あなたは自分の背筋を見たことありますか?
まず普通の人は、ないと答えるでしょう。鏡でも見にくいので当然ですね。
胸やお腹などカラダの前面は、トレーニング中でも鏡などで見ることができ意識しやすいのですが、背筋は見えないので意識しにくく、トレーニングがおろそかになりがちです。
背筋を鍛えるうえで「背筋とはどこのことか」、そして「どのような動き方をするか」を知ることが、トレーニング効果を高めるために必要不可欠です。
ここでは背筋について詳しく解説するとともに、自宅や室内でもできる背筋の効果的なトレーニング方法も紹介いたします。ぜひ参考にしてください。
背筋とは?4つの筋肉部位と働き
背筋とは、背部にある筋肉の総称です。一言で背筋と言っても、一つの筋肉ではありません。
大きく分けると背中の上部についている「僧帽筋」や背中全体に広がる「広背筋」、「脊柱起立筋」などが有名です。それ以外にも肩甲骨や背骨の周りには、大小さまざまな筋肉がついています。
背筋は肩関節や体幹部を“動かす”だけでなく、背骨を固定し“安定させる”働きを担っています。筋肉によって働きが異なってきますので、4つの筋肉(①僧帽筋、②広背筋、③脊柱起立筋、④肩甲骨周りの筋群)の役割を確認してみましょう。
①僧帽筋の働き
僧帽筋は首から肩、背中にかけて広がる大きな筋肉で、僧帽筋でも上部・中部・下部と分けることができます。肩こりをほぐそうと皆さんが押す肩の上の部分が僧帽筋(上部)です。
僧帽筋には、腕を動かす際に肩甲骨を動かしたり、逆に肩甲骨を安定させ固定するという働きがあります。重い物などを持ち上げる時に肩甲骨が固定されていないと、強い力を発揮することができません。そのため僧帽筋が力を発揮し、土台としての役割を果たしています。
また、肩を耳に近づけるようにすくめる動作も僧帽筋の動きです。重いものを手に持って移動している時に力を発揮しているなど、背筋の中でも力が強い筋肉です。
②広背筋の働き
広背筋は、背中~腰と腕に繋がっている大きな筋肉です。開いた腕を閉じたり、後ろに挙げたりするときに働く筋肉です。腕をまっすぐに伸ばした状態からカラダを引き付ける(引っ張る)動作で主に使われます。
スイマーやボディビルダーなどの逆三角形の体型の原因は、この広背筋の発達にあります。広い背中を作り逆三角形のカラダになりたい人は、背筋の中でもこの広背筋を中心にトレーニングするとよいでしょう。
③脊柱起立筋の働き
脊柱起立筋とは、腸肋筋・最長筋・棘筋からなる筋肉で、首から腰にかけて背骨の両側を走行している筋肉です。人間が直立にできるのも、この脊柱起立筋が背骨を支える働きがあるからです。
また、中腰で物をもっても腰がぐにゃっと曲がらずにいられるのは、脊柱起立筋がカラダを安定させるために力を発揮しているからです。
その他、うつぶせの姿勢で腰を反るなどの動作のときに、脊柱起立筋が使われています。
④肩甲骨周りの筋群
肩甲骨周りには棘下筋・大円筋・小円筋・肩甲下筋・菱形筋などの小さな筋肉がたくさんあります。
肩甲骨は腕の骨と繋がって肩関節を構成しています。肩関節は、球関節と呼ばれる様々な方向に動く可動域の最も広い関節の一つです。関節の複雑な動きを可能にするために多くの筋肉がついているのです。
これらの筋肉は関節のすぐ近くにあることが多く、深層部についているためインナーマッスルと呼ばれます。プロ野球選手などのアスリートが、肩のインナーマッスルを鍛えるということを聞いたことがあるかもしれませんが、それがこの肩甲骨周りにある筋肉のことなのです。
背中の筋トレメニュー14種類[基本編]
基本的なトレーニングを始め、簡単にできるものも紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてください。
背筋の鍛える部位や方法によって様々な鍛え方があります。背筋のどこに効くのかも確認していきましょう。
■①チンニング
背筋を鍛える王道のトレーニングがチンニング(懸垂)です。主に広背筋を鍛えます。
屋外であれば公園などの鉄棒を活用することができます。
自宅や屋内で行う場合は専門のチンニングバーが必要ですが、ぜひともチャレンジしたい種目です。チンニングはグリップ(バーの握り方)により刺激される部分が変わってきます。
