インナーマッスルを鍛えるのが大切! とよく聞きますが、そもそもインナーマッスルとはどんな筋肉で、鍛えることによっていかなるメリットがあるのでしょうか?
知っていそうで知らなかったインナーマッスルの基礎知識とトレーニング方法をご紹介しましょう。
インナーマッスルとは
コートやジャケットのことを「アウター」。中に着るニットやシャツのことを「インナー」と呼ぶように、筋肉にもアウターとインナーがあります。
いわゆる「力こぶ」の正体である「上腕二頭筋」や、割れた腹筋を作っている「腹直筋」は身体の表面近くにあるため、「アウターマッスル」と呼ばれます。比較的大きな筋肉が多く、鍛えることでさらに大きくなり(「筋肥大」と呼びます)、強い力を発揮できるのが特徴です。
一方、インナーマッスルとはまさに身体の内側、外からは位置がつかめない場所にあります。骨に張りついているような小さな筋肉が多く、ひとつひとつの発揮できる力はさほど大きくありません。しかし、アウターマッスルを補助してより細かな動きを行ったり、身体のバランスを保つ働きをしているのです。
アウターマッスルはクレーンのように重いモノを運ぶ役割を担い、インナーマッスルはロボットアームのようにより繊細な動きをつかさどっている、と考えれば分かりやすいのではないでしょうか。
再び服装の話に戻りましょう。コートの下にインナーを着ないで素っ裸でいたら、ちょっとアブナイ人に思われてしまうかもしれません。大胆なファッションかもしれませんが、少なくともコーディネートされているとは言えないですよね。
筋肉もまさに同じ。アウターマッスルとインナーマッスルがコーディネート(調和)して機能することで、スポーツにおけるアクションはもちろん、日常動作もよりなめらかに力強くなるのです。アウターマッスルを鍛えて見映えのする肉体を作り上げることは素晴らしいですが、同時にインナーマッスルも鍛練して、美しくなめらかな動きを身につけたいものですね。
■インナーマッスルの定義は決まっていない?!
実は研究者やトレーナーによってインナーマッスルにはさまざまな定義があります。と言うのも、どこまでが「表側の筋肉」でどこまでな「内側の筋肉」かを線引きするのはとても難しいため。筋肉のつながり方や重なり方は複雑なので、「皮膚から◯cm以下がインナーマッスル」と簡単に定義できないのです。
インナーマッスル=体幹と考えている方も少なくありませんが、骨に近い位置にあり細かな動きをつかさどるという意味では胴体以外にもインナーマッスルはあります。例えば手首を親指側へ立ち上げるための「腕橈骨筋」、足を外側に開くために使われるお尻の「中臀筋」「小臀筋」もインナーマッスルとしてとらえることができるのです。
インナーマッスルを鍛えて得られる効果
インナーマッスルは、アウターマッスルを補助し、細かな動きをつかさどる筋肉だとご紹介しました。
たとえば皆さんがサッカーをする時、ボールを強く大きく蹴るために必要になってくるのがアウターマッスルです。蹴り足の角度を微妙に変えたり、キックをコントロールするのは主にインナーマッスルの役割。
極端な話、アウターマッスルしか鍛えていなかったら、味方のはるか先へ大砲のようにボールを蹴りだすだけのイマイチな選手になってしまうでしょう。強く、正確なパスを送れるからこそ上手いサッカー選手と呼ばれるのです。
野球やバレーボール、水泳といった競技では、腕を頭より高く上げる動作を多用します。この動きを繰り返し激しく行うことで、腕のつけ根にある骨と肩の骨がぶつかりあって炎症をおこす「ぶつかり症候群」になりやすくなってしまいます。
この時、骨と骨の間でクッションの役割を果たしてくれるのが「肩甲下筋(けんこうかきん)」「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょくかきん)」「小円筋(しょうえんきん)」といった肩にあるインナーマッスルなのです。肩のインナーマッスル強化に力を入れている選手は、ぶつかり症候群も起こりにくいと言われています。
インナーマッスルを鍛えるメリットは日常生活にも及びます。歩く、座る、立ちがる、モノを取るといった動作のひとつひとつが美しく繊細になりますから、周囲の目にはひときわ洗練された人物に映ることでしょう。インナーマッスルにはバランス維持の役割もありますから、長時間同じ姿勢でいても疲れにくくなるのです。インナーマッスルの弱体化によって起こりやすくなる腰痛や四十肩の予防にもつながりますよ。
簡単にインナーマッスルを鍛える10の方法
