棒状の細胞形態を桿菌といいます。細胞の幅および長さをそれぞれ短径と長径で表現すると、乳酸菌の桿菌細胞は短径1μm、長径3~7μmであるものが一般的です。

しかし、短径と長径に大きな差がない短桿菌あるいは長径が数十μmにも達する長桿菌も存在しています。球菌は細胞ひとつひとつが球形をしています。乳酸菌に見られる球菌は細胞配列により連鎖と四連の2通りに分けることができます。

カタラーゼ陰性

カタラーゼはヘムを含む酵素で過酸化水素(H2O2)を水と酸素に分解します。酸素呼吸をする生物はTCA回路を使いエネルギーを獲得します。カタラーゼは酸素呼吸を行う生物が全般的に持つ酵素です。動物、植物はもちろんのこと、酸素呼吸をするすべての微生物(好気性細菌、酵母、カビなど)も持っています。

しかし、乳酸菌のように酸素を使わず嫌気的にエネルギーを獲得する微生物はTCA回路を持たないためにカタラーゼを持ちません。このように嫌気的にエネルギーを獲得する生物はカタラーゼ陰性といい、乳酸菌はカタラーゼ陰性です。

乳酸の産生

発酵によって糖類から多量の乳酸を産生し、かつ、悪臭の原因になるような腐敗物質を作らないものが乳酸菌と呼ばれています。乳酸菌は、TCA回路を有さず、その発酵の様式から乳酸のみを最終産物として作り出すホモ乳酸菌と、ビタミンC、アルコール、酢酸など乳酸以外のものを同時に産生するヘテロ乳酸菌に分類されています。

ホモ乳酸菌のブドウ糖発酵による乳酸産生する化学式は
C6H12O6→2CH3CHOHCOOH

ヘテロ乳酸菌のブドウ糖発酵による乳酸産生する化学式は
C6H12O6→CH3CHOHCOOH+CH3CH2OH+CO2
となります。

ホモ乳酸菌ではブドウ糖1モルから2モルの乳酸菌が産生され、ヘテロ乳酸菌では1モルから1モルの乳酸が産生されていることが分かります。

ホモ乳酸菌のブドウ糖から乳酸産生する効率は100%、ヘテロ乳酸菌の産生効率は50%です。わずかながら乳酸を産生する細菌はいくらでも存在するので効率が50%以上となるものを乳酸菌と規定されています。

乳酸菌は発酵によって多量の乳酸を産生するだけでなく、比較的低いpH条件下でよく増殖します。乳酸菌にとって乳酸は発酵の最終産物であると同時に、それを作り出して環境を酸性に変えることで他の微生物の繁殖を抑え、自分自身の増殖に有利に導く役割を持つと考えられています。体内においては腐敗菌の増殖を抑えることで整腸作用をもたらすことになります。

内生胞子を作る細菌はグラム陽性桿菌のバチルス属、スポロラクトバチルス属、クロストリジウム属およびグラム陽性球菌のスポロサルシナ属です。乳酸菌には内生胞子を作らないという定義がありますが、これは乳酸菌のうちホモ発酵型ラクトバチルス属の形態的、生理的特徴がバチルス属やスポロラクトバチルス属と類似することから、それらと区別するために設けられています。

そして乳酸菌は運動性がないという定義があります。バチルス属やスポロラクトバチルス属は運動性を持つ特徴がありますが、これらと区別するために設けられた定義です。

乳酸菌の要件

まとめると、以下の要件を満たす菌類が乳酸菌とされています。

①細胞はグラム陽性
②細胞形態は桿菌または球菌
③カタラーゼ陰性
④消費したブドウ糖に対して50%以上の乳酸を産生する
 ⑤内生胞子を形成しない
 ⑥運動性は一般的にない
 ⑦GRAS(Generally Recognized as Safe:一般に安全と認識されている)細菌群