ここでは最も基本的な方法を紹介します。
<トレーニング方法>
1. 鉄棒やチンニングバーを肩幅よりも拳2-3つ分広めにして握ります。この時、バーを上から(順手で)握るようにしましょう。
2. 足を地面から浮かせ、肘をしっかり伸ばしてカラダを保持します。脚はまっすぐ伸ばしたままでも、膝を曲げて両足を組んでもどちらでも構いません。やりやすい方法で行いましょう。
3. 肘を脇腹にひきつけるように意識して肘を曲げ、カラダを持ち上げます。
4. 限界まで上げたら、ゆっくりと肘を伸ばし元の姿勢に戻ります。この時、肘はしっかり伸ばすようにしましょう。
5. この動作を繰り返し行います。
チンニングは強度の高い種目です。1セット当たりの回数は体力に合わせて行いましょう。
3セット行います。
■②ななめ懸垂
チンニングができない人は、強度の低いななめ懸垂を行いましょう。
チンニングと同じく広背筋を主に鍛えますが、足が地面についているため強度がかなり低くなります。体力のない人や女性にオススメです。
<トレーニング方法>
1. 鉄棒やチンニングバーを肩幅よりも拳2-3つ分広めにして握ります。この時、バーを上から(順手で)握るようにしましょう。
2. 足は地面につけたまま肘をしっかり伸ばし、ぶら下がるようにカラダを斜めにしましょう。
3. 肘を脇腹にひきつけるように意識して肘を曲げていきます。
4. 限界まで上げたら、ゆっくりと肘を伸ばし元の姿勢に戻ります。この時、肘はしっかり伸ばすようにしましょう。
5. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
地面とカラダの角度が鋭角(地面と平行)になるほど強度が高まります。体力に合わせて調整しましょう。
■③ベントオーバーロウ
バーベルやダンベルを使って行うベントオーバーロウも、広背筋を鍛える代表的な方法です。動作に慣れていないと姿勢を保つのが難しい種目でもあります。重りを持つことを意識するよりも、正しいフォームで行うように心がけてください。
<トレーニング方法>
1. 肩幅くらいに足を広げ軽く膝を曲げて立ちます。上体を前に倒し、胸をしっかり張ります。両手に重りを持ちましょう。
2. 肩甲骨を寄せるように意識しながら、脇腹の方へ重りをひきつけるように肘を曲げていきます。この時、上体を動かさないように意識しましょう。
3. 上げれるところまで上げたら、ゆっくりと肘を伸ばして元の姿勢に戻ります。
4. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
動作中、背中が丸くなると腰への負担が大きくなり痛みが出てしまう可能性があります。
しっかり胸を張って腰を曲げないようにしながら行いましょう。
■④ワンハンドロウ
ベントオーバーロウの動作を片腕ずつ行う方法がワンハンドロウです。ワンハンドロウは片手をイスなどにおいてカラダを支えるため、ベントオーバーロウに比べ動作中の姿勢の維持が楽です。重い負荷が使える・片側ずつ意識しやすい・腰への負担を軽減できるなどのメリットがあります。
<トレーニング方法>
1. イスに片手・片膝のせ上体を前に倒します。この時しっかり背筋を伸ばし、胸を張るようにしましょう。
2. もう片方の手で重りを持ち、腕をだらんと下しておきます。
3. 脇腹の方に重りをひきつけるよう肘を曲げていきます。
4. ゆっくりと肘を伸ばし下していきます。
5. この動作を繰り返し行います。反対側も同様に行います。
10回×3セットずつ行います。
腕の力で引っ張りやすいワンハンドロウですが、肘を
■⑤ベントオーバーリアレイズ
ベントオーバーロウの姿勢から、重りの動かす方向を変えた種目です。
主に僧帽筋や肩甲骨周りの筋肉に刺激が入ります。
あまり重い負荷は扱えない種目です。ベントオーバーロウよりも軽めの負荷で行いましょう。
<トレーニング方法>
1. 肩幅くらいに足を広げ、軽く膝を曲げて立ちます。
2. 上体を前に倒し、胸をしっかり張ります。両手に重りを持ちましょう。
