男性、女性を問わず割れた腹筋、いわゆるシックスパックは美しい肉体のシンボル。
腹筋が割れる仕組みは? 正しい腹筋トレーニングの方法は? できるだけ短期間でシンプルに腹筋を割るには何が必要なのか?
シックスパックを目指す方法をご紹介していきましょう。
腹筋が割れるメカニズム
『北斗の拳』の決め台詞ではありませんが、割れた腹筋についてひとこと指摘するならば、「おまえはすでに割れている」です。
一般的に「腹筋」と呼ばれている部位の中心をなしているのは「腹直筋」。おなかの中央を縦に2列となって腹直筋は走っています。腹直筋を横断して2~3本、横糸のように「腱画」という組織が通っています。これによって縦2列×横3列、または縦2列×横4列のブロックが形成されます。これが割れた腹筋の正体なのです。
つまり、人間は生まれながらにして割れた腹筋を持っていることになります。腱画の数は個人によって2~3本と差がありますから、そのため6つに割れている人と8つに割れている人がいるのです。
にもかかわらず、割れた腹筋の見えない人が多いのは、ひとえにおなかが皮下脂肪で覆われているせい。つまり、皮下脂肪を落とせば誰でも割れた腹筋を見せることができますし、腹直筋を中心に腹部の筋肉を鍛えて肥大化させれば、さらに各ブロックのエッジを際立たせることができるのです。
割れた腹筋を見せる三本柱は、筋力トレーニング、有酸素運動、食生活。それぞれのやり方はいたって簡単です。割れるまでの期間は個人差がありますし、毎日のたゆまぬ積み重ねは決して楽とは言えませんが、ぜひ誰もがあこがれる割れた腹筋を手に入れてください!
きれいなシックスパックの作り方
腹筋と呼ばれている部位がどんな筋肉から構成されているかチェックしていきましょう。
まず、中央部分を縦に通っている「腹直筋」。シックスパックと呼ばれる6~8つに分かれたブロックの中核を成している筋肉です。身体を前に倒す動きに用いられます。次に身体をひねったり、前に倒す時に機能する「腹斜筋」。脇腹に位置し「側筋」とも呼ばれています。脇腹の皮下脂肪がよく絞れて、腹斜筋が発達していると、シックスパックがさらに際立ちます。
腹斜筋は表皮に近い「外腹斜筋」とインナーマッスルである「内腹斜筋」の2つに分類されます。そして「腹横筋」。内腹斜筋よりさらに深い位置にある筋肉で、内臓からかかる圧力を押さえつける働きをしています。
シックスパックはこれらの筋肉がまんべんなく肥大し、腹部の皮下脂肪がすっきりしていることで初めてくっきり姿を見せてくれます。しっかり筋トレしていても、有酸素運動で絞れていないとシックスパックが目立ちませんし、きちんと体脂肪を減らしても腹筋が物足りないとやはり見ばえがしません。食生活も含めた三本柱のバランスが大切なのです。
効果的な正しい腹筋の鍛え方7種類!自重トレーニング
■1. 定番メニューより効果的な「クランチ」からスタート!
いわゆる腹筋と聞いて即座にイメージする運動が「シットアップ」。両足を伸ばして固定し、上体を持ち上げる、あの運動です。昔からの定番となっているメニューだけあり、身体を鍛えるという意味では効果的なシットアップですが、より簡単に速くシックスパックを目指すというテーマに沿って考えると、実は少々遠回りなのです。
そこでおすすめしたいのが「クランチ」。シットアップと同じ動作を、膝を曲げた状態で行うメニューです。
クランチは、腹筋があまり強くない女性やトレーニング初心者向けのメニューと思われがちですが、実は正反対。膝を曲げた姿勢で行うクランチの方が下半身に負荷がかからないので、腹直筋や外腹斜筋、内腹斜筋にストレートな刺激を与えることができるのです。
負荷の強いシットアップはつい、身体のバネを使った反動でこなしてしまいがち。これでは肝心の腹筋に届きません。勢いをつけず、クランチで1回々々確実にこなしていった方が確実なのです。上体を持ち上げる時に息を吐き、戻す時に息を吸うようにします。戻す時は背中を床につけず、床ギリギリのところで浮かせて次の動作に移ります。そのたびに床につけていると腹筋の緊張が解けてしまい、効果が上がりません。
最初のステップとして、クランチを20回×2セット。これに苦労を感じなくなるまでがめやすです。
■2. 「フロントプランク」でインナーマッスルを攻める
クランチとセットで、定番の体幹トレーニング「フロントプランク」も行いましょう。プランクとは「板」を意味します。身体を床と平行に、板のように伸ばすことからなづけられました。板チョコのように割れた腹筋になるには、長時間でも余裕でフロントプランクができるようになる必要があります。
