「世界一受けたい授業」減量外来ドクター。「ホンマでっか!?TV」肥満治療評論家・漢方治療評論家。その他、テレビや雑誌で多数出演・監修。
※この記事は管理栄養士資格を持つ専門家が書いています。
糖質制限ダイエットを行っているときは、パン類や麺類、果物、お砂糖など、糖質の多い食材を避けるよう心掛けていますよね。中には、神経質になりすぎている人もいるでしょう。
牛乳を飲む習慣がある人や、牛乳を使った料理が好きな人、スムージーに牛乳を入れて飲む人などは、糖質制限ダイエット中に牛乳を飲んでもいいのか、疑問に思っていませんか?
牛乳には、糖質が含まれています。当然、カロリーもあります。しかし、たんぱく質やビタミン、ミネラルなども含まれています。そのため、糖質制限ダイエット中に飲んではいけない、禁止とする飲み物にする必要はあるのでしょうか。
今回の記事では、牛乳の栄養成分や種類、牛乳を代替するにはどのような飲み物を選べば良いのかについて解説します。
牛乳1杯のカロリー・栄養成分と、牛乳の糖質『乳糖』とは?
次に、牛乳の栄養成分についてみていきましょう。
コップ1杯を200ccとすると、エネルギーになる三大栄養素と、牛乳の大部分を占める水分は、次に示す量が入っています。
水分 | 180.4g |
たんぱく質 | 6.8g |
脂質 | 7.8g |
炭水化物 | 9.9g |
牛乳は、200ccでカロリーがおよそ138kcalです。その他にも、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、鉄、亜鉛などのミネラルや、ビタミンD、E、K、B1、B2、B6、B12、C、葉酸、なども含まれています。
私たちは毎日の食事の中で、3大栄養素と、ビタミン、ミネラルをとらなくてはなりません。牛乳は、豊富な種類の栄養がとれる食品なのです。
■牛乳の糖質「乳糖」とは?
牛乳には、炭水化物が9.9g 含まれています。糖質は、炭水化物から食物繊維を引いた値になるのですが、牛乳には食物繊維が含まれないため、牛乳の糖質量は、炭水化物と同じです。
つまり、コップ1杯の牛乳には約9.9g の糖質が含まれています。
次に、糖質の種類ですが、牛乳に含まれている糖質の99%は、乳糖と呼ばれる糖質です。これは、砂糖とは異なり甘さはほぼありません。もし、この9.9g すべてが砂糖のような甘い糖であれば、牛乳はとても甘い飲み物になりますよね。
牛乳の糖である乳糖は、エネルギー源としては働くのはもちろん、鉄やカルシウムの吸収を助けたり、整腸作用を持っていたりします。しかし、私たち人間の約10%は、乳糖を分解することができない体質を持っています。そのため、牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる人がいるのはそのせいです。
種類別!牛乳のカロリーと牛乳に含まれる糖質の含有量
現在、市販されている牛乳には、次のような牛乳があります。
◯牛乳
先ほど紹介した栄養量で、生乳100%で作ったものを指します。他の原料を加えたり、減らしたり、加工したりしたものは、牛乳と呼ぶことはできません。
◯低脂肪乳
牛乳(生乳)から乳脂肪分を減らして低脂肪にした牛乳です。
牛乳と同じく、ほかの原料を入れることは許されていないため、乳脂肪分以外の成分は牛乳と同じといえるものです。
◯無脂肪牛乳
低脂肪乳よりもさらに乳脂肪分を減らし、乳脂肪分を0.5%未満に調整したものです。低カロリーなのでダイエット向きであり、病院でも脂質制限が必要な人に使われています。
◯成分調整乳
牛乳の乳脂肪分、無脂乳固形分、水分などの成分の除去が認められています。他の原料を加えることは認められていません。
◯加工乳
生乳のバターや脱脂粉乳を添加して成分を調整しています。加えても良いのは乳製品と水のみで、これまで紹介した4つとの違いは、成分の添加が許された点にあります。
◯乳飲料
加工乳よりもさらに制限なく原料を追加しても良いものです。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳などの嗜好品として人気のものはこちらに分類されます。そのため、ジュースとしてもイメージが強い乳飲料ですが、ビタミンや鉄を強化した、栄養的に優れたものも乳飲料に分類されるため、栄養強化に使える商品もあります。
加工乳や乳飲料は、製品によってバラつきがでやすいため、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、成分調整乳の栄養量を比較してみましょう。表は、100cc、コップ1/2杯での比較です。
種類 | 商品名 | メーカー | 100cc中のカロリー(kcal) | 100g中の糖質量(g) | 100g中の脂質量(g) |
牛乳 | (日本食品標準成分表より掲載) | 66 | 4.9 | 7.8 | |
低脂肪乳 | おいしい低脂肪乳 | 明治 | 49.5 | 5.8 | 1.4 |
無脂肪乳 | 森永のおいしい無脂肪乳 | 森永 | 43 | 6.15 | 0.2 |
成分調整乳 | まきばの空 | 森永 | 47 | 4.75 | 1.7 |
無脂肪乳は、脂肪分を減らすことが認められているため、三大栄養素の中でもっとも多い脂質を減らしてカロリーカットができていることが分かりますね。ただし、その分、100g 当たりの糖質量が多くなっていることも読み取れます。
低脂肪乳や無脂肪乳は、カロリーや脂質が低いためダイエット中に良いと思われがちですが、脂質が低い分、100g中の糖質量は多くなっています。そのため、糖質制限ダイエット中の方は、牛乳選びの際に注意が必要です。
牛乳は糖質制限ダイエット中に飲んでも大丈夫?
