近年、お口の中の健康を改善するために重曹によるうがいの効果が脚光を浴びてきています。重曹うがいをする事によって、むし歯の予防、歯周病の予防と改善、口臭の予防、歯のホワイトニング効果があると言われています。
重曹とは、天然の無機物の炭酸水素ナトリウムのことで、料理の際に利用されたり、キッチン用の洗浄剤にも配合されたりしています。
食事をすると口の中の虫歯菌が歯垢などを栄養分として、酸を産生します。そうすると普段は中性の状態に保たれている口の中が、一気に酸性に傾いていき歯の表面のエナメル質などが溶け出しむし歯になりやすい状況がつくられます。唾液の働きで、この酸性に傾いた状態を元の中性の状態に戻そうとする緩衝作用という働きがあるのですが、重曹にも唾液と同じようにこの緩衝作用があると考えられています。よって重曹うがいをすることによって、口の中を中性の状態に保つ事を助ける事ができ、虫歯の予防効果が見込めることができます。
重曹歯磨きとは?
重曹による歯磨きはいたってシンプルで、あらかじめ水に溶かしておいた重曹を、普段使用する歯磨き粉の代わりに、歯磨きの際に使用するものです。
重曹歯磨きの本当の効果4つ
■①口臭予防
重曹の口臭予防の効果についてですが、まず重曹自体に洗浄作用がありますので、口臭の原因となっている口の中の食べかすなどを除去してくれる効果があります。さらに、口の中の食べかすは酸化物で酸性です。そこに弱アルカリ性の重曹が働く事によって、その働きを中和してくれるという事が考えられます。
また、重曹自体に消臭作用があるといわれていますので、口臭そのものを抑える働きがある事も考えられます。
■②口内炎の治癒の促進
重曹によって、口内炎の治癒が促進される働きも期待されています。口内炎は口内炎を引き起こす細菌が、口の中で増加する事によって起こると言われていますが、重曹でうがいすることによって、この菌を殺菌して口内炎が早く治る事が考えられます。
■③ホワイトニング効果
次に、重曹うがいによる歯のホワイトニング効果について書いていきます。重曹うがいや、重曹を使って歯磨きをすると、2週間くらいで目に見えて歯が白くなったという事を聞く事があります。これは、重曹によるクレンジング効果によるものです。前述しましたが、重曹はキッチンのクレンジング剤などにも含まれており、非常に洗浄作用が高い成分です。重曹うがいを続ける事によって、この重曹の洗浄効果が発揮され、歯の表面についていたタバコのヤニや茶渋などの着色が落とされたということになります。
ただし、歯科医院で行うホワイトニングは歯の表面の着色を落とすだけでなく、歯そのものの色も白くする働きがありますので、厳密に言えば、重曹は歯の表面の着色を落とすのみで、歯の色そのものを白くするホワイトニング効果はないという事が言えますので、歯科医院で行うホワイトニング治療とは違うということを理解しておきましょう。
また、くり返し述べていますが、重曹には強い研磨効果がありますので、重曹を使用して強く、頻繁に磨いたりすると、歯や歯肉を傷つける恐れがありますので、注意してください。
■④虫歯予防効果
重曹には虫歯予防の効果があると言われています。お口の中は普段は中性の状態ですが、食事をすると酸性の状態になり、歯の表面のエナメル質が少しずつ溶け出してきます。長時間この酸性の状態が続くと、エナメル質が完全に失われて、いわゆる虫歯ができてしまいますが、お口の中に出てくるつばが、この酸性に傾いたお口の中を中性に戻そうとする働きをします。そのことによって、簡単には虫歯ができないように歯は自然に体から守られています。
重曹にもお口の中の状態を中性に中和させようとする働きがあります。よって、重曹は唾の働きを助けて一緒に、虫歯予防のために働いてくれるのではないかと考えられています。また、重曹には殺菌効果もありますので、ミュータンス金などの虫歯菌をやっけてくれるのではないかということも期待されています。