まず、腕立て伏せをするように床に腹ばいになってください。腕立てと異なるのは、肘から先の前腕部で身体を支えること。足は両方のつま先を立てて維持します。顔は上げず、床に向けたままです。ポイントは全身を一枚の板にすること。お尻が上がりすぎたり下がりすぎたりしないよう、頭、胸板、おなか、尻、足が一直線になるよう意識します。
この時、腹筋を「固める」ように集中します。固めるとは筋肉に意識と力を集めて緊張させること。腹筋を固めないままのフロントプランクは効果半減です。意識の向け方が難しい時は、おへその真下、内臓に向かって3cmほどもぐった場所にポイントを作り、そこに力を込めるようにイメージしてみましょう。
おへその真下は東洋医学で「丹田」と呼ばれる重要なポイント。武道でも座禅でも必ず丹田に気を集める重要性が説かれています。解剖学的に見ると丹田の場所には腹横筋があります。腹横筋は鍛えるのが難しいインナーマッスルだけに、肥大させるには常に部位を意識するのが大切です。昔から人々は腹横筋の重要性に気づいていたのですね。
フロントプランクは30秒×2セットからスタートさせましょう。トレーニング経験の浅い人は30秒でも息切れしてしまうはずです。体幹がしっかりしてくると、1分連続でも息が乱れなくなりますよ。
フロントプランクでは、背筋、臀筋、内転筋も同時に鍛えることができます。シックスパックだけでなく、ビルドアップした背中やヒップを実現できるのです。
■3. 「サイドプランク」で脇腹を引き締め
基本であるクランチ、フロントプランクに慣れてきたら、これまであまり使ってこなかった脇腹のトレーニングも取り込んでいきます。脇腹の外腹斜筋、内腹斜筋はフロントプランクのバリエーションである、「サイドプランク」で攻めていきましょう。
まず、横向きの状態で身体を伸ばして寝ます。続いて、フロントプランクの要領で前腕を支えに身体を起こします。両脚を揃え、身体が一直線となるのがポイントです。上側の手は天井に向かってまっすぐ伸ばします。この時も腹筋を固めることを忘れずに。
左右1回ずつ30秒×2セットが最初のステップです。
プランクはバリエーションの多さがポイントです。シックスパックを作るという今回の主旨から少しそれますが、太ももの内側になる「内転筋」を鍛えたい時にはサイドプランクの際、下側になる膝を90度に曲げて行います。フロントプランクの時、片方の足を宙に浮かせて行うと、腹筋により強い負荷がかかるだけでなく、バランス感覚を養うことにもつながります。
■4. ジャックナイフでキレキレの腹筋を仕上げる
ベーシックなトレーニング法の最後は腹直筋に高負荷を与える「ジャックナイフ」に挑戦しましょう。名前の通り、折り畳みナイフのように手足を上げ下ろしするのが特徴です。
まず、あおむけに横たわり、両手は頭の上で伸ばします。息を吐きながら両手、両足を同時にゆっくり持ち上げます。膝はなるべく曲げないように、腹筋を固めることを常に意識しましょう。身体の上で両手、両足を揃えたら、今度は息を吐きながらゆっくり下げていきます。両手の先を膝につけられたらベスト。できなくても両手、両足が可能な限り近づくまで持ち上げてください。
足は床につく寸前でストップ。ついキツくてべったり着けてしまいたくなりますが、ここで我慢するのがポイントです。上げる際には反動を使わずにゆっくり起こしましょう。高負荷なので10~15回×2セットからスタートします。腰に痛みを感じたら、無理せずストップしましょう。
■5. 「レッグレイズ」で太ももを併せて強化
クランチのバリエーションとして脚の方を上げる「レッグレイズ」をご紹介します。あおむけの状態で両脚を揃えて持ち上げ、また下すことの繰り返しです。手は伸ばして真横にひろげるか、腰の横に置いてください。
レッグレイズは腹筋だけでなく太ももの筋肉も併せて鍛えられるので、バランスのよい体形に仕上げることができます。後でご説明する有酸素運動をこなすためにも、太ももの強化は欠かせないのでぜひトライしてみてください。
■6. ウエストのくびれも作れる「バイシクル・クランチ」
クランチのバリエーションでさほど負荷の高くない「バイシクル・クランチ」も併せてご紹介しましょう。脇腹を引き締める効果があるので、女性にうってつけのトレーニング法です。
あおむけの状態で横たわり、手は頭の後ろで組みます。右膝を上げながら上体を起こし、左肘とくっつけます。次は反対に左膝を上げつつ上体を起こして、右肘と合せます。自転車のように交互に膝を上げながら、リズミカルに行いましょう。他のトレーニングと異なり、多少反動がついてしまってもかまいません。
■7. フロントプランクから「フロントブリッジ」へ
