体を鍛える目的として良く聞かれるのが、上半身を逆三角形ボディにしたいというものです。それでは、上手く逆三角形ボディをつくるのにはどのようなトレーニングが必要なのでしょうか?
上半身の筋肉は大胸筋や三角筋といった前側にある部位だけではなく、後ろ側にある背中の部位を鍛えることで体の横幅を大きくすることができ、逆三角形のシルエットを作り上げることが可能となります。
今回は、背中の横幅を大きくして逆三角形のシルエットを作り上げることのできるラットプルダウンという種目を紹介します。ラットプルダウンのやり方とフォームだけでなく、効果的に筋トレをおこなうコツについても説明していきます。
ラットプルダウンとは?
ラットプルダウンとは、専用のマシンを使用して広背筋や上腕三頭筋を中心に鍛える筋力トレーニングのことを指します。懸垂をおこなうようなイメージで頭上にあるバーを引く動作を繰り返すことによって広背筋・三角筋などを鍛えることができます。
また、ラットプルダウンはバーを頭の前後どちらに引き寄せるかによって、効かせる部位を変化させることができるという特徴もあります。
動作自体は特に難しいものではありませんので、初心者でも動作を習得しやすいトレーニング種目となっており、肩や肘関節など複数の関節を動員する多関節(コンパウンド)種目に分類される高重量を扱いやすいトレーニング種目です。
ラットプルダウンで鍛えられる筋肉部位4つ
ラットプルダウンでは、主に以下の部位の筋肉を鍛えることができます。
①広背筋
広背筋は、背中から腰部分を覆うようについている部位の筋肉を指します。腕を開閉させる動作や、後方に挙げる動作をおこなう際に働く筋肉です。また、腕をまっすぐに伸ばした状態からカラダを引き付ける(引っ張る)動作で主に使われます。
②上腕三頭筋
上腕三頭筋は、上腕の裏側にある筋肉であり、腕を伸ばす動作で主に使われます。上腕といえば力こぶをつくる上腕二頭筋のイメージが強いですが、上腕三頭筋は上腕の体積の薬3分の2を占めており、上腕を太くしたい場合は、上腕二頭筋ではなく上腕三頭筋を鍛える方が効果的だといえます。
③大円筋
大円筋は、肩甲骨と上腕の境についている筋肉であり、肩関節の伸展や内転・内旋動作で主に使われます。広背筋と近い部分にあることから、広背筋の筋力トレーニングをおこなうことで大円筋も同時に鍛えることになります。
④僧帽筋
僧帽筋は、首から肩、背中にかけて広がる大きな筋肉で、僧帽筋でも上部・中部・下部と分けることができます。肩こりをほぐそうと皆さんが押す肩の上の部分が僧帽筋(上部)です。
ラットプルダウンの正しいやり方・使い方・フォーム
それでは、ラットプルダウンの正しいやり方やフォーム、マシンの使い方について説明していきます。
ラットプルダウンについては、バーを体の前面に引く「フロントネック・ラットプルダウン」と、体の後面に引く「ビハインドネック・ラットプルダウン」の2種類があります。
ここでは、その2種類のトレーニング方法について順に説明していきます。
■①フロントネック・ラットプルダウンのトレーニング方法
1. マシンに座り、座ってカカトを浮かせた際に太腿が水平になりようにパッドの高さを調節します。
2. 腕を横に伸ばした際、肩幅の約1.5倍の位置でバーを握ります。
3. 上体をやや後傾させておき、肩を下げながら胸を張った状態で肘を曲げながら、バーを胸元まで引き下げます。
■②ビハインドネック・ラットプルダウンのトレーニング方法
1. マシンに座り、座ってカカトを浮かせた際に太腿が水平になりようにパッドの高さを調節します。
2. 腕を横に伸ばした際、肩幅の約1.5倍の位置でバーを握ります。