3. 肩甲骨を寄せるように意識しながら、両手を真横に広げるように重りを持ち上げていきます。この時、上体を動かさないように意識しましょう。
4. 上げれるところまで上げたら、ゆっくりと腕を下ろしていき元の姿勢に戻ります。
5. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
ベントオーバーロウと同様に、動作中、背中が丸くならないようにしっかり胸を張って行いましょう。
■⑥アイソメトリクスシーテッドロウ
タオルを使って簡単に広背筋を鍛えることができる種目です。
筋力があるないに関わらず安全に行うことができます。初心者にオススメです。
<トレーニング方法>
1. 体育座りの姿勢になります。一本のタオルを足の裏にひっかけて両手で持ちます。
2. 肘を曲げ、脇腹にひきつけるようにタオルを引っ張るように力を入れましょう。
3. 10秒間引っ張るように力を入れたままキープします。
3セット行いましょう。
動きがない種目は、自分の意識次第で負荷が大きく変わります。全力で引っ張れば負荷が高くなりますし、力を抜いて行えば軽くなります。効果を高めるにはできるだけ全力で行う必要がありますが、その際に呼吸が止まらないように注意しましょう。
■⑦デッドリフト
数ある筋トレのなかでもBIG3と呼ばれるものの一つがデッドリフトです。僧帽筋・広背筋・脊柱起立筋の全てに刺激を与え、背筋全体を鍛える代表的なトレーニングです。
<トレーニング方法>
1. 肩幅程度に足を開いて立ちます。
2. 股関節と膝を曲げしゃがんだ姿勢になり、両手に重りを持ちます。この時、上体はしっかり起こし、胸を張って背筋を伸ばした姿勢を保ちましょう。
3. 重りをカラダの前面(スネや太もも)に添わせながら立ち上がります。
4. 立ちあがったらゆっくりと重りを下していき、しゃがんだ姿勢に戻ります。この時もカラダの前面を添わせながら下していきましょう。
5. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
動作中、背中が丸くなると腰への負担が大きくなり痛みが出てしまう可能性があります。
しっかり胸を張って腰を曲げないようにしながら行いましょう。
■⑧ルーマニアンデッドリフト
膝の曲げ伸ばしを行わずにデッドリフトの動作を行う種目です。
主に脊柱起立筋に刺激が入ります。
<トレーニング方法>
1. 腰幅程度に足を開いて立ちます。
2. 両手に重りを持ち、軽く膝を曲げた姿勢になります。この時、上体はしっかり起こし、胸を張って背筋を伸ばした姿勢を保ちましょう。
3. 重りをカラダの前面に添わせながら股関節を曲げていき、上体を倒していきます。この時、膝を曲げ伸ばしせずに、お尻を後ろに突き出すようなイメージで行います。
4. 下ろせるところまで下ろしたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。この時もカラダの前面を添わせながら起き上がっていくように意識しましょう。
5. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
デッドリフト同様、動作中に背中が丸くならないように注意してください。
また、膝をまっすぐにして固定してしまうと腰を痛める可能性があります。軽く曲げた状態で動かさないように意識して行いましょう。
■⑨シュラッグ
僧帽筋を鍛えるもっとも代表的なトレーニングです。
シュラッグは肩こりの改善にも効果的です。
<トレーニング方法>
1. 肩幅くらいに足を開いて立ちます。両手にダンベルなどの重りを持ちましょう。
2. 肘をまっすぐにして腕をだらんと下したまま、肩を耳に近づけるようにすくめていきます。
3. いけるところまで持ち上げたら、ゆっくり元の姿勢に戻していきます。
4. この動作を繰り返し行います。
20回×3セット行います。
僧帽筋はとても強い筋肉です。多少の重さでは楽に行えてしまいますので、その場合は負荷を増やすか、動作スピードをゆっくりにして僧帽筋をしっかり意識しながら行うようにしましょう。
■⑩アップライトロウ
