プロペシア(フィナステリド)の効果3つと飲み方・副作用【薬剤師解説】

プロペシア(フィナステリド)の効果3つと飲み方・副作用【薬剤師解説】

AGA(男性型脱毛症)、いわゆるハゲで悩んでいる人の中には、プロペシア(フィナステリド)を飲んでいる人も多くいます。ただ、効果効能や副作用には不安もありますよね。薬は効果が強い分、副作用も少なからず発生してしまいます。多くの人が気になることを薬剤師が徹底解説します。


「ハゲ 薬」「男性型脱毛症(AGAと略されることがあります)」などのキーワードで検索するとよく目にする『プロペシア』という薬、これはどのような薬なのでしょうか?

男性型脱毛症に悩んでいる方は、一度は聞いたことがあると思います。
プロペシアは、2005年に日本でも使えるようになった男性型脱毛症の治療薬です。適切に使用することで効果が期待できます。今回は、このプロペシアを適切に使用するために必要な内容について紹介します。

数百人に試した臨床試験内容なども詳しく説明していますので、本当に効果があるのか、副作用は大丈夫なのか、気になる人はぜひ確認してみて下さい。

プロペシア(フィナステリド)とは?メカニズムを解説

プロペシアは、製薬企業として世界第4位の売り上げを誇るアメリカのメルク社によって開発された『男性型脱毛症(AGA)』の治療薬です。

プロペシアというのは商品名で、その中に含まれる有効成分が「フィナステリド」という化合物です。

これはテストステロン還元酵素阻害剤に分類されます。ここで出てくる「テストステロン」は、男性ホルモンの一種で、筋肉の増大や骨格の発達に関係しています。テストステロンは、身体のいくつかの部分に存在する酵素によって、「ジヒドロテストステロン」というより強力な男性ホルモンになります。このジヒドロテストステロンは、頭髪に対して悪影響を及ぼし、その結果、抜け毛や薄毛が生じます。

これが男性型脱毛症の起こるメカニズムです。一方、テストステロン自体は、頭髪に対して影響しないとされていますので、ジヒドロテストステロンを生じさせないことが、男性型脱毛症を防ぐことに繋がります。つまり、この酵素の働きを抑えることが重要なのです。

この酵素は、5α-還元酵素(テストステロン還元酵素のひとつ)というもので、実はこれを抑制する化合物が「フィナステリド」なのです。このようにしてフィナステリドを含む『プロペシア』は、男性型脱毛症に効果を示します。

ちなみに、ジヒドロテストステロンは、前立腺肥大症にも関係するホルモンですので、プロペシアの有効成分である「フィナステリド」はもともと前立腺肥大症の薬として開発されていました。前立腺肥大症の患者に長期間使用した際の安全性が確認できています。フィナステリドを長期間飲み続けても、命に関わるような重篤な副作用がほとんどでなかったということです。そして長期安全性が確認できた後に、男性型脱毛症の治療薬として開発が開始されました。その有効性が認められた結果、1997年にアメリカで承認を受けて一般的に使えるようになりました。日本では、2005年に使用が認められており、現在では世界60ヶ国以上で男性型脱毛症の治療薬として使用されています。

「Pro」はポジティブという意味の単語が由来で、また「Pecia」は脱毛症の英語Alopeciaから取っており、この二つを併せて「Propecia(プロペシア)」と命名したそうです。

日本で現在使用(処方)されているのは、次の2種類です。

販売名 プロペシア®錠 0.2 mg プロペシア®錠 1 mg
フィナステリド含量 0.2 mg 1 mg
錠剤表面の文字 (識別コード) MSD22 MSD115
分類 処方箋医薬品(医師の処方が必要)
形状・色調 円形・うすい赤色
剤形 フィルムコーティング錠
サイズ 直径7.2 mm、厚さ3.5 mm

