一部テレビなどのメディアで、重曹を歯ブラシの毛先につけてブラッシングを行うと、数週間で歯が白くなると紹介されたみたいです。重曹は天然の無機物である重炭酸ナトリウムのことで、強力な研磨作用があり、キッチンなどでクレンジング剤、洗剤などとして使用されています。
この重曹でうがいまたは、重曹を使用して歯ブラシを行うと、歯の表面が白くなりホワイトニング効果が得られたという報告が多数出されてきていますが、実は重層は研磨力が強すぎる物質で、使用方法や頻度を間違えると、歯や歯肉に多大なダメージを与えてしまう危険性があります。
今回の記事では、重層について、その効果や使用方法について書いていきたいと思います。
危険!? ウワサの重曹ホワイトニングとは?
一部テレビなどのメディアで、重曹を歯ブラシの毛先につけてブラッシングを行うと、数週間で歯が白くなると紹介されたみたいですが、重曹はキッチンなどで使用される洗剤にも含まれるほど強力な研磨作用があります。その強力な研磨作用によって、たしかにタバコのヤニや茶渋などの着色汚れを、効果的に落とす働きが重層にはあるように考えられます。
ただし、重層による研磨作用によって、歯についた着色などの汚れのみを落としているわけではなく、実は歯の表面のエナメル質も削り落としています。歯の表面のエナメル質が削られると、内側のきれいなエナメル質が歯の表面にでてきますので、一時的に歯が白く見えるようになります。
ところが、強い研磨作用で歯の表面を削っていますので、実際の歯の表面はかなり凸凹している状態となります。そうすると、その凸凹に着色などがより多くつきやすくなります。新たに着いた着色を落とそうと、再び重曹での歯磨きを繰り返していると、歯の表面のエナメル質がかなり薄くなり内部の象牙質が透けて見えてきます。象牙質は元々黄色いですので、歯は白くなるどころか今度は、歯が黄色く見えてきます。
また、ここまで歯の表面が削れてくると、冷たいものがしみたりといった不快症状が出てくる可能性があります。
よって、重曹を使用して頻繁に歯磨きをするということは歯に大きなダメージを与えてしまうといった危険性があります。ちなみに、一度完全に失われたエナメル質などの歯の組織は元には戻ることができません。
多くの歯科医師が、初期の虫歯を削らないで経過観察したり、痛みの原因がはっきりしなければ歯をやみくもに削らないといったことの理由にはこのことが大きくあげられます。
ですので、みなさんも歯が白くなるといった一時の効果のみに惑わされることなく、重層を使用するのなら、歯へのダメージに注意しながら、使用していくといったことが必要となります。
■ホワイトニング効果のある歯磨き粉とは差があるのか?
一般的にホワイトニング効果を謳っている歯磨き粉も原理は重曹と同じで、研磨作用を持っている研磨剤で歯の表面の汚れを歯磨きなどで機械的に落としていく原理になります。違いは、重曹の方が強い研磨力を持っているということです。
つまり、重層のほうが比較的に簡単に歯の表面の着色汚れを落とすことができますが、その分、歯へのダメージも大きくなります。
また、ホワイトニングに特化した歯磨き剤は、フッ素やハイドロキシアパタイトなどの歯の再石灰化を促す効果のある薬剤を配合している物も多く、歯のダメージを最小限にくいとめるように作られています。その他にはビタミンCなど、歯肉の保護や健康化を目的とした物質も入っている場合もあります。
人によっては、歯へのダメージを考慮して、わざわざ研磨剤が入っていない歯磨き粉を探して使用されている方もいるくらいですので、一時の効果に惑わされずに、よく考えてご自身の目的や口腔内の状態にあった歯磨き粉や歯磨き方法の選択をするようにしてください。
また、歯科医院で行われているホワイトニング治療は、着色汚れを除去するだけでなく、歯そのものの色を白く変える働きがありますので、重層によるホワイトニングとは根本的にメカニズムが異なります。
重曹ホワイトニングのやり方
