キレイに割れた腹筋を目指すには、毎日ハードなトレーニングが必要なの? それとも休みながらの方が効率的?
そんな素朴な疑問から、筋トレに必要な時間、メニュー、トータルな身体のバランスや食生活など見落としがちなポイントまで、腹筋トレーニングの情報を盛り込んでみました。
割れた腹筋と引き締まった全身を、ぜひ実現してください。
腹筋は毎日が効果的?正しいトレーニングの方法
腹筋をはじめ、筋力トレーニングで必ず議論となるのは「毎日続ける」のがよいのか、「1~2日の休息をはさみながら続ける」のがよいのかという問題。意見が分かれる原因となっているのは「超回復」という筋肉の仕組みについて見解の相違があるからです。
知っている方も多いかと思いますが、まず超回復について簡単におさらいしてみましょう。
自分の限界に近いハードな筋トレを行うと、筋肉の組織を作る筋繊維は破壊されます。破壊といっても断裂や出血といった大きなダメージではなく、微細な傷が生じる程度だと考えてください。
傷んだ筋繊維は48~72時間の間に再生します。時間に幅があるのは個人差、部位、栄養摂取の状況などによって変わってくるからです。再生の際、先に与えられた強い負荷に対抗すべく筋繊維はより大きく、強くなろうとします。単なる回復にとどまらず、より大きくなることから超回復と呼ばれるのです。
超回復のメカニズムは完全に解明されたわけではないため、アスレティックトレーナーら専門家の間でも意見が分かれていますし、世間には様々な誤解も存在しています。
一番の誤解は超回復の間に筋肉を休ませるべきかということ。
■毎日続ければ筋肉が強くなるというのは誤解?
「筋トレを毎日続ければ筋肉はどんどん強くなる」という考え方は誤解です。
高強度のトレーニングを毎日継続していると、傷つけられた筋肉が回復する時間がなくなってしまいます。そのため筋繊維の損傷がどんどん進み、トレーニング開始前より筋肉が細ってしまうことになるのです。
常識とされる事柄に対して、あえて真逆の意見を唱えることで注目を浴びたいと考える人は一定数います。超回復の理論に対して反発し、アクセス数稼ぎのために「毎日トレーニング!」を訴えているサイトもあるので注意が必要です。
■超回復の間は何かするべき?
「超回復の行われる48~72時間の間は何もしない」も誤解です。傷んだ細胞が再生するには栄養素が不可欠。その栄養素は血液によって運ばれます。何もしない…極端な例えですがゴロゴロ寝ているだけの生活を続けていた場合、血液の循環が最小限しか行われないため、再生のペースが遅くなってしまいます。毎日ハードな筋トレをする必要はありませんが、血行促進のため毎日身体を動かすことは大切なのです。
筋肉は働かせていないと徐々に弱ってしまいます。「超回復に72時間必要だから、腹筋をしたら丸3日間お休みしよう」と考えたとします。もし、超回復が48時間が終了していたとしたら、残り24時間、筋肉をまったく動かさない状態が続いてしまうわけです。
せっかく超回復で少し筋力アップしても、24時間働かせなかったことで筋力はまた少し衰えてしまいます。これでは筋トレの意味がありませんね。せっかくの超回復を無駄にしないためにも、コンスタントに身体を動かすことは必要なのです。
■筋肉を休ませれば超回復できる?