この2種類は、どちらも同じ大きさ、色の錠剤ですが、フィナステリドの含量が5倍違います。間違って飲んでしまうと効き目が出ない、副作用が強く出る可能性がありますので、ご注意ください。もしどちらの錠剤か分からなくなった場合には、錠剤表面に記載されている識別コードで区別できますので、そちらを確認してください。

プロペシア(フィナステリド)の効能効果3つ

プロペシアの有効成分である「フィナステリド」は、
①男性型脱毛症の進行を遅らせる作用
②細く短くなっている毛髪を太く長くする作用
③活動を休止していた毛包(毛を作る器官)から、発毛を再開させる作用

の3つの効果が認められています。

日本では、プロペシアは『男性における男性型脱毛症の進行遅延』にのみ使用が認められています。「男性における」となっていますので、女性が服用することはできません。女性で使用した際の効果が認められていないためです。

続いて、「男性型脱毛症の進行遅延」と限定されているのもポイントです。男性型脱毛症以外の脱毛症、例えば円形脱毛症などには効果がないとされていますので、このような場合には使用できません(使用するメリットがありません)。また、「進行遅延」となっていますので、あくまでも脱毛を抑える働きがメインとなります。具体的には、生え際の後退を止める、頭頂部が薄くなるのを防ぐという効果です。

ただ、細く短くなっている髪を太く長くする作用や、一部の毛包から毛を再び生やす作用はありますので、「毛が増えた」、「髪がふさふさになった」、「頭頂部が黒くなった」と感じる方はいるようです。

また、国内においては20歳未満の方を対象とした臨床試験を行っていませんので、20歳未満の方での有効性と安全性は未確認です。予測できない副作用がでる可能性もありますので、専門医の十分な観察の元に使用する必要があると思います。

男性型脱毛症は遺伝で発症?フィナステリドの薬理作用

上で述べたように、男性型脱毛症の発症には男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン」が関与していると考えられています。脱毛の原因物質がこのホルモンということです。また、ジヒドロテストステロンを作る酵素(5α-還元酵素Ⅱ型)の量が、遺伝によって決まっているとの研究結果もあります。

これらから考えると、発症が遺伝するのも納得できますよね。このジヒドロテストステロンを作る5α-還元酵素Ⅱ型を抑えることができれば、脱毛を防ぐことができるとの考えから開発されたのが、『フィナステリド』なのです。

フィナステリドは、「5α-還元酵素Ⅱ型」を阻害することが実験で明らかにされています。さらに6週間の服用で、頭皮中のジヒドロテストステロンの量を大きく減らすことが、ヒトでの研究で認められています。この作用により、上で説明した3つの効果が発現するということです。

本当に効果はあるの?プロペシア(フィナステリド)の臨床試験結果4つ

では、プロペシアはどの程度男性型脱毛症に効果があるのでしょうか?これまでに行われた臨床試験の結果を見ていきましょう。

この4つの臨床試験結果を見れば、知らない人の体験談による効果や安全性より確実な情報が分かるはずです。

①日本での臨床試験

24歳から50歳の男性型脱毛症患者414名を対象として行われた臨床試験です。
この臨床試験で男性型脱毛症に対する有効性および安全性が認められたことより、日本でプロペシアが承認を受けることができました。

投与期間は48週間で、プラセボグループ135名、フィナステリドを1日0.2 mg服用するグループ131名、フィナステリドを1日1 mg服用するグループ132名とランダムに分けられています。ここでのプラセボとは、見た目は同じですがフィナステリドを含んでいない錠剤のことです。どのグループも飲んでいる錠剤は見た目が同じですので、患者も医師もどのグループに振り分けられたか分からないようになっています。先入観がないようにして、臨床試験の信頼性を上げるためです。患者は、以下の状態に属する方が選ばれています。

この臨床試験では、投与前と服用後の頭頂部の毛髪を写真に撮り、次の7段階で評価しています。
(著明改善:+3、中等度改善:+2、軽度改善:+1、不変:0、軽度進行:-1、中等度進行:-2、著明進行:-3)

