日本人が昔から食べてきた、健康食材のひとつである納豆。
納豆は、大豆を納豆菌で発酵させた発酵食品です。ねばねばと糸を引く様子と、独特の香りがちょっと苦手…という方もいらっしゃいますが、栄養バランスの良さと健康効果の高さから、海外の方からもスーパーフードのひとつとして注目されている食品です。
朝ご飯のお供に、キムチやマグロと和えておつまみに、チャーハンやオムレツの具材にと、調理も簡単で安くて美味しい納豆は、一人暮らしの男性や小さなお子様がいるお母さんの強い味方でもあります。
今回は、そんな納豆の基礎知識や健康効果、単品でも栄養価の高い納豆をより効果的に食べる組み合わせをご紹介したいと思います。
納豆1パックあたりの栄養価は?
何となく「体にいい!栄養満点!」というイメージはあるかと思います。ここでは、気になるカロリーをはじめ、どんなビタミンが含まれているかなどもまとめてご紹介します。
※納豆は1パック50g前後の製品が多いので、今回は50gの納豆を例にご紹介します。製品によって異なりますのでご了承ください。
■エネルギー:100kcal
これは、マヨネーズ大さじ1杯、チョコレート1/7枚分とほぼ同じくらいのエネルギー量です。ちなみに、一日の必要なエネルギー量は、年齢や体形、活動量によって異なりますが、
目安としては、
・成人男性 2250kcal~3000kcal
・成人女性 1800kcal~2400kcal
程度といわれています。
納豆は、腹持ちもよく低カロリーですので、ちょっとしたおやつにもおススメの食品です。
■たんぱく質:8.25g
納豆はたんぱく質がとても豊富な食品です。同量のたんぱく質を摂取するためには、カップ入りのヨーグルトだと2個食べなければなりません。また、納豆のたんぱく質はその質が非常に高く、「必須アミノ酸」といわれるからだの中で作ることのできないアミノ酸9種をバランスよく含んでいますので、非常に優秀な食品です。
一日のたんぱく質の目安量は、女性は55g、男性は70g程度ですが、体重が50キロでしたら50gといったように、自分の体重と同じグラム数のたんぱく質を摂るのが理想的と言われています。
■炭水化物:6.0g
これは、コンビニのおにぎり1/5個分、ミートソーススパゲッティの2口分くらいの炭水化物量になります。炭水化物の一日の最低必要量は100gと言われていますが、現代人は過剰摂取気味であり、且つ人間は体内でブドウ糖を作り出すことも出来ますので、多少少なくても問題がないといわれています。目安ですが、スパゲッティ一人前でだいたい80gの炭水化物が取れますので、現代人が炭水化物をいかに過剰摂取しているかがお分かり頂けるかと思います。納豆は、その栄養価に対して炭水化物量が少ないので、現代人の食生活に適した食品であるといえます。
■脂質:5.0g
これは、卵3/4個分、小さめのウインナー1本分と同じくらいの脂質量になります。
ん?ちょっと脂質量が多いのでは?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、納豆に含まれている脂質は、主にリノール酸やαリノレン酸という不飽和脂肪酸で、からだに良い油といわれている成分です。
お肉の脂身や揚げ物の油などから摂れる脂質とは違い、代謝を上げ、血栓を予防する効果もあります。ちなみに脂質の一日の摂取目安量は、年齢にもよりますが、1日に必要なエネルギーの約20~30%を脂質から摂取するのが良いと言われています。
■栄養士からのミニ知識①
◯カロリーは、何由来のカロリーかが大切です!