最後の誤解は「筋肉を休ませれば超回復できる」という考え。
成長のホルモンの分泌が活発になる22時から深夜2時までの、いわゆる「ゴールデンタイム」にしっかり睡眠をとることはもちろん大切です。
睡眠、休息と並んで大切なのは栄養補給。筋繊維が回復するために必要な各種アミノ酸や良質なタンパク質をきちんと補っておきましょう。ジャンクフードばかりの食生活では筋肉も大きくなれません。
腹筋を割るための筋トレ最短の方法8選
■1. シットアップ
腹筋トレーニングの王道として、まずシットアップをご紹介します。足を固定して上体を持ち上げる、いわゆる腹筋運動です。
次で触れる「クランチ」でもほぼ同じ効果を得られるのですが、腹直筋だけでなく、上半身と下半身をつなぐ腸腰筋も同時に鍛え、全体のバランスを整えるという意味でシットアップを加えました。
膝を軽く曲げた状態で、上半身を起こしていきます。腰が床から離れるまで、しっかり上体を丸めます。ジムのシットアップベンチが使えない場合は、テーブルの足を挟むなどして足首を床に固定してください。
反動を使わず、ゆっくり上げ下げするようにしましょう。腕は力を抜き、腹筋を固めるように力を入れます。
■2. クランチ
シットアップとよく似ていますが、腰が床から離れない点に違いがあります。クランチの方が腹直筋への刺激に特化しているのも特徴です。
膝を90度に曲げ、足を上げて壁やイスなどに当てます。上体を20~30度ほど浅く上げ下げします。戻す時は背中を床につけず、ギリギリのところで浮かせ次の動作に移ります。床につけると腹筋の緊張が解けるので効果が上がりません。
シットアップ、クランチともに20回×2セットがめやすです。
■3. フロントプランク
上げ下げの動きではなく、静止して姿勢を維持することで体幹を鍛えるメニューです。
腕立てのように床に腹ばいになり、肘から先の前腕部で身体を持ち上げます。
頭、胸、腹、腰、足が一直線になる姿勢をキープします。
この時、腹筋を固めるように緊張させることも忘れずに。体幹トレーニングは目的とする部位に意識を集めないと効果半減です。
■4. サイドプランク
フロントプランクを横向きで行います。
前腕を支えに身体を持ち上げ、頭から足首までが一直線となる姿勢をキープしてください。上の手はバランスをとりながら天井に向かってまっすぐ伸ばします。
プランク系メニューは30秒×2セットが目安です。
■5. レッグレイズ
あおむけで横たわり、両足を揃えて上げ下げします。手は腰の横に置いてください。
腹筋だけでなく太ももの筋肉も鍛えられるので、割れた腹筋がより映える引き締まった下半身を実現できます。
■6. ジャックナイフ
1~5.を問題なくこなせるようになったら、高負荷のジャックナイフに挑戦しましょう。
あおむけになり両手を頭の上で伸ばします。
息を吐きながら両手、両足を同時にゆっくり持ち上げましょう。膝はなるべくまっすぐ伸ばします。
身体の上で両手、両足をくっつけたら、息を吐きながらゆっくり下げていきます。手が届かない時はできるところまででかまいません。
足は床につく手前で止め、次の動作に移ります。しんどくても足を落とさないようにしましょう。
10~15回×2セットがめやす。腰を痛めないよう、あまり追い込み過ぎないように気をつけてください。
■7. バイシクル・クランチ
ウエストのくびれを作る女性向けメニューです。
あおむけになり、手は頭の後ろで組みます。
右膝を上げながら上体を起こし、左肘とつけるようにします。左足は動かしません。
次は反対に左膝を上げながら上体を起こし、右肘とくっつけます。
身体のひねりに頼らず、上体をしっかり起こしながらリズミカルに行いましょう。
■8. ハンギングレッグレイズ
腹筋トレーニングの中では随一の強度となるメニューです。最初は1回できることが目標です。
鉄棒やチンニングバーにぶら下がります。
息を吐きながら両足を揃えて持ち上げます。きつい時は膝が曲がってもかまいません。背中を丸めるようにすると持ち上げやすくなります。
そして息を吸いながら両足を下します。
1回成功したら、複数回、さらに足を斜めに上げてひねりを加えるバリエーションにも挑戦してみましょう。
最適な腹筋の間隔や時間
超回復にまつわる誤解を解いていくと、腹筋を鍛えるために最適なトレーニング時間と間隔が見えてきますね。
■最適な腹筋のスケジュール間隔
まず、間隔は超回復のセオリーに従います。1日ハードな筋トレメニューを行った場合は、回復に充てるため丸2日間ほど空けます。
ただし、何もしない2日間ではありません。腹筋以外の部位を鍛える日にしてもよいですし、後でご説明しますが、腹筋をキレイに割るために欠かせない有酸素運動の日に回してもよいでしょう。必ず身体を動かして血行を促し、筋肉に一定の刺激を与えておきましょう。