服用12週後の評価では、フィナステリド0.2 mgおよび1 mgグループでは評価の平均値が+0.2であり、プラセボグループではおよそ-0.1でした。フィナステリドを含まない錠剤を飲んでいるプラセボグループでは平均値がマイナスとなっていますので、平均すると進行していることが分かります。一方、フィナステリドを服用した場合は平均でプラスになっていますので、わずかではありますが改善しているということが分かります。軽度改善と不変の方が多かったということでしょう。基本的に男性型脱毛症は徐々に進行する疾患ですので、その進行を抑えることも薬の効果であるとされています。そのため、「不変」の評価も薬の効果が出ていると判断されます。

続いて服用24週後の評価では、プラセボグループがほぼ0なのに対して、フィナステリド0.2 mg服用で+0.6、1 mg服用で+0.7という平均値が得られています。どちらもプラセボグループと比べて高い改善効果が得られていることが分かりますし、12週時点と比べても効果がアップしていることが分かります。そして、1 mgを服用していたグループの方が、改善効果が高い傾向にあることも分かりました。ただ、わずかな差ですのでそれほど違いはないとのことです。

ちなみに、24週時点で「不変」以上と評価された例は、97.7%~100%であったとのことです。これらの結果より、フィナステリドは非常に有効性が高いことが分かると思います。

そして、最終的な48週後の評価では、効果の平均がフィナステリド0.2 mg服用で+0.6、1 mg服用で+0.7でした。24週時点での効果がそのまま持続することが分かりました。一方、プラセボグループでは、平均値が-0.2でしたので、フィナステリドを服用しない場合には、進行が進んでいるようです。プラセボグループとの差は24週時点に比べると広がっていますので、この点を考えると48週でも高い効果が得られているといえます。また、この臨床試験では、頭頂部の写真だけでなく前頭部の写真および主治医の判定も行われましたが、いずれにおいても同様の結果が得られたとのことです。

ちなみに、「軽度改善」以上、つまり脱毛面積の縮小が得られたのは、0.2 mg服用グループで54.2%、1 mg服用グループで58.3%でした。『進行抑制』という効果で承認されていますが、このように実際は半分くらいの方には脱毛症を改善する効果が出ることが分かります。

国内の臨床試験から、フィナステリドを服用して24週(6ヵ月)の時点で高い効果が得られることが分かりましたので、プロペシアを服用する場合には、服用して6ヵ月で有効かどうかを医師が判断するようになっています。

また副作用の発現率は、フィナステリド0.2 mg服用グループで1.5%、1 mg服用グループで6.5%、プラセボグループで2.2%でした。フィナステリド0.2 mgでは、プラセボを服用した時と同程度の副作用発現率ですので、安全性が非常に高いことがわかります。

②日本での長期投与試験

長期間使用した場合の有効性と安全性を確認する目的で行われた臨床試験です。
上で紹介した48週間の臨床試験の後に、374例の患者がフィナステリド1 mg/日を48週間継続して服用しました。最長96週間服用したことになります。頭頂部の写真評価の結果、フィナステリドの改善効果が維持することが明らかになりました。

またこの期間での副作用の発現率は1.1%であったとのことで、長期間服用した場合でも安全性が高いことも示されました。

③海外での臨床試験

日本での臨床試験の評価は、写真判定や主治医判定といったいわゆる見た目で行われましたが、海外ではより具体的な毛髪数の変化を調べた臨床試験がいくつか行われていますので、それらの結果を紹介します。なお、これらは全て男性を対象とした臨床試験です。

臨床試験 症例数 比較 評価項目 プラセボグループとの差
No. 1 1,553例 プラセボ vs フィナステリド1 mg 直径1インチ(5.1 cm2)
円内の毛髪数
12ヵ月後:+107本/5.1 cm2
5年後:+277本/5.1 cm2
5年後の不変率: +65%
No. 2 326例 プラセボ vs フィナステリド1 mg 直径1 cm2
円内の毛髪数
12ヵ月後:増加
No. 3 212例 プラセボ vs フィナステリド1 mg ヘアサイクル 成長期の毛髪:増加