重曹歯磨きのやり方
重曹による歯磨きのやり方は、基本的に通常の歯ブラシと同じです。あらかじめ水やお湯に溶かして作っておいた重曹水に、歯ブラシの毛先をつけるか、もしくは液体歯磨きのように重曹水で最初にお口を軽くすすいでから、通常の歯磨きを行います。前述したように重曹には、かなり強力な研磨力がありますので、通常の力で歯ブラシをしても歯の表面が削られてしまう事があります。
重曹歯磨きを行う場合は、常に力の入れ具合に気をつけながら、できるだけやさしく歯を磨いてあげるようにしましょう。また、重曹歯磨きを行なう頻度も、毎日行うのではなく、歯や歯肉への負担を考慮して週1回程度にとどめておくようにしましょう。続いて重曹水のつくり方について説明します。
重曹歯磨きを行うためには、まず重曹を水に溶かした液体を準備しておく必要があります。
重曹を小さじのスプ―ン一杯(3g)取り、水が入っている500mlのペットボトルに入れ、蓋をしてボトルをよく振って溶かします。重曹はお湯で溶かした方が溶けやすいので、それでも大丈夫ですが、熱すぎると唾液の働きを阻害してしまう恐れがあるので、体温(37℃)より熱くないお湯で溶かすようにしてください。また、重曹入りの水は冷蔵保管で1週間くらい持つと言われていますので、参考にして下さい。
毎日は危険!? 重曹歯磨きのデメリットと注意点6つ
■1. 歯へのダメージ
重曹の強い研磨力によって、歯の表面が傷つけられて、ひどい場合は表面のエナメル質と呼ばれる組織がそぎ落とされて、中の象牙質と呼ばれる組織が露出してくる場合があります。
この象牙質と呼ばる組織は、黄色い色をしてますので、エナメル質がはがれて、エナメル質の厚みが薄くなってくるだけでも、歯そのものは黄色くみえてきます。また完全に象牙質が露出するとさらに歯の黄ばみが目立ってきます。さらに象牙質の表面はエナメル質に比べて粗造で凸凹しており、着色汚れが付きやすくなり、組織としてもエナメル質と比べて柔らかく租なので、虫歯にもなりやすくなります。また、象牙質は象牙細管と呼ばれる細い管で歯の中の神経とつながっていますので、冷たいものがしみたり、歯ブラシが歯にあたるとしみたりするなどのいわゆる知覚過敏の原因にもなりえます。
一度、完全に失ったエナメル質は元には戻りませんので、こういった事が起こらないように注意が必要です。
■2. 歯肉やお口の中の粘膜などへのダメージ
重曹の強い研磨力によって、歯のみだではなく、歯の周りの歯肉や頬の粘膜、舌などの柔らかい組織も簡単に傷つけられる場合があります。お口の中の組織が傷つけられ、お口の中に傷がありますと、歯磨きや食事の際にとても不快なおもいをして、十分な栄養がとれなかったり、歯磨きも十分に行えなかったりして、かえって歯が汚れて黄ばんでくるなどもありますので、注意が必要です。
しかし、お口の中の組織は大方1-2週間くらいで細胞が入れ替わっていき、傷の治りが早いですので、大きな傷でなければさほど、心配する必要はありませんが、傷が治るまでは、重曹の使用を控えたほうがいいでしょう。
■3. 細菌のバランスの崩壊?
体の中には善玉菌、悪玉菌など無害な菌と有害な菌が必ず存在しています。健康な状態においては、無害な菌がほとんどですので、有害な菌が悪さをしないのですが、退場を崩したりして、有害な菌が増えてくると、普段の菌の関係のバランスが崩れてきて、病気にかかったりします。お口の中にも、無害な菌とさまざまな種類の虫歯菌や歯周病菌とが一緒に存在しています。
重曹は強い殺菌力があるために、歯周病菌などに有効という事が話題となっていますが、同時に無害な菌までやつけてしまう恐れがあります。長い目で見たばあい、重曹を長期間頻繁に使用することによって、口の中の細菌バランスがどのように変化していくのかということがはっきりわかっていませんので、やはり過度な重曹の使用は控えておいたほうが得策と言えます。
■4. 塩分の過剰摂取?