実際のところ、仕事のある方や子育て中の方なら週に何度もしっかりした筋トレの時間を作れないはずです。「2~3日のインターバルを置きながら、週2日のトレーニング」というペースが現実的ではないでしょうか。
忙しい方は週1回が精一杯かもしれません。しかし、残る6日間もストレッチしたり、エスカレーターやエレベーターに頼らず階段を使うといった小さな努力を積み重ねていけば、トレーニングの成果は必ずあらわれます。
■最適な腹筋のトレーニング時間
最適なトレーニング時間もひとりひとりの状況によって変わってきます。しかし、2~3時間の余裕が取れたとしても、すべてを筋トレに充てるのは非現実的です。
筋トレに大切なのは集中力です。鍛えたい部位に意識を集め、正しいフォームを維持しようとすると精神的にかなり疲労します。人間の集中力には限界がありますから、長くて90分、一般的には60分前後が精一杯ではないでしょうか。
忙しくて30分しか時間がとれなくてもかまいません。限られた時間内でどれだけ集中して自分を追い込めるかが大切です。
腹筋をキレイに割るために必要なこと
まず、大前提として腹筋は最初から割れています。
腹部の中央には縦に2列、「腹直筋」という筋肉が走っています。この腹直筋を横断して2~3本(数は個人差があり、生まれつきのものです)ほど「腱画」という組織が区切っています。そのため腹筋には縦2列×横3列、または縦2列×横4列のブロックができているのです。
腹筋をキレイに割るということは、最初から分かれている腹筋のブロックをより際立たせて見せるための作業です。
まず腹直筋と、その両側に発達している「腹斜筋」など腹部の筋肉を筋トレで肥大させ、より目立たせること。次に腹回りを覆っている皮下脂肪を落として、腹筋のブロックをくっきりさせることです。
割れた腹筋をキレイに見せるには、筋肥大のための筋トレ、皮下脂肪を落とす有酸素運動、筋肉を作り脂肪をためない食生活の三本柱が必要なのです。
■腹筋をキレイに見せるための食生活
腹部の脂肪が落ちないと、鍛えた腹筋が目立ちません。良質なタンパク質を摂取しながら、炭水化物と脂質を控え目にした食生活を心がけましょう。肉はささみやラムといった低脂肪な肉と豆類を中心にタンパク質を補っていきます。豆乳は満腹感をもたらす効果があるので、食事の前に飲んでおくと糖質、脂質の摂りすぎを防ぐことができます。
あわただしくジャンクな食事になってしまったと感じたら、プロテインバーで補ってもよいでしょう。食事に気を配っていれば、シェイクして飲むような本格的なプロテインはあまり必要ありません。
糖質制限ダイエットが流行しているおかげで、糖質を目の敵にしている方もいますが、決して身体にとって無用なものではありません。むしろタンパク質と同じく、筋肉の材料となる重要な成分です。炭水化物を控えすぎると筋肉のつきにくい体質になってしまうので注意しましょう。
■腹筋だけでなく全身の筋トレも魅力的な体づくりには必要
各種まとめサイトやキュレーションサイトで「腹筋をすぐ割る方法」という記事をひんぱんに見かけます。美しい身体を目指すブームはうれしいことですが、割れた腹筋にしか目が向いていないのは少し残念です。
筋トレ愛好者の間には「チキンレッグ」という有名なスラングがあります。上半身のトレーニングばかりに熱心で、下半身を鍛えられていない人をからかった表現です。大胸筋や上腕二頭筋など上半身には目立つ筋肉が多く、比較的大きくしやすいので、ついついそこばかり熱心になってしまいがち。
一方、日常生活ではあまり下半身の筋肉をアピールする機会がありません。また、下半身の筋トレは地味で苦しいものが多く、精神力と気合の世界です。そのため下半身の筋トレをおろそかにしてしまう人が少なくないのです。
せっかく割れた腹筋になっても、大胸筋が貧弱だったり、二の腕に脂肪がついていたら魅力半減。腹筋をメインにしつつ、全身がまんべんなく鍛えられている方が美しいのです。週2日、腹筋トレーニングの日を作るとしたら、残りの日は下半身や腕など他の部位にも目を向けてみてください。時間的制約はあると思いますが、アスリートのように体幹→上半身→下半身と毎日鍛える部位をローテーションさせるのが理想です。
割れた腹筋は全身運動からできあがると考えてください。
まとめ
・超回復を効率的に行うには週2回各60分の腹筋トレーニングがめやす。トレーニングしない日でも他の部位を鍛えたり、有酸素運動を継続するようにしましょう。
・筋トレだけで割れた腹筋は実現しません。有酸素運動と、脂肪を落とし筋肉をつけるための食生活も継続して行う必要があります。
・割れた腹筋だけでは魅力半減。全身をまんべんなく鍛え、引き締めたいものです。
・よく似た動作ですが、シットアップとクランチは並行して行った方がより効果的です。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。