④女性に対する臨床試験

女性の男性型脱毛症については、海外で臨床試験が実施されています。
137例の閉経後女性の男性型脱毛症を対象として、フィナステリドもしくはプラセボを12ヵ月服用してもらい、脱毛症の状態について評価しています。その結果、フィナステリドを服用してもプラセボと結果に差が出なかったことから、フィナステリドの有効性は否定されています。

そして、妊娠中の服用は男子胎児に対して影響が大きく危険であるとされていますので、閉経前の女性に対しては安全性の面で問題があると考えられます。閉経後の女性では有効性が認められていませんので、これらのことにより女性に対してはフィナステリドを使用すべきでないということになります。そのため、プロペシアの添付文書には、「女性に対する適応はない。」と明記されています。

プロペシア(フィナステリド)の正しい飲み方・服用方法

正しい飲み方・服用方法

プロペシア錠は、「男性成人には、通常、フィナステリドとして0.2 mgを1日1回経口投与する。なお、必要に応じて適宜増量できるが、1日1 mgを上限とする。」と決められています。

臨床試験で1日0.2 mgと1日1 mg服用グループでの効果の差がわずかであったこと、そして副作用の発現率が1 mg服用グループの方が高かったことから、プロペシア錠の1日の服用量は0.2 mgから開始することになっています。ただ、より高い効果を期待する患者のために、1日1 mgまでの服用が認められていますので、1 mgから開始することも可能です。0.2 mgから開始して徐々に増量することも可能ですが、フィナステリドの服用量を増量した際の効果を検証した臨床試験は行われていませんので、どのような結果になるかはなんとも言えません。効果が大きく増強される可能性もありますし、ほとんど変わらない可能性もあります。

プロペシア錠は、効果の持続のために毎日継続して服用する必要があります。臨床試験の結果から考えると、早い人では服用開始して3ヶ月で好ましい効果が出る場合がありますが、通常では効果があるかを確認するために6ヶ月の継続服用が必要です。そのため、プロペシア錠の有効性は、服用開始後6ヶ月の時点で判断することになっています。その際に、男性型脱毛症の進行遅延が認められない場合には、プロペシア錠の服用を中止することになります。

また、フィナステリドの吸収は、食事の影響を受けないことが分かっています。吸収とは、腸などから血液中に取りこまれることです。その後、血液によって頭皮に運ばれ、効果を示すという流れです。

吸収に食事が影響を与えないということは、どのタイミングで飲んでも問題ないということになります。さらに、胃腸を痛めるなどの副作用もありませんので、空腹時に飲むことも可能となっています。

1日のうちのどこかで1回飲めば良いということですので、飲むことを忘れにくいタイミングを決めておくと良いでしょう。医師と相談しながら、自身のライフスタイルに合わせて服用タイミングを決めることをお勧めします。忘れにくいタイミングとしては、朝起きた後や朝食後、寝る前などが挙げられます。

そして食事の影響を受けませんし、飲料の影響もこれまで報告がありませんので、服用する際は、どの飲料で飲んでも問題がないと考えられます。水でもお茶でも、食事時のコーヒー、ジュースなどでも大丈夫ですので、この点も服用タイミングをライフスタイルに合わせやすいポイントだと思います。

服用してはいけない!?禁忌・慎重投与について

・フィナステリドに対して過敏症を起こしたことがある方
・妊婦又は妊娠している可能性がある婦人および授乳中の婦人

これらの方は『禁忌』に該当しますので、服用してはいけません。過敏症は命にかかわることがありますし、妊婦が服用するとフィナステリドの薬理作用により、男子胎児の発育に影響を及ぼす可能性があるためです。