重曹歯磨きを行うためには、まず重曹を水に溶かした液体を準備しておく必要があります。
重曹を小さじのスプ―ン一杯(3g)取り、水が入っている500mlのペットボトルに入れ、蓋をしてボトルをよく振って溶かします。重曹入りの水は冷蔵保管で1週間くらい持つと言われています。
重曹はお湯で溶かした方が溶けやすいので、それでも大丈夫ですが、熱すぎると唾液の働きを阻害してしまう恐れがあるので、体温(37℃)より熱くないお湯で溶かすようにしてください。
続いて、歯ブラシの毛先に重曹水を軽くつけて、普段通りに歯磨きをするようにしてください。もしくは、歯磨き前に重曹水で軽くお口の中をすすいでから、歯磨きを行ってください。ただし、重曹は強い研磨力があるために、歯やお口の中を傷つけないように、絶対に強い力で磨かないように注意してください。
何度も繰り返し述べていますが、重曹は効果が強い反面、歯へのダメージ、塩分の問題などリスクが高いアイテムでもあります。
よって毎日使用するのではなく、週1回程度の使用にとどめておくのが得策と言えるでしょう。また、歯ブラシの毛先は、かたいものではなく、なるべく柔らかいものをしようして、ブラシのヘッドも小さくコントロールしやすいものなどをしようして、できるだけお口の中を傷つけないように注意して磨くようにして下さい。
また、重層の使用後に、歯や歯肉がしみたり、痛みが出てきたりといったことがあれば、重層に使用を中断して、歯科医院で問題がないか見てもらうようにしてください。
重曹を歯磨きで使ったときの効果3つ
■①ホワイトニング効果
前述したように重曹には強力な研磨作用がありますので、歯ブラシで歯の表面についた汚れを落とすのをサポートしてくれる効果があります。研磨剤は一般の売られている多くの普通の歯磨き粉にも配合されているものです。シリカなどがそれにあたります。
重曹を使用する事によって、歯磨きの洗浄能力があがりますので、口の中を清潔に保ち、虫歯や歯周病の予防にも効果があると考えられます。また、タバコのヤニや茶渋などのがんこな着色汚れを歯磨きで落とせる可能性もありますし、歯科治療で使用される歯の詰めものと自分の歯との間にできる着色も落とせるかもしれません。
ただし、重曹は研磨力が強いので、歯そのものを大きく傷つけて、ダメージを与える可能性があります。重曹を頻繁に使用したり、重曹を歯ブラシにつけて強くこすると、歯の表面のエナメル質が削れてしまい、歯の表面が凸凹になってしまいます。そうすると、ツルツルの歯の表面に比べて、食べかすや着色などの汚れがその凸凹になった歯の表面にたまりやすくなります。
また、歯の表面のエナメル質が、重曹を使用した歯磨きでえぐられていくと、エナメル質の次の象牙質と呼ばれる組織がうすく見えてきたり、エナメル質のダメージが大きくなると露出してきたります。この象牙質はエナメル質と比べてもともとの色が黄色いので、歯そのものも黄色くみえるようになります。また、象牙質はエナメル質と比べて粗く、もろいので、汚れがつきやすく、むし歯にもなりやすくなります。さらに、象牙質は象牙細管とよばれる組織を介して、歯の神経と直接つながっていますので、象牙質が露出してくると、冷たいものがしみたり、歯磨き中にしみるといったいわゆる知覚過敏の症状がでてきます。
■②歯周病に対する効果
重曹には強力な殺菌作用があり、口の中の歯周病菌をその殺菌作用でやっつけてしまう効果があると言われています。日本でも数年ほど前から、パーフェクトペリオと呼ばれる重曹に含まれる次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした液体を、口腔内の歯周ポケットに注入して、歯周病菌を殺菌させるといった治療法が出てきています。まだ確実な効果があるかどうかの確定はできていませんが、歯周病は治療が困難な場合も多く、しかも多くの方が歯周病に罹患されているので、そういった夢のような治療法が確立されれば、歯科医師も患者さんも多大な恩恵を受けることになるでしょう。