肩の筋肉「三角筋」を鍛える代表的なトレーニングですが、僧帽筋にも刺激が入ります。
<トレーニング方法>
1. 肩幅くらいに足を開いて立ちます。両手にダンベルなどの重りを持ちましょう。
2. 肘を肩の高さよりも高く上げるように曲げていきます。重りを持った手がアゴの下にくるようにしましょう。
3. いけるところまで持ち上げたら、ゆっくり元の姿勢に戻していきます。
4. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
肘を高く持ち上げた際に、肩をすくめるような動作を行うことで僧帽筋が鍛えられます。
しっかり僧帽筋を意識しながら行いましょう。
■⑪バックエクステンション
脊柱起立筋を主に鍛えます。バックエクステンションは上体反らしのように、うつ伏せから腰をそらせて上体を持ち上げる方法です。
<トレーニング方法>
1. うつぶせで寝て、両手を腰の上で組みます。
2. 上体を床から浮かせます。
3. 上げれるところまで上げたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
4. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
勢いよく行うと腰を痛める原因にもなりますので、十分注意しましょう。
足をどこかにひっかけて固定したり、誰かに足を支えてもらうとより強度が増します。
■⑫ダイアゴナルバックエクステンション
脊柱起立筋を主に鍛えます。バックエクステンションよりも腰に負担の少ない対角線上の腕と脚を上げる方法を紹介します。
<トレーニング方法>
1. 両手両脚をまっすぐ伸ばして、うつぶせで寝ます。
2. 対角線上の腕と脚を床から浮かせます。この時しっかり肘と膝を伸ばしたままにしておきましょう。
3. 上げれるところまで上げたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
4. 反対側も同様に交互に行います。
10回ずつ×3セット行います。
勢いよく行うと腰を痛める原因にもなりますので十分注意しましょう。動作中に腰が痛む人は無理に行わず、違うエクササイズに変更しましょう。
■⑬アイソメトリクスタオルロウ
タオルを使って行える簡単なエクササイズです。主に広背筋を鍛えます。
負荷が低いので初心者でも簡単に行う事かできます。
<トレーニング方法>
1. 両手を頭上に挙げ、両手でタオルの両端を持ちます。
2. 腕を外側に引っ張るようにお互い引き合います。
3. 力を入れたまま10秒間キープします。
3セット行います。
全力で行うとハードなエクササイズになります。
力を入れている時は呼吸を止めやすくなりますが、呼吸は止めないようカウントを声に出すなど、自然と呼吸するようにしましょう。
■⑭ダンベルプルオーバー
少し難しい種目ですが、広背筋を鍛えるのに効果的です。
<トレーニング方法>
1. イスの座る部分に背中を乗せるように仰向けになります。ベットの端から両腕だけ出す姿勢でも良いでしょう。
2. 腕を天井方向に伸ばし、重りを持ちます。
3. 肘をまっすぐにしたまま、重りを持った腕を頭の方へ下ろしていきます。
4. 下ろせるところまでいったら、ゆっくり元の姿勢に戻ります。
5. この動作を繰り返し行います。
10回×3セット行います。
動作中、腕が痛くなる場合は軽く肘を曲げた状態のまま腕を動かすようにしましょう。大きく動かした方が効果は高くなりますので、腕を動かす動作に支障がないよう、自分の体勢を整えておきましょう。
背中の筋トレメニュー2種類[肩甲骨周辺の小さな筋群]
ここからは大きな筋肉ではなく、インナーマッスルを鍛える方法を紹介いたします。
インナーマッスルは小さく筋力が弱いため、重い負荷は使えません。重い負荷を使ってしまうと目的とした部分以外の筋肉に刺激が逃げてしまいます。軽い負荷でいいので、正確な動作を心がけましょう。
■⑮エクスターナルローテーション
肩関節を外旋(外側に捻る)させる棘下筋、小円筋を鍛えるエクササイズです。
<トレーニング方法>
1. トレーニングバントの片方を柱などに肘の高さで結びつけ、結び目の横に立ちます。遠い方の手でバンドのもう一方を握ります。