これらの方はフィナステリドに触れないようにする必要があります。そもそも女性は適応がないので、これらの方には医師から処方されることがないと考えられます。ですので、フィナステリドに触れるとすれば家庭や職場などで他人が服用している場合でしょう。プロペシア錠はコーティングされていますので、通常の取り扱いではフィナステリドに触れることはありえません。ですので、他の方が普通に服用する分には、気にすることはありません。ただ、錠剤が粉砕、破損、分割した場合には、触れてしまう可能性がありますので、そういう場合には近寄らないようにしてください。

また、肝機能障害がある方は「慎重投与」に該当します。肝機能障害の患者での安全性が確認できていないためです。ですので、使うことはできますが、副作用がでないか十分に確認しながら使う必要があります。肝機能障害がある方は、医師の指示の元で服用することになりますので、医師の指示をしっかりと守ってください。

なお、20歳未満での安全性及び有効性は確立されていませんので、20歳未満の方の服用もお勧めできません。他の脱毛症治療薬を用いた方が良いでしょう。

服用上の注意点

「フィナステリド投与中の男性型脱毛症患者に対し前立腺癌診断の目的で血清PSA濃度を測定する場合は、2倍した値を目安として評価すること」との指示があります。

有効成分のフィナステリドは、男性ホルモンに影響しますので、男性ホルモンが関係する臨床検査値に影響を与えることがあります。国内での臨床試験で、血清PSA(前立腺特異抗原)の濃度が平均で約40%低下することが分かりました。海外の臨床試験では、高年齢層の患者で血清PSAが約50%低下したそうです。

PSAは、前立腺から分泌される成分で、血清PSA濃度は前立腺癌のマーカーとして用いられています。つまり、フィナステリドを服用していることを検査担当者に伝えないと前立腺がんの発見が遅れる可能性があるということになります。健康診断などで血清PSAを測定する際には、必ずその旨を医師もしくは担当者にお伝えください。

プロペシアをやめたらどうなる?服用中止した場合

プロペシアは飲み続ける必要があるとされていますが、では服用を中止したらどうなるのでしょうか?

海外でその影響を確かめる臨床試験が行われています。

フィナステリド1 mg/日を1年間投与して効果が得られた症例に対して、服用中止の影響を調べたものです。1年後にフィナステリドを中止して、見た目が同じプラセボ錠の投与に切り替えました。すると、フィナステリドを中止した1年後に、それまで増加していた毛髪数がフィナステリド投与前の状態に戻ったそうです。

そのため、服用中止した場合は、それまでに得られていた効果が時間の経過とともになくなり、頭髪がフィナステリドを服用する前の状態に戻ってしまうことが考えられます。

せっかく効果が得られているのに、それが全くなくなってしまうのはもったいないと思いますので、重篤な副作用が出た場合や副作用が気になった場合などでなければ飲み続けることをお勧めします。

プロペシア(フィナステリド)の副作用

プロペシアは副作用の発現率が低い安全性の高い薬だとされていますが、やはり薬ですので副作用が出ることがあります。薬理作用がジヒドロテストステロンの生成阻害ですので、男性ホルモンを介する副作用が出ることが多いようです。

日本国内の48週間の臨床試験では、フィナステリド0.2 mgと1 mg服用グループを合わせて4%(11例/276例)に副作用が確認されています。また使用成績調査という発売後の調査では、0.5%(943例中5例)に副作用が確認されています。

重大な副作用

これまでに確認されている重大な副作用は『肝機能障害』です。
フィナステリドなどの化合物(薬の有効成分)が体内に吸収されると、私たちの身体はその化合物を「不必要なもの」と判断して、身体の外に出そうとします。その流れとして、「肝臓で代謝」というものがあります。肝臓の働きで薬の形を変えて身体の外に出しやすくするものです。そのため、薬を飲むことにより肝臓が働きますので、多少なりとも肝臓に負担をかけることになります。