すべてのトレーニングに共通することですが、アウターマッスルのように「自分の限界と感じるところ(オールアウト)」まで追い込む必要はありません。インナーマッスルは小さく意識しにくいので、追い込むこと自体が難しいからです。かといって少なすぎてもトレーニングになりません。目的とする部位のあたりが温かく感じたり、軽い疲労感を覚えるあたりがめやすです。
■1. 腹式呼吸・あおむけバージョン
最も簡単かつ、腹部のインナーマッスルを意識しやすい方法です。膝を立ててあおむけになり、吐く時にお腹をへこませる、吸う時に戻す、を繰り返してみましょう。ゆっくり行い、吐ききったところで一度息を止めるのがポイントです。
■2. 腹式呼吸・四つんばいバージョン
息を吐く時に短く「フッ!」と強く行います。この時、腹筋だけでなく同時に骨盤底のインナーマッスルを鍛えるため、お尻も引き締めてみましょう。男性なら肛門がキュッと締まる感覚、女性は膣を締めて内臓を上に持ち上げるイメージで。中高年の男性はこの動きを繰り返すことで尿もれ予防を期待できます。
■3. ドローイン
「1」で紹介したお腹をへこませる、戻す動きを、呼吸を意識せずに行うのがドローインです。吸う方は特に意識しなくてもかまいませんが、吐く時(お腹をへこませる)時は「フッ!」と強く吐くようにしましょう。
へこませたら腹筋を強く固めます。この、お腹を強く引っ込ませた状態は腹筋系トレーニングの基本姿勢になるので、ぜひ身につけておきましょう
ドローインはあおむけの状態だけでなく、立っても座っても、歩きながらできます。通勤途中にさりげなく「フッ!」とインナーマッスルを鍛えることができるのです。
■4. プランク
回数ではなく時間で行うため、調節しやすいトレーニング法です。うつぶせになり、肘から下とつま先の3点で身体を浮かせます。腹筋、背筋、臀部など複数の部位を同時に鍛えられるのがメリット。ただし、腰が浮きすぎたり沈み過ぎたりすると効果半減なので、肩から足首までが一直線になっているか、第三者にチェックしてもらうとよいでしょう。ゴルフクラブなど長いものを身体にあてて、上下のブレがないように確かめます。
■5. クランチ(フロントクランチ)
いわゆる腹筋運動です。あおむけになり、両膝を90度に曲げて立て、息を吐きながら上体を起こします。両手は前に伸ばし、指の先が膝に触れるくらいまで起こしましょう。息を吐きながら元の状態に戻します。
完全にあおむけに戻らず少し浮かせた状態にとどめ、次の動作に移ることで、しっかり体幹に効かせます。
■6. バイシクルクランチ
負荷を下げた女性向けのクランチです。
あおむけで手は頭の後ろで組みます。右膝(左膝)を上げながら上体を起こし、左肘(右肘)につけます。身体を戻し、左膝(右膝)を上げながら上体を起こして、右肘(左肘)とくっつけます。多少反動をつけ自転車をこぐようにリズミカルに行いましょう。
■7. レッグレイズ
いわゆる足上げ腹筋です。両足を閉じてあおむけになり、息を吐きながらゆっくり足を上げます。膝を曲げないように足の裏が真上を向くまで足を上げきったら1~2秒静止。息を吸いながら足を戻しましょう。フロントクランチ同様、床すれすれのところで止めて次の動作に入ります。
■8. バックレイズ
背中側のインナーマッスルを攻めるレッグレイズです。
うつぶせになり両肘を曲げて、太ももが床から離れるくらいに身体を浮かせます。次に息を吐きながら片足を持ち上げます。できるところまでで1~2秒静止し、息を吐きながら戻していきます。
■9. プランクジャック
静止や上下動だけの体幹トレーニングの中で、瞬間的な動きを加えた楽しいメニューです。
プランクを行っている最中に、両足を素早く開いて閉じるだけ。足が空中を移動する間、より強く体幹を刺激できます。限界まで強度を上げる必要はないので、開く幅は自分のできる範囲でかまいません。
■10. ニートゥエルボー
インナーマッスルの筋トレはプランクのように動きの少ないものが中心。地味なので苦痛に感じてしまう方も少なくないようです。その点、ダイナミックな動きのニートゥエルボーは人気の高いメニューです。
まず四つんばいの姿勢から膝も浮かせましょう。安定するよう足は肩幅以上に広げます。
次に右腕と左足、または左手と右足の組み合わせで片方ずつ手足を浮かせます。この姿勢をキープできたら、浮かせた方の手足を曲げて腹側へ引きつけていきます。膝と肘をくっつけていくのでニートゥエルボーなのです。片手、片足だけに体重がかかり、かつバランス感覚も要求される高難度のメニューです。
男性と女性で鍛え方に違いはある?