また、重曹は塩分が含まれているので、歯周病によって起こっている歯肉の腫れを抑えて、歯肉を引き締める効果もあります。ただし、前述したように重曹には塩分が含まれていますので、全身疾患をお持ちの方で塩分の摂取制限がある方などは、注意が必要です。
また、口の中が重曹によってアルカリ性に傾いている状態が長く続くと、逆に今度は歯石ができやすくなります。これはむし歯になった事がなく、何十年も歯医者に行ったことがないという患者さん歯石が多くみられる事があるという事と同じ原理で、口の中が酸性に傾いているとむし歯になりやすく、逆にアルカリ性だとむし歯にはなりにくい反面、歯石ができやすくなるという事が起こります。ですので、前述の例の患者さんは、体質的に口の中がアルカリ性の状態だということになります。歯石そのものは直接的に歯周病を起こすわけではありませんが、歯周病菌が歯石に集まってきますので、重曹うがいなどをされる方は、ブラッシングもきちんと行い、歯石の沈着に注意するようにしてください。
■③むし歯に対する効果
お口の中は食事をするたびに、中性から酸性の状態に傾き、その都度歯の表面からリンやカルシウムなどが溶け出していきます。これを専門用語では脱灰と呼んでいます。重曹はもともとアルカリ性ですので、この酸性に傾いた状態のお口の中を中和し、歯の脱灰現象を防ぐと言われています。もともと、唾液が口の中を中性に保とうという働きを担っているわけですが、重曹を併用することによってその作用が高まる効果が期待されます。
また、重曹は舌苔(舌の表面に汚れがこびりついた状態)が原因となっている口臭を改善させるとも言われています。
自宅でも手軽にできるセルフホワイトニングの方法3つ
■①重層によるうがい歯磨き
ここまで述べてきたように重層には、強力な着色汚れ除去作用があります。ただし、その分、歯や歯肉へのダメージも大きくなる可能性がありますので、使用方法には十分気を付けたいものです。
■②ホワイトニングに特化した歯磨き剤の使用
最近では、ネットの通販サイトで、様々なホワイトニング効果をうたった歯磨き剤が売り出されています。あまりにも種類が多いためにどれを購入しようか迷われる方も多いと思いますが、効果と副作用などを十分に検討して購入される必要があるでしょう。
■③フロスの使用
これは、直接敵意は事態を白くする効果は期待できませんが、歯と歯の間に汚れがつく、さらにはそこから虫歯になったりして歯と歯の間が茶色くなってくるといったことを防ぐ意味で、フロスは大きな力を発揮します。実際に日常的にフロスを使用されている方は、気づいている方も多いと思いますが、歯磨きの後に、フロスをすると、かなりたくさんの歯垢がフロスに付いてきます。これは、歯ブラシだけでは、歯と歯の汚れは完全には除去できないといったことを表しています。毎食後の使用は難しいかもしれませんが、一日最低1回はフロスを使用して、歯と歯の間の汚れを落として、お口の中を清潔な状態に保っておきたいものです。
まとめ
以上、重曹について述べてきましたが、重曹うがいはたしかに、お口の健康に有効な効果もありますが、やり過ぎると歯や口の中の粘膜を逆に傷つけてしまうことになります。また、塩分もかなり含まれていますので、効果を求めて過度のうがいをすると、塩分摂取過多の状態になる事も予想されます。あくまで、歯ブラシ後の洗口剤と同じように使用されるのがいいでしょう。
また、重曹うがいを使用して気になる症状などが出た場合は、一度使用を休めて、歯科医院で口の中の状態は問題になっていないかチェックしてもらうようにしてください。
お口の中の健康の増進維持に最も大切なのは、歯ブラシやフロッシングなどの日々の規則正しい適切な口腔内ケアです。重曹うがいによる、効果も魅力的にみえるかもしれませんが、過度に期待を寄せることなく、日頃のブラッシングなどを着実に行なっていくようにしてください。