3. 肩を下げながら胸を張った状態で肘を曲げながら、バーを首の後ろまで引き下げます。
■フロントネックとビハインドネックの違い
フロントネック・ラットプルダウンとビハインドネック・ラットプルダウンの違いは、動作によって鍛えられる部位が変わってくるところです。
<フロントネック・ラットプルダウンで鍛えられる部位>
広背筋、大円筋などが主に鍛えられる
<ビハインドネック・ラットプルダウンで鍛えられる部位>
広背筋、大円筋に加えて僧帽筋も鍛えることができる
しかしながら、ビハインドネック・ラットプルダウンは肩関節や首へ高い負荷が掛かってくるため、関節の柔軟性が不足している方にとってはあまりおすすめできません。また、僧帽筋を鍛えるトレーニング方法は他にも存在するため、最近ではフロントネック・ラットプルダウンが主流となっているように感じます。
ラットプルダウンの効果的な筋トレのコツ10個
①バーを掴む際は肩幅より広い位置で握る
広背筋へ効かせたい場合は、肩幅の1.5倍以上の握り幅で動作をおこなうことで広背筋へ効かせやすくなります。
②バーを握る際はサムレスグリップで
バーを握る差は親指をバーに巻き付けないサムレスグリップで動作をおこなうことで、広背筋へ効かせやすくなります。
③バーを下ろす際は肩甲骨の寄せを意識する
バーを下ろす際は腕の力だけで動作をおこなってしまうと広背筋へ効かせることはできません。肩甲骨の寄せを意識しながらバーを下ろすことで、広背筋を収縮させる感覚を掴みやすくなります。
④前腕は床と垂直を意識
バーを下ろす際に前腕を前に倒してしまう方がいますが、このような動作は肘への負荷が高くなるため、肘の故障の原因となります。バーを下ろす際の前腕は、常に床と垂直となるように意識しながら動作をおこないましょう。
⑤バーを下ろす際は胸の位置で止める
バーを下ろす際の位置は胸の位置で止めましょう。よくバーを胸より下の位置まで引いてしまう方がいますが、前腕が倒れてしまい肘を痛める原因にもなってしまいます。肩甲骨の寄せを意識すれば、バーの位置が高くても広背筋へ十分効かせることができます。
⑥バーを下ろす際は肘を外側に向ける
肩甲骨の寄せが上手くできないという方の場合、肘の向きが誤っていることがよくあります。肘を外側に開いておくことで肩甲骨を動かしやすくなりますので、背中の筋肉へ効きやすくなるため、ラットプルダウンのトレーニング効果を高めることができます。
⑦バーは素早く引き、ゆっくり戻す
バーを下ろす際は背中の力を意識して素早く引きましょう。はじめの動作が遅すぎると腕の力を使ってしまい、背中の筋肉を追い込む前に腕が先に疲労してしまいますので、はじめは素早く引きましょう。逆に、バーを戻す際はゆっくりした動作を意識することで背中への負荷が抜けることなく、最後までしっかりと背中へ効かせることができます。
⑧逆手にすると腕にも効く
ラットプルダウンは順手でバーを持つのが基本となりますが、逆手でバーを持つことで腕にある上腕二頭筋を同時に鍛えることができます。また、その際は手は肩幅で持つことがポイントとなります。
⑨バーを下ろす際は少し胸を張る
バーを下ろす際は少し胸を張っておきましょう。肩甲骨の寄せが意識しやすくなり、背中の筋肉を収縮させやすくなります。また、胸を張りすぎて背中が反りすぎないように注意しましょう。
⑩まずは肩から下ろす意識で
肩甲骨の寄せを意識できない場合は、まず肩から下ろすようにしてみましょう。肩が上がった状態でバーを下ろしても肩甲骨の寄せを意識しにくく、背中の収縮を感じることができません。
目的別!ラットプルダウンを行うときの重量と回数
ラットプルダウンを行うときの重要と回数はどのように決めれば良いのでしょうか?