牛乳は、糖質制限ダイエット中に飲んではいけない飲み物には分類されません。カロリーや糖質があるので、積極的に飲みたい飲み物にはなりませんが、禁止する必要はないでしょう。
牛乳は、カロリーや糖質がある食品ではありますが、飲料としてはたんぱく質の含有量が多く、ダイエット食材で不足しがちなビタミンやミネラルも摂れるというメリットがあります。
■ほかのダイエット食材と比較すると?
ダイエット食材として人気の鶏のささみには、100g 中カロリーが約45kcal、糖質は0g のため、糖質制限ダイエットに向いていますよね。しかし、骨の維持に必要なカルシウムは1.29mg しかありません。それに対し、牛乳は100cc中66kcalで、カルシウムを約110mg とることができます。このように他のダイエット食材からはとれない栄養をバランスよく含んでいるという面を、持ち合わせているのです。
■ダイエット中の牛乳はどれを選べばいいの?
糖質制限ダイエット中は、カロリーや脂質も多少は制限しますが、糖質を中心に制限しますよね。そのため、カロリーや脂質が低くとも糖質量が多くなる低脂肪乳や無脂肪乳より、普通牛乳を飲むと良いでしょう。しかし、これはあまり大きな差ではありません。
普段、牛乳を飲みなれている方は、低脂肪乳や無脂肪乳のあっさりした味に違和感があり、あまり好むことができないかもしれません。価格は、加工している牛乳よりも、生乳である牛乳の価格が高いため、経済的に牛乳を飲み続けることが難しい方もいるでしょう。
そのため、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、成分調整乳の中から選ぶのであれば、好みやお財布事情で選んでも大きな問題はありません。
ただし、乳飲料を選ぶ際には注意してください。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳は、牛乳と名前がつくので、飲んでも良いような気になってしまいますが、こちらはジュースと同じようなものです。
しかし、乳飲料の中には、鉄やカルシウムを補ってくれるものがあります。そういった商品を選ぶ際には、乳飲料を選んでも大きな問題はありません。ただし、製品によってカロリーや糖質量が異なりますので、成分表示はよく確認して購入するようにしましょう。
■糖質制限ダイエット中は1日コップ1杯を目安に
コップ1杯の牛乳は、200cc程度で、カロリーは約138kcalです。これは、お茶碗1/2杯のごはんに相当するカロリーであり、決してカロリーが高いという数字ではありません。
適切な摂取量で牛乳を飲み、栄養の補給を行いながら、適切な運動をしていけば、ダイエットの妨げになることはないでしょう。
牛乳の代わりにおすすめの飲み物は?
牛乳をたんぱく質源としてメリットがある食材であると考えたとき、牛乳の代わりにおすすめできる飲み物は豆乳です。
豆乳の100g あたりの栄養は、次のようになります。
カロリー | 45kcal |
炭水化物 | 3.1g |
糖質 | 2.9g(炭水化物-食物繊維で計算) |
食物繊維 | 0.2g |
先ほどご紹介した通り、牛乳は100gあたり66kcal、糖質は4.9gです。それに対し、豆乳は100g あたりカロリーが45kcal、糖質が2.9g です。
カロリーと糖質が低いこと、たんぱく質源であること、牛乳と似た調理ができるという点から、糖質制限ダイエット中に牛乳の代替をとして用いる飲み物としては、豆乳が適しているでしょう。
それだけでなく、豆乳にはうれしい成分が含まれてます。それは、イソフラボン。
イソフラボンは女性ホルモンと似た構造をしているので、骨粗鬆症や更年期障害の予防に活用できるという研究結果があります。
女性は年齢とともに女性ホルモンが減っていきます。その際に、イソフラボンが骨粗鬆症や更年期障害による症状を軽減してくれることがわかってきているのです。
ただし、牛乳をカルシウム摂取の目的で飲む場合の代替としては、豆乳は適しません。牛乳は100g 中に110mgのカルシウムを含んでいますが、豆乳には100g中31mgのカルシウムしかないためです。
■水分補給のためならお茶や水で
牛乳は飲み物なので、水分補給をすることができます。しかし、カロリーや糖質、その他の栄養を豊富に含んでいるため、水分補給のために飲むことはおすすめできません。
水分補給のために飲むのであれば、お茶や水などの栄養がないものを選びましょう。
経口補水液やスポーツドリンクを薄めたものは、水分を体に取り込みやすい濃度に調整することができますが、そこには糖質が含まれてしまうので、糖質制限中は控えておきましょう。
まとめ
糖質制限ダイエット中には、糖質を制限するために、糖質やカロリーをもつ食材に気を使いがちですよね。しかし、私たちの体には、カロリーやたんぱく質、ビタミンやミネラルなどがある程度必要です。もちろん、糖質も全く不必要というわけではありません。
牛乳は高い栄養価を誇る飲み物です。そのため、糖質制限ダイエット中に制限をする禁止する必要はありません。適正な量を守っていれば、牛乳は飲んでも大丈夫な飲み物ですよ。
ご紹介した通り、日本では、牛乳の加工に対して、厳しい分類をしています。さらに、それだけでなく、搾乳時期の乳牛に対して、成長ホルモンや抗生剤などの薬品を投与してはいけないという決まりもあります。そのため、日本の牛乳は安心して飲める飲み物です。安心安全な牛乳を飲んで、健康的な体を作りつつ、ダイエットをしましょう。
栄養士の資格を活かして、美容関係の仕事をしています。