まず、食品のカロリー(エネルギー)は主に3大栄養素で構成されています。
3大栄養素とは、「炭水化物」、「たんぱく質」、「脂質」の3つです。それぞれ1グラムあたり、4kcal、4kcal、9kcalのエネルギーがあります。この中でも「たんぱく質」は、からだをつくり、代謝を上げるためのアミノ酸も豊富に含まれており、積極的に摂ってほしい栄養素です。
しかし、現代人の食生活は、パスタや丼もの、パンやおにぎりなどの炭水化物や、揚げ物やお菓子から摂取する脂質に偏りがちで、たんぱく質が不足気味と言われています。カロリーにばかり気を取られると、エネルギー摂取はコントロールできているけど、からだに必要な栄養素はスカスカなお食事になってしまう恐れがあるのです。
◯納豆は、炭水化物少なめ・たんぱく質豊富なスーパーフード
納豆は、炭水化物から22kcal、たんぱく質から33kcal、脂質から45kcalのエネルギーを摂取できますので、たんぱく質量が多く炭水化物が少ない、現代人の食生活に適したバランスが良い食品です。外食される時やお弁当を買う時などのメニュー選択時に、単にカロリーだけを見るのではなく、3大栄養素のうち何が一番多く含まれているかを気にしながら選ぶことで、より健康的な食生活へと近づきます。
■食物繊維:2.9g(不要性食物繊維1.9g 水溶性食物繊維1.0g)
食物繊維の一日の目標摂取量は、1日あたり男性19g以上、女性17g以上とされています。
和食中心の食生活を送っていても、目標摂取量に届くのは難しく、成人の平均は12~13gと言われています。いつものお食事に納豆をプラスするだけで、約3gの食物繊維の摂取が可能です。
■ビタミン
・B1 : 0.035 mg
・B2 : 0.28 mg
・パントテン酸 : 0.1 mg
・ビタミンB6 : 0.07 mg
・葉酸 : 60 μg
・ナイアシン : 0.6 mg
・ビタミンE : 5.1mg
・ビタミンK : 300μg
ビタミンB群とビタミンKの含有量が高いのが特徴です。ビタミンB1には代謝を高める力があり、疲労回復のビタミンと呼ばれています。また、ビタミンB2は発育のビタミンと呼ばれており、爪や髪、皮膚などの細胞の生まれ変わりを助ける力があります。
さらに納豆は、ビタミンKの含有量が非常に高い食品です。ビタミンKは、出血時に血液を固めるのに必要な成分です。また、骨の形成をうながすことができるので、骨粗しょう症の治療薬としても使われている成分です。
■ミネラル
・ナトリウム : 1 mg
・カルシウム : 45 mg
・マグネシム : 50 mg
・カリウム : 330 mg
・鉄分 : 1.7 mg
・亜鉛 : 1.0 mg
・銅 : 0.31 mg
・セレン : 8 μg
・クロム : 1 μg
・モリブデン : 150 μg
納豆にはカルシウムが豊富に含まれています。納豆1パックで、小さめのカキ3つ分のカルシウムを取ることが出来ます。さらに、先ほどお話ししたビタミンKも含まれていますので、相乗効果が期待でき、骨粗しょう症が気になる方には大変おすすめの食品です。
健康や美容にも良い?納豆の効果効能9つ
納豆には栄養素のほかに、美容や健康に役立つ機能性成分もたくさん含まれています。
■1. ポリグルタミン酸
(効果:お通じ、美肌、デトックス)
納豆のネバネバの主成分が、ポリグルタミン酸です。これは、アミノ酸がたくさん結合した天然由来の成分で、肌の機能を正常化させてくれる働きがあると言われています。とくにこのポリグルタミン酸は、保湿効果も高く、水分をお肌にとどめてくれる力があるといわれています。
さらに、ポリグルタミン酸は分解されにくい成分で、腸の中で老廃物や毒素の排出を促してくれるため、デトックス効果も期待できます。
■2. ムチン
(効果:免疫力アップ、粘膜保護、ドライアイ、美肌)
こちらも納豆のネバネバ成分です。納豆のほかに、オクラや山芋にも含まれています。これは糖とたんぱく質が結合してできた成分で、多糖類の一種です。粘膜の保護に役立ちますので、ドライアイ予防の目薬等にも使用されています。
食品から摂取することで、胃粘膜を保護することが出来、胃炎や胃潰瘍を防ぐことに繋がります。