一般的に女性より男性の方が力持ちとされていますが、実は筋肉の発揮できるパワーに男女差はありません。同じ量の筋肉があれば、女性でも男性と同じ力を発揮できるのです。
しかし、基本的な人体の性質として女性は、各筋肉の太さが細くでき上がっています。そのため女性が毎日、腕立てや腹筋を行ったとしても、丸太のような二の腕や割れた腹筋にはなりにくいのです。ダイエットのために筋トレする時、女性の方はよく「筋肉がつきすぎてしまったらどうしよう」と悩み、結局挫折してしまいます。大丈夫、ダイエット向けの筋トレくらいでそう簡単にムキムキにはなりませんから、安心して理想の体形を目指してください。
男女の筋肉で最も違いが生じるのは骨盤周辺です。子宮、膣といった女性だけの臓器がありますし、出産しやすいよう骨盤が広く柔らかくできています。足と上半身をつなぐ二本の「腸腰筋」という筋肉は、産道を狭めないよう細くでき上がっているのです。
骨盤は底の抜けた筒のような構造になっており、底の部分は筋肉でできています。女性の骨盤は男性よりも広がった構造になっているため、骨盤底の筋肉が少し弱くなるだけで、ゆるみも大きくなってしまいがち。すると子宮、膣だけでなく腸などの内臓もずり下がってしまうので、生理痛や便秘、下痢、尿もれといった症状を招くこともあります。女性はより骨盤周辺のインナーマッスルを鍛えるように心がけるとよいでしょう。
インナーマッスルを鍛えて腹筋を割るためには?
腹筋と呼ばれる筋肉群の中で最も深い位置にあるのは、「腹横筋」。コルセットのように腹部全体を覆うような形状をしています。腹横筋を鍛えると、腹圧が高まって、内臓や背骨をしっかり支えることができます。まさに筋肉のコルセットなのです。
一方、「割れた腹筋」を形作っているのは、腹横筋の外側にある「腹直筋」というアウターマッスル。太ももを上げた時の姿勢維持や、身体を前に起こす動作に役立っている筋肉です。クランチやレッグレイズといったメニューはインナーマッスルだけでなく、腹直筋のトレーニングにもなります。
こうしたメニューをこなす一方、有酸素運動で体脂肪を落とすことで、初めて割れた腹筋が浮き上がってくるのです。
まとめ
インナーマッスルは身体の内側にある筋肉。そのため筋トレを行う時、なかなか意識しにくいのが悩みです。また、それぞれの部位が小さいので、いくら鍛えてもなかなか「強くなった」「大きくなった」という実感を得ることができません。
筋肥大の様子と筋力アップがとらえにくいため、インナーマッスル強化に最適な筋トレ回数、ペースにも明確な指標がありません。アウターマッスルには「自分が限界と感じる15回を2~3セット」というめやすが存在しますが、インナーマッスルの場合「20~30回を2~3セット」「1セット40回を超えた頃から初めてインナーマッスルを意識しやすくなる」など諸説あります。
激しく追い込まない分、筋肉痛も起こりにくいのが特徴。そのため2~3日の休養期間が必要となるアウターマッスルのトレーニングに比べ、短いスパンで行うことができます。個人差はありますが1日おきくらいがよいでしょう。
メニューが地味、鍛えた成果を感じにくい、そもそも何回やればよいのかよく分からないといった事情により、インナーマッスルの筋トレは挫折することがとても多いのです。しかし、裏方的な役目をになうインナーマッスルの強化は、スポーツでも日常生活でもとても大切。ぜひチャレンジ、継続してみてください。
メニューが地味ということは、さりげない動きでもトレーニングになるということ。バランスボールに座っているだけでもインナーマッスルのトレーニングになるので、日々の生活に取り入れやすいとも言えるのです。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。