男性が好きなトレーニング部位といえば胸です。盛り上がった厚い胸板を作るために、日頃腕立て伏せに励んでいる人も多いのではないでしょうか。
胸の筋肉を鍛えるエクササイズは数多くありますが、ダンベルを使って行う基本的なエクササイズの一つが「ダンベルベンチプレス」です。バーベルで行うベンチプレスのようにバーベルやベンチプレス台がなくても、ダンベルさえあればどこでも行うことができるので、比較的取り組みやすい種目といえます。
今回はこのダンベルベンチプレスについて、深く掘り下げて紹介したいと思います。
ダンベルベンチプレスとは?どこの筋肉に効く?
ダンベルベンチプレスは、ダンベルを使って行う胸のトレーニングの基本的な種目の一つです。ダンベルベンチプレスは主に大胸筋を強化します。
大胸筋は鎖骨・胸骨~上腕骨に付着しており、胸の部分の最も表層にある筋肉です。大胸筋は主に腕を内側に絞る動作で力を発揮します。日常生活ではそれほど多く使われないため、整ったボディラインを作ったり厚い胸板を作るためにはしっかりトレーニングをする必要があります。
動作において補助的な役割を果たす筋肉としては、三角筋前部と上腕三頭筋が挙げられます。三角筋は肩の筋肉で、ダンベルベンチプレスの場合は特に前部に刺激が入ります。上腕三頭筋は腕の裏側の筋肉です。それらの筋肉がお互い力を出すことによって、ダンベルベンチプレスのように力強い押す動作が可能となるのです。
ダンベルベンチプレスの正しいやり方とフォーム
ダンベルベンチプレスの正しい動作とフォームを紹介します。
(6:26 -)①ダンベルを両手に持ちベンチの上に寝ます。肘を伸ばし顔の前にダンベルを構えましょう。この時、足は少しお尻側に寄せて床についておきます。
(6:41 -)②腰を少し浮かせ、両足を踏ん張ったままカラダを頭の方へと移動します。この時、肩の位置がずれないように固定しておき、背中のアーチを作るイメージで行います。背中のアーチを作ったらそのアーチを保ちつつお尻はベンチにつけましょう。
(06:55 -)③胸を張ったまま肘を曲げてダンベルを下していきます。ダンベルが胸の位置くらいに来るまで下ろすとよいでしょう。
(06:59 -)④肘を伸ばしダンベルを持ち上げていきます。この動作を繰り返します。
ダンベルベンチプレスを効果的に行う11のコツ
ここではダンベルベンチプレスを効果的に行うためのポイントを紹介します。基本的なことばかりですが、今一度自分のフォームや動作がしっかりできているか確認してみましょう。
■①関節可動域をフルに使う
どんなトレーニングでもあてはまるのですが、関節の動く範囲をフルに使わなくては筋力や筋肥大の効果は薄れてしまいます。
ダンベルベンチプレスの場合、特に肘を曲げて下したボトムポジションにおいて、大胸筋がストレッチされるくらい下すということは重要です。ダンベルを下ろす位置が胸よりもだいぶ高い人がいますが、どんなに重い重量を扱っていても、それは効果的ではありません。
必ずしっかり下ろせるところまで下ろすことが重要です。ただし、肩に痛みが出る場合はあまり下しすぎないように注意する必要があります。
■②反動を使わない
勢いよく下した際の反動を使ってダンベルを持ち上げている人も多いようです。反動を使うことはその分負荷が減ることになります。また反動の瞬間、筋肉や肩の関節・靭帯などの組織には大きなストレスがかかります。
高重量で行っている場合、ケガの確率が高まりますので、反動をつけることはやめましょう。ケガをしてしまえば、その間トレーニングはできません。長期間トレーニングを休むことになったり、痛みで以前のような重量が扱えなくなったりなど、結果的にカラダづくりが遠回りになってしまう可能性が高いでしょう。
■③肘をロックしない
ダンベルを持ち上げたトップポジションの時に、肘を伸ばしきってロックしてしまう人も多いです。なぜ肘をロックすることが悪いかというと、ロックした状態は骨格の真上に重りが載っている形となり筋肉が力を発揮しなくても固定できる状態になります。そうすると筋肉が休んでしまいます。またロックした際に関節が過伸展してしまい、その状態で負荷がかかることで肘を痛めてしまうことにも繋がります。
追い込んで行う最後の1、2回くらいであればよいですが、トップポジションでは肘を伸ばしきらず少し曲げたまま次の動作に移るようにしましょう。
■④トップポジションは肩よりも外側で
動作中、常に筋肉に刺激をかけ続けるためには、筋肉が休憩してしまうタイミングを極力なくす必要があります。③で説明した肘のロック同様、トップポジションでダンベルの位置が肩の位置の垂直線上よりも内側にある(中央に寄せている)場合、大胸筋に対する負荷が少なくなり、休憩してしまいます。
大胸筋に対する刺激が少なく感じる人は、トップポジションで肩の垂直線上よりも外側にダンベルを持ち上げ、中央に寄せないように意識して行ってみましょう。
■⑤ベンチを使う