また、腸内環境を整える作用もありますので、免疫力を高めることが出来ると考えられています。
■3. 納豆菌
(効果:お通じ、免疫力アップ)
納豆菌は熱に強く腸内でも発酵を進めることができます。そして、腸内環境を酸性化し、悪玉菌を抑え善玉菌の増殖を促します。これにより、腸内環境が整い、便秘などの腸トラブルを改善させます。また、善玉菌を増やすことで、免疫力もアップします。
■4. ナットウキナーゼ
(効果:生活習慣病予防、血液サラサラ)
ナットウキナーゼは、納豆のネバネバ部分に含まれるたんぱく質分解酵素です。加齢とともに減少してしまう成分ですが、腸からの吸収が非常に良い成分ですので、食品から補うことが出来ることが確認されています。ナットウキナーゼは、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病といった生活習慣病の予防に役立つ成分であると言われています。
これらの血管疾患は、血栓が原因です。血栓は「フィブリン」というたんぱく質が主成分で、ナットウキナーゼにはこのフィブリンの分解を促進する力があると確認されていますので、血液のドロドロ部分を溶かして分解し、サラサラの血液にしてくれるといわれています。
■5. イソフラボン
(効果:女性らしさアップ、骨粗しょう症予防、美肌)
女性ホルモンに似た成分で、エストロゲンと同じような働きをします。エストロゲンは、女性が妊娠や出産をするために必要なホルモンです。卵胞の成熟を促したり、頸管粘液を増やし、受精を助ける効果などもあります。それだけでなく、女性らしい体づくりや、肌、髪を作るのにも効果的といわれています。
また、ホルモンに減少に伴う骨粗しょう症予防にも効果的で、骨の形成を促進するといわれています。更年期障害が気になる方にもおすすめの成分です。
■6. 大豆サポニン
(効果:生活習慣病予防、血液サラサラ、アンチエイジング)
大豆に含まれる渋みや苦味などの成分のことで、肥満予防や動脈硬化予防に効果的であることが認められ、注目を集めています。抗酸化力が強いため、体内で悪さをする過酸化脂質が出来てしまうのを抑え、血栓や動脈硬化を予防するといわれています。また、その強い抗酸化力には、アンチエイジングなども期待できるといわれています。
■7. 大豆オリゴ糖
(効果:お通じ、免疫力アップ)
大豆に含まれているオリゴ糖です。他のオリゴ糖よりも腸内で吸収されやすいオリゴ糖ですが、少量で腸内の善玉菌を増やす効果があるといわれていますので、整腸作用が高いといわれています。甘味も強いので、甘味料としてもよく使われる成分です。
■8. ポリアミン
(効果:代謝アップ、アンチエイジング、美肌)
年齢を重ねるごとにからだで作られる量が減少していく成分で、主に細胞の生まれ変わりに関わる成分です。ポリアミンを摂取することで、新陳代謝を活性化することができ、美肌や代謝アップ、老化防止に効果的であるといわれています。
■9. 大豆レシチン
(効果:生活習慣病予防、アンチエイジング、ダイエット、代謝アップ)
レシチンは油と水をなじませる働きを持っていますので、血管壁にこびりついてしまった脂のかたまりを溶かしてくれる効果があります。そのため、コレステロール値を下げる効果や、生活習慣病の予防、ダイエット効果も期待できるといわれています。また、細胞に酸素や栄養を取り込み、老廃物を出すためにも使われているので、細胞の新陳代謝アップや老化防止にも効果があるといわれています。
■栄養士からのミニ知識②
◯納豆についている白い物体… これっていったい何?
賞味期限ぎりぎりや、ちょっと賞味期限を過ぎてしまった納豆によく見られる、納豆にまとわりつく白い物体…。食べるとなんだか苦いし、ちょっとジャリジャリしている気もして、これは食べても大丈夫なのか?!と悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。
この成分の正体は、チロシンというアミノ酸の一つです。チーズやりんごなどに多く含まれるアミノ酸で、からだに全く害はありません。食べても大丈夫です!