納豆菌と乳酸菌の違い

納豆菌と乳酸菌は発酵食品に用いられている菌で、プロバイオティクスであることが共通しています。最近プロバイオティクスという言葉をよく聞くと思いますが、その定義を決めるまでには様々な変遷がありました。

プロバイオティクスの基礎的概念の樹立はノーベル賞受賞者でロシア生まれのメチニコフ(E.Metchnikoff, 1845-1916)の学説が始まりとされています。

メチニコフと同時期(1899)にフランスのパスツール研究所のTissierは下痢発症患児の糞便にビフィズス菌が少なく、健康児に多く存在することを見出しました。また下痢発症患者にビフィズス菌を投与すると、著しく改善されることが確認され、ビフィズス菌がヒトの胃腸の健康の上で重要な働きをしていることを提唱しました。

1960年代に入り、生体に有益な効果をもたらす物質(細菌も含む)に対しプロバイオティクスという言葉を確立させることがイギリスのParker博士によって提案しましたが、1989年にイギリスの微生物生態学者、Fuller博士が「腸管フローラバランスを改善することにより動物に有益な効果をもたらす生きた微生物」と定義し、それが定着したかのように思われたのですが、1998年になってGuarnerとSchaafsmaが「適正な量を摂取したときに宿主に有用な作用を示す生菌体」と定義することが提案され、この提案はプロバイオティクスを鮮明に説明しているとしてFAO/WHOのワーキンググループがプロバイオティクスの定義として採択されています。

納豆菌と乳酸菌の違いは、納豆菌は好気性菌に対して乳酸菌は嫌気性菌である、などいくつもありますが、体内へ摂取したときに構造の違いから大きな違いが現れます。胃酸に対する耐性の有無です。

納豆を摂取したとき、全ての納豆菌が芽胞を形成しているわけではないので大半は胃酸で死滅しますが、芽胞を形成している一部は胃酸による影響を受けずに腸へ達します。

乳酸菌はというと、一般的には胃酸に対する耐性がありませんのでほぼ死滅して腸内へ入り、排泄されてしまいます。ここで一般的に、と記しているのは、胃酸・胆汁酸に対して耐性を持つ株が存在するためです。特定保健用食品、通称トクホとして認められている乳酸菌は胃酸・胆汁酸に対して耐性をもつLGG乳酸菌などがあります。

納豆と乳酸菌で最も大きい違いは、名前の通り生成物が異なるという点です。
これは次に説明することに関わってきます。

10倍違う?! 納豆菌と乳酸菌の相性

納豆菌と乳酸菌の相性は良いです。共生関係といい、納豆菌と乳酸菌がともに存在するときと乳酸菌単独で存在した時を比べると、乳酸菌単体で培養したときは約10倍程度しか増殖しなかったのに対して、約100倍増殖するという研究結果があります。単独との差は約10倍違うということです。

この共生という関係は東亜薬品工業株式会社で販売されているビオスリーという医薬品で利用されています。ビオスリーという名前の通り、糖化菌、酪酸菌、乳酸菌の3種類の菌で構成されています。糖化菌と乳酸菌、酪酸菌と乳酸菌でそれぞれ共生関係があることを利用して、腸内菌叢の異常による諸症状の改善をもたらします。ここでいう糖化菌とは産出したアミラーゼによってデンプンから糖へ分解する菌のことで、納豆菌は糖化菌の一種となります。乳酸菌はデンプンを利用できないのですが、納豆菌が存在することで増殖に必要な糖が供給されるので納豆菌は乳酸菌の増殖を促すことになります。

この乳酸菌と納豆の関係は、日本酒を作るときに使われる麹菌と酵母菌の関係と同様です。

まとめ

納豆と乳酸菌の特性とその相性について理解していただけたと思います。
納豆と乳酸菌の相性を活かすためには、乳酸菌は胃酸に対して耐性を持つ必要がありますので乳酸菌食品は選んで日々の生活に取り入れてみて下さい。

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この記事のライター

薬剤師をしています。ヘルスケア分野の情報をわかりやすく説明します。

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