2. 肘を脇腹に固定して、肩と前腕が垂直になるように構えます。
3. 肘を動かさないようにバンドをカラダの外側へ引いてきます。
4. いけるところまで引っ張ったら、ゆっくり元の姿勢に戻していきます。
5. この動作を繰り返し行います。反対側も同様に行いましょう。
20回ずつ×3セット行います。
トレーニングバンドを使って行うことが多いですが、もしなければ同じ姿勢でうちわやペットボトルに少しだけ水を入れたものを持って行うと、同じ筋肉に刺激を与えることができます。その場合は外側に振るときに勢いをつけるようにしましょう。
■⑯インターナルローテーション
肩関節を内旋(内側に捻る)させる大円筋、肩甲下筋を鍛えるエクササイズです。
<トレーニング方法>
1. トレーニングバントの片方を柱などに肘の高さで結びつけ、結び目の横に立ちます。
近い方の手でバンドのもう一方を握ります。
2. 肘を脇腹に固定して、肩と前腕が垂直になるように構えます。
3. 肘を動かさないようにバンドをカラダの内側へ引いてきます。
4. いけるところまで引っ張ったら、ゆっくり元の姿勢に戻していきます。
5. この動作を繰り返し行います。反対側も同様に行いましょう。
20回ずつ×3セット行います。
エクスターナルローテーションと同じく、うちわやペットボトルでも行えます。その場合は内側に振るときに勢いをつけるようにしましょう。
背中の筋トレメニュー3種類[その他]
トレーニングと関係なさそうなものでも、実はしっかり背中のトレーニングになるものがあります。
ちょっと変わり種のエクササイズを紹介します。
■⑰登り棒・綱
公園や小学校にある登り棒・登り綱も立派な背中のトレーニングになります。
テレビで見た方もいるかもしれませんが、男子柔道日本代表選手や女子レスリング日本代表選手など綱に上るトレーニングを行っているアスリートは沢山います。
強度が高いので、まずは足を使いながら登るところから始めて、楽にできるようになったら足を使わず腕の力だけで登るようにしてみてください。
■⑱うんてい
公園によくある遊具の一つであるうんていも、背中の筋肉を鍛えることができます。ぶら下がっているカラダを支えるのは広背筋です。
子どもの頃のように、うんていにぶら下がりながら前に進んでみましょう。この時しっかりと肘を伸ばしたまま行いましょう。昔より体重が重いでしょうから負荷が高くなり、とてもきつく感じると思いますが良いトレーニングになります。
■⑲電車・バスのつり革で
電車やバスに乗っている時でもこっそり背筋のトレーニングができます。つり革を片手でつかみ、つり革を下に引っ張るように力を入れます。力を入れたまま10秒間キープしましょう。広背筋に刺激が入ります。
また、揺れによってバランスを崩したカラダをつり革で支えるのも、背中の筋肉が使われます。移動時間を有効に活用して背筋を鍛えましょう。
背筋を鍛えて得られるメリット3つ
■1. 姿勢が整えられる
背中の筋肉は“抗重力筋”と呼ばれる人間が立っている姿勢を保持する上で重力に対抗して力を発揮している筋肉です。抗重力筋が衰えることが、姿勢が悪くなってしまう原因の一つです。
悪い姿勢として代表的なのが猫背ですが、猫背は脊柱起立筋や僧帽筋の筋力低下などで起こる場合があります。頭や腕が重さによって重心がだんだんカラダの前面の方に移動していくのですが、その重さに筋肉が耐えられなくなり背中が丸くなってしまうのです。背筋の筋力を高めることで良い姿勢を維持しやすくなります。
また背中のトレーニングをすることで、カラダの前面の筋肉、特に胸の筋肉の柔軟性を高めたり筋緊張を和らげます。胸の筋肉の柔軟性低下は、肩が内側に入ってきてしまい猫背になる原因の一つです。背筋をトレーニングするとそれらの良い効果によって姿勢が整えられるのです。
■2. 肩こり改善
肩こりの原因は、僧帽筋の筋緊張が強くなっている場合が多いです。そもそも腕は肩にぶら下がっている状態で、その重さを常に僧帽筋が支えているのです。腕の重さは片腕で3〜4kg、両腕で6〜8kgほどあるといわれています。想像以上に重いと思いませんか?