ですので、負担がかかりすぎると肝臓が弱ってしまい、正常に機能しなくなることがあります。この状態が肝機能障害です。

健康診断や病院での検査で、肝機能検査値異常(AST、ALTなど)に気付くことが多い副作用です。症状が進んだ場合には、全身倦怠感(だるさ、疲労感)、食欲不振が続く、尿の色が濃くなる、黄疸(皮膚や白眼の部分が黄色くなる)などの自覚症状が出てきます。これらの自覚症状が出た場合には、早急な対応が必要ですので、すぐに近くの医療機関を受診してください。

その他の副作用

これまでに確認されている副作用は以下の通りです。

種類 1~5%未満 1%未満 頻度不明
過敏症 掻痒症、蕁麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉、及び顔面腫脹を含む)
生殖器 リビドー減退(性欲・性衝動が低下すること) 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)
肝臓 AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇
その他 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症、めまい

男性ホルモンが関係する「生殖器」に関する副作用が多いことが分かります。唯一1%以上の頻度(1~5%未満)の副作用は、「リビドー減退」です。性欲については、年齢による低下もありますので、薬の影響かどうかの判断が困難な場合もあります。そういう症例も含めての発現頻度だとご理解ください。

もし、性欲などの低下が気になる場合、生活上問題となる場合は、プロペシアの服用を一度中止して様子を見る必要があります。

なお、「頻度不明」に分類されているものは、詳しい情報が不足している場合、海外で確認されている場合などで、日本でどれくらいの頻度で起こるか分からない副作用です。

乳がんとの関連について

プロペシアが関係しているか不明ですが、プロペシアを服用していた方で男性乳がんになったとの海外の報告があります。これを確かめるために海外で3つの臨床試験が行われています。それらの臨床試験での乳がんの発生率は以下の通りです。

総症例数 試験期間 フィナステリド
服用グループ
プラセボ
服用グループ
3,047例
(平均年齢63歳)
4~6年間 4例 0例
3,040例
(平均年齢64歳)
4年間 0例 2例
18,882例
(平均年齢63歳)
7年間 1例 1例

乳がんの発生率が上がるとの意見もありますが、これらの結果から考えるとプラセボと差がないと考えられますので、特別に気にする必要はないでしょう。なお、プラセボとは、外見は同じですが、有効成分が入っていない錠剤などのことです。有効成分の影響を適切に評価するために、対照として臨床試験に用いられます。

前立腺がんとの関連について

前立腺がんの発生リスクを高める可能性があります。海外の臨床試験で、18,882例(平均年齢63歳)が7年間フィナステリドもしくはプラセボを服用したところ、高悪性度前立腺がんの発現率がプラセボ服用グループで1.1%だったところ、フィナステリド服用グループで1.8%と高かったようです。ですので、フィナステリド服用中は、前立腺がんの検査を定期的に受けることをお勧めします。

プロペシアの他の薬との飲み合わせ

プロペシアは、これまでのところ他の薬と飲み合わせが悪い(相互作用を起こしやすい)という報告はありません。さらに、相互作用を起こしやすい薬とされているオメプラゾールと併用した臨床試験がありますが、薬物血中濃度の推移に変化は見られなかったようです。さらに、他の相互作用を起こしやすい6種類の薬とも併用した試験がありますが、これらの全てにおいて問題がなかったそうです。

これらの点から他の薬との飲み合わせを気にしなくても大丈夫な薬だと考えられます。

まとめ

以上、プロペシアについて様々な視点から紹介しました。
男性型脱毛症に対する効果や服用方法、使用する上での注意点、そして副作用について分かってもらえたのではないかと思います。プロペシアは、男性型脱毛症の適応を有している数少ない薬ですので、うまく使って進行を抑えたいものです。

今回の情報が、プロペシアを適正に使用するための参考になればと思います。

なお、実際の治療の際には、プロペシアと一緒にミノキシジルの薬を処方されることも多くあります。それぞれ役割が異なり、組み合わせることが効果的なためです。

ぜひミノキシジルの効果や副作用などについてもご確認下さい。

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この記事のライター

薬剤師をしています。ヘルスケア分野の情報をわかりやすく説明します。

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