重曹は塩分も多く含んでいますので、頻繁に使用することによって、体が塩分過多の状態となり、体内の臓器に負担がかかることがあるので、注意しましょう。具体的には高血圧やむくみなどの原因になりえます。また腎臓に疾患がある方などは、持病を悪化せる恐れもありますので、重曹の使用によって、体調の変化などがあらわれた場合は医療機関を受診するようにしてください。
■5. 歯石がつきやすくなる
重曹はアルカリ性ですので、使用することによって口の中が中性の状態からアルカリ性の状態に傾くことが考えられます。前述したとおり、虫歯予防の観点から言うと、このアルカリ性の状態はかえって好ましいものとなりますが、逆に歯石が付きやすい状態になります。
歯科医院にくる患者さんを見ていますと、虫歯にほとんどなったことがないけど、たくさん歯石がついているといった方をたびたび見ることがあります。これは、まさにお口の中が普段からアルカリ性に傾いていることが考えられる方です。
歯石があっても、しっかり適切な口腔内ケアをおこなっていれば、歯周病も防げることができますが、基本的に歯周病菌は歯石に集まってくるので、できれば歯石はとっておきたいものです。
重曹の使用によって歯石がよくつくようになった方は、歯科医院にて相談するようにするといいでしょう。また、歯石は歯磨きではとれませんので、気付いた方は歯科医院で除去してもらうようにしましょう。
■6. 歯科治療を受けている人は注意
現在、歯科医院で歯科治療を受けている最中の人は重曹の使用に注意が必要です。基本的に、歯科治療の途中の歯は中途半端な大きさになっているなどしていて、外部からの力にもろくなっています。そこに重曹などの研磨力が強いもので、歯を磨いてしまうと歯がかけたり、仮のふたなどが取れたりといったリスクが高くなります。
また、例えば親知らずの抜歯、歯石とり、歯周病の外科処置をした後には、お口の中に大なり小なりの傷ができています。そこに、重曹などの化学物質などが入ってくると、傷の治りが遅くなったり、ひどい場合は傷口を悪化させる原因にもなります。
また、矯正治療などで、矯正装置をお口の中に入れている患者さんは、器具の破損や脱離などの原因にもなりますので、重曹の使用は控えた方がいいでしょう。
重曹歯磨きの頻度
これまで述べてきたとおり、重曹は効果が強い反面、歯へのダメージ、塩分の問題などリスクが高いアイテムでもあります。
よって毎日使用するのではなく、週1回程度の使用にとどめておくのが得策と言えるでしょう。
また、歯ブラシの毛先は、かたいものではなく、なるべく柔らかいものをしようして、ブラシのヘッドも小さくコントロールしやすいものなどをしようして、できるだけお口の中を傷つけないように注意して磨くようにして下さい。
重曹入りのおすすめの歯磨き粉2つ
■①歯磨撫子 重曹つるつるハミガキ
ペパーミントの香りを配合して、適度な粘度に仕上げていますので、使いごこちがいいでしょう。
■②歯磨撫子 重曹と炭のハミガキ
重曹の中和作用に夜虫歯予防効果に加えて、炭の吸着作用による口臭予防、着色除去作用が期待できます。
まとめ
以上、重曹について述べてきましたが、重曹は虫歯予防、ホワイトニング、口臭予防、口内炎の治癒促進などの効果も強い反面、まだまだ長期的な目で見ると、その安全性に疑問が残ったり、本当に私達にとって有益なのかどうかといった事がわかっていない面も多々あります。
重曹を使用することによって、何らかの問題が起こった場合は、必ず使用を一時中断して、歯科医院や、各医療機関に相談するなどして、ご自身のみで判断しないように心掛けてください。
また、虫歯予防、口臭予防に関しては日々の適切な口腔内ケアで多くの場合改善されますし、ホワイトニングにおいても歯科医院でより安全で効果の高いホワイトニング治療を受けることができますので、重曹で問題が改善されない場合は、方法をきりかえるといった柔軟性も大切なように思われます。お口の中に対して、興味をもって様々な情報を正しく理解されることがとても大切なように考えられます。