フロントプランクの姿勢から腰を落とし、床ギリギリまで近づけてから上げる繰り返しを「フロントブリッジ」と呼びます。フロントプランクの効果に加えて、二の腕と背筋に負荷を与えることができます。フロントプランクと同じ時間内に何回できるかを目標にしましょう。
上級者用バキバキの腹筋の作り方
プランクもジャックナイフも楽にこなせるレベルになったら、腹筋トレーニングの最高峰とも呼ばれる「ハンギングレッグレイズ」「ハンギングレッグレイズツイスト」に挑戦してみましょう。
腹直筋は縦に長く伸びており、上部、中部、下部の3ヵ所に分けて考えることができます。上でご紹介してきたトレーニング法は上部、中部を十分に鍛えることができますが、実は下部への刺激という点ではやや物足りないところがあります。
バーにぶらさがった姿勢で行うハンギングレッグレイズは、腹直筋の下部をダイレクトに攻めることができるのです。公園の鉄棒や、ジムのチンニングバーを使います。自宅用のチンニングバーも通販で入手可能です。
■ハンギングレッグレイズはまず1回から
両足の届かない高さのバーにぶら下がります。次に息を吐きながら両脚を揃えて、膝が曲がらないように持ち上げます。息を吸いながら両脚を下します。ハンギングレッグレイズはたったこれだけのシンプルな動作です。背中を丸めるようにすると腹筋の力を上手く利用できます。最初は膝を曲げて行ってもかまいません。上級者用メニューなので、まず1回できることがスタートとなります。
■ハンギングレッグレイズツイストは腹斜筋に有効
まとまった回数でハンギングレッグレイズができるようになったら、ひねる(ツイスト)動きをプラスしてみましょう。両膝を揃えたまま持ち上げるところまではハンギングレッグレイズと同じ。持ち上げる向きを左右それぞれ斜め60度に変化させるのがハンギングレッグレイズツイストです。持ち上げる際、尻も一緒に角度をつけて動かすと、より腹斜筋に刺激を与えられます。
ハンギングレッグレイズツイストは自重による腹筋トレーニングの中で最も強度が高いので、限界を超えて行うと腰痛のリスクが発生します。バーにぶら下がった時から腹筋に意識を集めて固めておく。厳しいと感じたら膝を曲げて負荷を下げること。脚を上げる時に息を吐き、下す時に吸う。
この3点を守るだけで腰痛予防につながります。シックスパックを目指すトレーニングは簡単な動作でできる反面、日々の積み重ねが大切と言い聞かせ、無理せず進めていきましょう。
腹筋を鍛えるのに効果的な食事
体脂肪率を減らすことも割れた腹筋へのポイント。おなかの脂肪が落ちないと、せっかくの腹筋が目立ちません。筋トレしつつ体脂肪を減らすには、たんぱく質の摂取を心がけながら、炭水化物と脂質を抑えることです。
肉はささみやラムといった低脂肪なものを選び、豆類でもたんぱく質を補います。豆乳は良質のたんぱく質を多く含み、満腹感をもたらす作用もあるので食事の前に摂るのがおすすめです。筋トレ上級者はプロテインでも補いましょう。割る必要のないプロテインバーが手軽で便利です。
炭水化物と脂質を抑えることは大切ですが、どちらも身体を維持するために必要なもの。極端にセーブすると筋肉のつきづらい体質になってしまい逆効果です。週に一度は思う存分炭水化物を摂る「チートデイ」を設けることが、ストレスなくトレーニングを続けるコツです。
アルコールは体脂肪の元。シックスパックは米国のスラングで「6本入りのビール箱」を意味します。トレーニング後のビールが美味しくてついシックスパックが空、なんてことにならないように気をつけて!
短期間で腹筋を割るためのコツ
筋肉量と体脂肪率は人それぞれ。仕事によって毎日トレーニングできるかも変わってくるので、腹筋が割れる期間を断言することは難しいのですが、3ヵ月~半年がおおよそのめやすとなるでしょう。
体脂肪が高く運動習慣のなかった方はさらに長くかかることを覚悟してください。
期間を少しでも縮めるポイントは有酸素運動にあります。いきなりランニングに挑む必要はありません。ゆっくりとしたウォーキングで長距離、長時間をこなすのが秘訣。
通勤の際、ひと駅手前から降りるなど工夫して、歩く時間をねん出してみましょう。ウォーキングによって、ふとももなど筋肉量の多い部位が鍛えられるので基礎代謝がアップし、より体脂肪を落としやすい体質になれます。
まとめ
・膝を曲げるクランチの方が効果的に腹筋を刺激できます。
・プランクは30秒からスタート。2分間で合格です。
・ジャックナイフで鍛えにくい腹直筋の下部を攻めます。
・高負荷のハンギングレッグレイズは腰痛に注意しましょう。
・炭水化物制限はほどほどに。週に一度は存分に食べましょう。
・ウォーキングの時間を確保することがシックスパックの近道です。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。