◯ストレス対策に効果的なチロシン
チロシンは、ノルアドレナリンやドーパミンという集中力ややる気に関わる脳内ホルモンの材料となります。ストレスを感じうつ状態になると、これらの物質が脳内で低下し、無気力状態になるといわれています。チロシンを摂取することで、ストレスや疲労の軽減につながるといわれています。また、チロシンはメラニン色素を生み出す力もあるため、黒い髪を作り出す力も期待できます。そのため、ストレス緩和作用と協力し合い、白髪予防にも効果的であるといわれています。
栄養バランス抜群!納豆の簡単食事メニュー例5つ
納豆に栄養がたっぷりつまっていることはお分かりいただけたかと思います。その栄養をより効率的に吸収できる、目的別バランスアップメニューを5つご紹介します。
■1. 納豆キムチ
もっとおなかスッキリ、免疫力アップを目指すあなたに「納豆キムチ」。納豆に含まれる納豆菌、大豆オリゴ糖を餌にして、キムチに含まれる乳酸菌が増え、より効果的に摂取できます。
ポイントとしては、納豆とキムチをよく混ぜた後に、少しだけ時間をおいて食べること。待ち時間の間に、乳酸菌がどんどん増えてくれます。
■2. ちりめんじゃこおろし納豆
骨を強くしたいあなたには「ちりめんじゃこおろし納豆」。納豆に含まれるカルシウムと、ちりめんじゃこに含まれるカルシウムのWの効果が期待できます。
そして、カルシウムの吸収を助けるビタミンCを大根おろしでチャージすることで、吸収もばっちり!さらに納豆に含まれるビタミンKで骨の形成を助けます。さっぱりとポン酢をかけて食べるのもおすすめです。
■3. オリーブオイル納豆
気軽にデトックス、美肌も手に入れたいよくばり女子に「オリーブオイル納豆」。ちょっと驚きの組み合わせかもしれませんが、納豆に含まれるビタミンEと大豆サポニンに含まれる抗酸化力と、オリーブオイルに含まれる抗酸化力によって、アンチエイジング力の高いスーパーフードになります。
また、オリーブオイルは腸から吸収されにくいので、カチカチ便をスルッと排出するサポート効果もあるといわれています。オリーブオイルは小さじ一杯~大さじ一杯くらいの量を目安に、納豆に混ぜて食べてください。
■4. モロヘイヤ納豆
納豆に足りないビタミンをプラス!疲労回復、胃もたれに「モロヘイヤ納豆」。夏野菜の王様ともいわれるモロヘイヤには、納豆に不足しているβカロテンやビタミンCがたっぷり。プラスすることで完全栄養メニューに変身します。
さらに納豆に含まれているムチンも豊富ですので、胃もたれ対策にもおすすめです。また、ビタミンB群も豊富ですので、疲労回復効果も期待できます、モロヘイヤの葉の部分をさっとゆでて、軽く刻んで納豆と混ぜて出来上がりです。
■5. ねぎ納豆
血液サラサラ効果を高めたいなら定番のコレ!「ねぎ納豆」。昔から定番の組み合わせですが、ねぎに含まれる硫化アリルとナットウキナーゼのもつ効果によって、血液をサラサラやコレステロール値低下が期待できます。
また、ねぎにはビタミンCとβカロテンも含まれていますので、さらにバランスアップ。まさに理にかなったベストコンビです。
まとめ
納豆=からだにいいものというイメージしかお持ちでなかった方も、どんな成分がどんなふうに良いのかお分かりいただけましたでしょうか?いつものお食事に納豆を1パック追加するだけで、気になるお悩み解消が期待できます。
納豆は一度に大量に食べるのではなく、毎日継続して食べることが効果的です。気になるお悩みが合った方は、ぜひ1日1パックを目安に試してみてください。
栄養士の資格を活かして、美容関係の仕事をしています。