また、パソコンなどで首が前に傾いている姿勢は、僧帽筋が常に引っ張られた状態で頭を支えるように力を入れていることになるため緊張が強まります。
僧帽筋の筋力が低下することによって筋肉が疲労しやすくなり緊張しやすくなります。筋力を高めることで筋肉の疲労を和らげることができ、肩こりが改善します。
また、背中のトレーニングで肩甲骨を動かすことで肩甲骨の動きが良くなります。肩甲骨の動きが良くなることも肩こり改善に繋がります。
■3. 腰痛改善
腰痛の多くは、関節や骨ではなく筋・筋膜性腰痛と言われる筋肉の緊張が原因で起こります。特に脊柱起立筋の緊張が強まると、腰に痛みを感じます。
重い荷物を繰り返し持ち上げるなどの動作時はもちろん、長時間座っていることによるストレスによっても筋肉は緊張していきます。これらのストレスが蓄積し、強い張りを感じたり痛み・だるさを引き起こすのです。
また、ぎっくり腰のような急性腰痛も、腰の筋力が低下していたり、運動不足により普段背筋を使っていなかった時に、急に強い負荷がかかった場合に起こりやすいです。
背筋を鍛えることで背骨(腰椎)にかかる負担を減らし、ケガを予防したり痛みを出にくくします。
背筋のトレーニングを行う頻度や回数
基本的には10回3セットで限界になるような重量設定が望ましいです。
今回紹介した種目の中から、3種目程度選んで行うとよいでしょう。
トレーニング頻度は負荷の大きさによって変化させましょう。例えば、スポーツクラブなどで重い重量を使える場合(バーベルやダンベルなどの専門的な用具がある場合)は、多くても週に2回で良いでしょう。自宅など、軽い負荷しかない場合は、1日おきのトレーニングでプランニングしてみましょう。
背中の厚みと背中の広さをつくるエクササイズは異なる?
ボディラインを整え、見た目を良くするために背中のエクササイズを行う場合、“背中の厚み”と“背中の広さ”のどちらを目的にしているかによって選択するエクササイズが異なります。
背中の厚みを求める場合、鍛えたい筋肉は僧帽筋と脊柱起立筋です。
エクササイズは前から引っ張るような動作、ベントオーバーロウやデッドリフトなどです。
背中の広さを求める場合、鍛えたい筋肉は広背筋です。
エクササイズは上から引っ張るような動作、チンニングやななめ懸垂などです。
ご自身の目的にあったエクササイズを選ぶと効率が良いでしょう。
背筋のトレーニングで大切な3つのこと
具体的な背筋の鍛え方を紹介してきました。トレーニングするときにはこれから説明する3つの大切なことを意識して下さい。
■①背筋を意識して行うことでより鍛えられる!
背筋をトレーニングするには、そのトレーニングがどの筋肉をターゲットにしているかを知る必要があります。背筋全体を鍛えるものもありますし、個別の筋肉を鍛える種目もあります。
筋トレは、目的としている筋肉を”意識して”動かすことにより効果が高まります。ただ動作を行うだけでなく、しっかり使っている筋肉を意識するようにしましょう。
■②慣れてきたら負荷はどんどん増やしていこう!
背筋は大きい筋肉で、普段から重力に対抗して力を発揮しているため力が強い筋肉が多いです。効果的に筋力を高めるためには、重い負荷を使って行わなければいけません。
初めはフォームが難かしかったり、使っている筋肉を意識しにくかったりするため、軽い重さから始めてもよいですが、ある程度慣れてきたらだんだん重さを増やし負荷を高めるようにしましょう。
■③効果的に行うために、色々な用具を活用しよう
ダンベルやバーベル、ベンチ台など専門器具があれば、その分トレーニングがはかどります。でも自宅で専門器具を持っている人なんて少ないですよね。多くの方は、わざわざ買うのも…と思うことでしょう。
であれば、まず初めは家にあるものを活用してみましょう。ペットボトルや本を積み重ねてエコバッグなどに入れてダンベル代わりにすると良いでしょう。
もっと本格的に行いたいという場合は、トレーニングバンド(チューブ)やダンベル(付け替え式)などを購入してみてはいかがでしょうか。効果が高まること間違いなしです。
まとめ
いかがでしたか?背中には様々な筋肉が複雑についていて、それぞれがサポートしながら重いものを持ったり、カラダを支えたり、複雑な動作が行えるのです。
背中を鍛えることはトレーニング経験者でも難しいとされています。意識して行うことで必ず効果が上がってきますので、動かしている筋肉をしっかりイメージしながらトレーニングに励んでください。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。