ダンベルベンチプレスは、基本的にフラットベンチを使用して行います。もし自宅などフラットベンチがない環境で行う場合は床に寝て行っても良いですが、床に寝た場合ダンベルを下す際に肘が地面にぶつかってしまい関節の可動域をフルに使うことができません。そのため、可能であればフラットベンチを使うことをオススメします。
ベンチがない場合、イスやバランスボールなどをフラットベンチ代わりに代用しても良いでしょう。その際は、転倒などに十分注意して行ってください。
■⑥後頭部をしっかりつける
動作中、常にしっかり後頭部をフラットベンチや床にくっつけておきましょう。ダンベルを持ち上げるときになぜか首を曲げ後頭部も一緒に浮かせてしまう人がいるようですが、頭を上げることで肩甲骨が動きやすくなり、大胸筋にかかる負荷が少なくなってしまいます。
ダンベルを持ち上げるときは後頭部をフラットベンチなどに押し付けるような意識で行うとよいでしょう。
■⑦肩甲骨を動かさない
ダンベルを持ち上げる途中で、肩甲骨が動き、肩から腕を遠くに伸ばすような動作を行う人も良く見かけます。大胸筋の刺激を減らさずに行うためには、肩甲骨は動かさないようにするとよいでしょう。
まず、ベンチに寝た際に肩甲骨を中心に寄せるようにしたまま、ダンベルを持ち上げ顔の前へ持っていきます。肩甲骨はそこから一切動かさず中央に寄せたままで肘の曲げ伸ばし動作を行います。
また、肩がすくんでしまっていてもいけません。正しいフォームの時に説明したように、肩の位置を固定したまま上体を頭の方へ移動するようにポジションを調整してから動作を行うようにしましょう。
初めのうちはポジションの位置感覚が分かりにくいと思いますが、慣れてくると大胸筋への刺激やダンベルの持ち上げやすさなどの違いが実感できるはずです。
■⑧足の裏をしっかりつける
ダンベルベンチプレスを行う場合、フラットベンチでも床でもしっかりと足の裏を床につけて行いましょう。よく、股関節と膝を90度に曲げ、床から足を浮かせた状態で行っている人がいます。
足を踏ん張る力をなくし、大胸筋をより刺激するために行っているようですが、足を浮かせることで姿勢を安定させる力が弱くなってしまいます。
特に高重量を扱っている際にバランスを崩すと危険です。動作中は必ず足を床につけ、浮かせないようにしっかり踏ん張ってカラダを支えておきましょう。
■⑨腰を少し反らせて行う
ダンベルベンチプレス初心者の場合、背中をぴったりくっつけて動作を行うことが多いと思います。確かに間違いではないのですが、より効果的に行うためには胸を張って腰を少し反らせ、背中のアーチを作った状態で動作を行うことをオススメします。
なぜならその方がボトムポジションで大胸筋をストレッチさせることができ、関節の可動域を大きく使うことができるからです。
背中のアーチを作ったうえで、後頭部・背中上部・お尻・足の裏がしっかりフラットベンチや床についていることを確認して行いましょう。
■⑩お尻を浮かさない
腰を少し反らせアーチを作ることの度が過ぎると、お尻をフラットベンチから浮かせて行う方法(ブリッジ)になりますが、そこまで行くと効果的ではありません。たしかに腰を浮かせることで重い重量を扱うことができます。しかし、それは動作の可動域が狭くなったり反動を使いやすい状態だからです。
あくまでもテクニックの一つとして行う方が良いでしょう。また、お尻を浮かせブリッジを使う方法は腰を痛める原因にもなりますので注意しましょう。
■⑪動作はAを意識して
動作中の軌道にも意識してみましょう。垂直に上下させたり、大きく半円を描くような軌道である場合、それは異なるエクササイズになってしまいます。イメージとしてはアルファベットのAのように斜めに動作するようなイメージで行うとよいでしょう。
初めのうちはダンベルが不安定のためぎこちなく、思うような軌道を描けないと思いますが、筋力がついてきたり動作に慣れてきたら徐々にできるようになってきます。軽いダンベルを使いフォームや動作の確認をしておくことも、効果を高めるポイントの一つです。
ダンベルベンチプレスの初心者におすすめの重量と回数
トレーニングをするにあたって重要なのが、使用重量と回数です。
まず初めに決めるのが、回数です。目的によって効果の現れる実施回数が異なるからです。
■筋力を高めるためには、5~7回で限界がくるくらいの重量設定で行います。
■筋肥大させるためには、8~12回で限界がくるくらいの重量設定で行います。
■筋持久力を高めるためには、13~15回で限界がくるくらいの重量設定で行います。
重量が重いものを扱うとフォームが崩れやすくなってしまいますので、フォームが正確にできない初心者のうちは、12回くらいできる軽めのウエイトで正しいフォームで繰り返し、しっかりカラダに動作とフォームを覚えこませましょう。
またトレーニング経験があり、ベンチプレスをしたことがある人は使用重量に注意しましょう。