自分の目的に合わせてウエイトの重量設定や回数は異なってきます。3つの目的別に説明します。
■目的①:筋肉量を増やしたい(筋肥大をおこなう)
トレーニングによって筋肉の量を増やすことを「筋肥大」といいます。筋トレ初心者の方などはまずは筋肉量をしっかりと増やすための筋肥大トレーニングをおこなうと良いでしょう。
<筋肥大をおこなう重量と回数>
重量と回数:1セットあたり10回~12回がギリギリ上げられる重さ
セット数:3セット以上
インターバル:60秒~90秒程度
インターバルは60秒から90秒程度を目安としましょう。インターバルが長すぎると鍛える部位の筋肉が回復してしまいますので、トレーニング効果が弱まってしまう場合があります。
■目的②:扱う重量を増やしたい(最大筋力の向上)
トレーニングによって扱えるウエイトの重さを増やすことを「最大筋力の向上」といいます。筋肥大トレーニングとは異なり、1セットあたり4~6回程度扱える重量設定でトレーニングをおこないます。
少ない回数で徐々に扱う重量を増やしていくことが、最大筋力を向上させるポイントとなります。
<最大筋力の向上をおこなう重量と回数>
重量と回数:1セットあたり4回~6回がギリギリ上げられる重さ
セット数:3セット以上
インターバル:90秒~120秒程度
インターバルは90秒から120秒程度とり、筋肉をある程度回復させるのが良いでしょう。逆にインターバルが短すぎてしまうと筋力が回復せず、高重量でのパフォーマンスが極端に低下してしまう場合があります。
■目的③:筋肉を疲れにくくしたい(筋持久力の向上)
トレーニングによって筋肉を疲れにくくすることを「筋持久力の向上」といいます。1セットあたり20~30回程度扱える重量設定でトレーニングをおこなうことで高回数のトレーニングでも筋肉が疲れにくい体を作ることができます。
<筋持久力の向上をおこなう重量と回数>
重量と回数:1セットあたり20回~30回がギリギリ上げられる重さ
セット数:4~6セット程度
インターバル:30秒~40秒程度
インターバルは30秒から40秒程度と短めにとり、筋肉が回復し過ぎないように注意しておきましょう。軽めのウエイトでトレーニングをおこないますので、筋肉が回復しないよう短めのインターバルをとることで筋持久力の限界値を超えていくように意識することがポイントとなります。
上級者向け!ラットプルダウンでより追い込むためのテクニック2つ
ラットプルダウンを正しいフォームで一定の重量や回数で動作をこなせるようになってくると、さらに筋肉を追い込みたいという方もいます。
そこで、上級者向けのラットプルダウンで使える2つのテクニックを紹介します。
■①スーパーセット法
スーパーセット法は、鍛えたい部位と拮抗(反対側にある)する筋肉を鍛えるトレーニング種目をインターバルを挟まず、交互におこなうことによって筋肉を追い込むことのできるテクニックです。
<スーパーセット法の例>
背中:ラットプルダウン
↓
胸:ベンチプレス
↓
背中:ラットプルダウン
■②ドロップセット法(ディセンディングセット法)
ドロップセット法(ディセンディングセット法)は、規定の重量で動作を行うことができなくなった後に、少し軽い重量でトレーニングを継続していくことで回数をこなすことができるようになり、疲労した状態でも継続して筋肉を追い込むことができるというテクニックです。
ラットプルダウンの筋トレ5種類
ラットプルダウンには、はじめに紹介したやり方以外にもさまざまなバリエーションがあります。ここでは、ラットプルダウンのバリエーションについて紹介します。
■①フロントネック・ラットプルダウン(基本のフォーム)
フロントネック・ラットプルダウンは、ラットプルダウンにおいて基本フォームとされるやり方です。バーを体の前面に引くことによって、広背筋をメインに鍛えたい場合に適しています。
■②ビハインドネック・ラットプルダウン
ビハインドネック・ラットプルダウンは、バーを体の後面に引くことによって広背筋だけではなく、僧帽筋にも効かせることができます。また、フロントネック・ラットプルダウンで動作をおこなっていても、なかなか広背筋への刺激を感じない場合にも有効です。
■③リバース・ラットプルダウン
リバース・ラットプルダウンは、バーを逆手で持った状態で動作をおこなう種目です。逆手でラットプルダウンをおこなうことで、腕への関与が大きくなりますので、上腕二頭筋、および僧帽筋をメインに鍛えることができます。
■④クローズグリップ・ラットプルダウン
クローズグリップ・ラットプルダウンは、専用のアタッチメントを使用することで手の幅を狭めた状態で動作をおこなう種目となります。動作の際にしっかりと肩甲骨を引き寄せることで僧帽筋をメインに鍛えることができます。
・使用するアタッチメント:ロープーリーハンドル
■⑤ロープ・ラットプルダウン
ロープ・ラットプルダウンは、専用のアタッチメント(ロープ)を使用することで握力を同時に鍛えることができるトレーニング種目です。手幅が狭いためクローズグリップ・ラットプルダウンの動作と良く似ていますが、ロープが自在に動くため可動範囲があまり制限されないため、広背筋や僧帽筋、上腕といったさまざまな部位を意識することで握力だけではなく、複数の部位を鍛えやすいという特徴があります。
・使用するアタッチメント:トライセプスロープ
まとめ
ラットプルダウンは逆三角形ボディを作るための、背中の横幅を大きくするトレーニングメニューとしては最適な種目だと考えています。
また、トレーニングの動作についてもそれほど難しくはありませんので、筋トレ初心者の方でも取り組みやすいメニューだといえます。
まずは無理のない重量で正しいフォームを意識しながら、じっくりと鍛えるようにトレーニングをおこなっていきましょう。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。