ダンベルベンチプレスは片手ずつウエイトを扱うため、両手で行うバーベルベンチプレスにくらべ不安定で重い重量が使えません。単純に重さで考えると、仮にベンチプレスが40kg×10回で限界なら、ダンベルベンチプレスも片手20kg×10回はできる!と思いがちですが、実際は難しいでしょう。同じ重さだから可能のような気がしますが、不安定性や関節可動域の違いなどの理由によって使用できる重量が落ちてしまうのです。
ダンベルベンチプレスは、バーベルベンチプレスで扱う重量の80%くらいと考えて、重量設定を行いましょう。
ダンベルベンチプレスの平均重量
エクササイズで扱える重量には、年齢や性別、体組成など様々な要因が関係しています。そのため、平均的な数値を出すのが難しいのです。
参考程度の目安として、初心者は片方10kg×10回くらい、20kg×10回ができればそこそこ自慢できます。30kg×10回であればかなり筋力は強い方といえるでしょう。
スポーツジムなどで、これ見よがしに重いダンベルを使って間違ったフォームや動作でトレーニングをしている人が沢山います。覚えておいてほしいのが、自分が平均より上なのか下なのかということにはまったく意味がないということです。なぜなら、競技で行っているわけではないからです。
まずはしっかりと正しいフォーム・動作で行い、筋肉にいかに効かせられるかということをしっかり頭に入れて取り組むようにしましょう。
ダンベルベンチプレスの重量を増やすポイント4つ
ダンベルベンチプレスの使用重量がなかなか向上しない…とお悩みの人に向けて、使用重量を向上させるためのトレーニングのテクニックを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
■①コンセントリックは速く、エキセントリックはゆっくりと
動作には筋肉が収縮し短くなりながら力を発揮する“コンセントリック”と、筋肉が弛緩し引き伸ばされながら力を発揮する“エキセントリック”という二つの局面があります。この局面によって動作スピードを変えることが重要です。
コンセントリックはできるだけ素早く力を入れ、エキセントリックはコンセントリックは重さ筋肉にかかるのを意識しながらゆっくり動作を行います。コンセントリックが1ならエキセントリックは4くらいのカウントを目安にしてみましょう。
ダンベルベンチプレスの場合、肘を伸ばしてダンベルを持ち上げていく動作がコンセントリック、肘を曲げてダンベルを下していく動作がエキセントリックになります。軽い負荷でもダンベルを持ち上げるときに速く、ダンベルを下す時にゆっくりと意識することで、強い刺激を筋肉に与えることができます。
■②バーベルやマシンも活用して
ダンベルベンチプレスの使用重量を増やすためには、ダンベルベンチプレス以外にも大胸筋や上腕三頭筋を鍛えるエクササイズを取り入れた方がよいでしょう。
同じエクササイズで刺激になれてしまうと効果が出にくくなってしまいます。バーベルベンチプレスやマシントレーニングのチェストプレスやバタフライ、ケーブルマシンのクロスオーバーなど様々なエクササイズを行い様々な刺激を与えることで、ダンベルベンチプレスの使用重量も向上していくことでしょう。
■③事前疲労法
ダンベルベンチプレスで、大胸筋が疲労する前に上腕三頭筋が疲労してしまい動作を続けられないということがあります。そのようなことが頻繁にあるようであれば、事前疲労法を活用してみましょう。
事前疲労法とは、上腕三頭筋を使わないエクササイズによって、事前に大胸筋をあらかじめ疲労させた後、ダンベルベンチプレスを行うという方法です。
大胸筋を事前に疲労させておくことで扱える重量は少なくなりますが、しっかりと大胸筋を追い込むことができるでしょう。それと同時に上腕三頭筋も鍛えておくとより効果的です。
■④サポートをつけて
筋力を高めるには、やはり重めのウエイトを使用する必要があります。しかし、ダンベルベンチプレスは高重量で行うと動作が不安定になってしまいやすいエクササイズです。
フォームや動作が崩れてしまうだけでなく、最悪ケガに繋がってしまうこともあります。それを防ぐためにも補助をしてくれる人と一緒にトレーニングすることをオススメします。
補助がつくことで最大限筋肉を追い込むことができるだけでなく、ダンベルの持ち上げ時や下す時など安全面でも大きなサポートとなります。
まとめ
ダンベルベンチプレスは基本的な種目の一つですが、動作が難しく初心者の人にとっては取り組みにくい種目とも言えます。しかし、軌道の決まっているマシントレーニングばかりではなく、ダンベルを使ったフリーウエイトの種目を行うことで筋肉の成長が早まることも事実です。しっかりとフォームを確認しながら軽い重量からでいいので、ダンベルベンチプレスにチャレンジしてみましょう。
トレーナーとして活動しています。ダイエットやトレーニング方法についてお伝えします。