※この記事は、栄養士資格を持つライターが書いています。
疲労回復や滋養強壮などに良いといわれるにんにく。健康ブームの影響だけでなく、独特の香味から、長く愛されてきた野菜です。
今回の記事では、にんにくの栄養成分や、それがもつ役割について解説します。
にんにくの特徴とは?どんな種類がある?
まずは、にんにくの部位別の特徴や、種類について解説します。
◯にんにくの部位別の特徴
にんにくは、一般的に白くて丸い球根部分を食べます。球根部分を食べる以外には、「葉にんにく」「茎にんにく」「芽にんにく」などがあります。
葉にんにくは、にんにくの成長途中に収穫し、葉の部分を食べる野菜です。
次に、茎にんにくは、一般的にスーパーで「にんにくの芽」や「芽にんにく」と呼ばれている商品です。芽にんにくと呼ばれますが、正式には茎の部分を食べます。にんにくは、花をつけるのですが、その花をつけるために伸ばした茎の部分を指します。
芽にんにくは、よく見る大きなにんにくではなく、鱗片(りんぺん)単位で収穫できるにんにくです。水耕栽培でよく栽培されていて、長期保存がしやすいという特徴があります。
◯にんにくの産地
世界中のにんにくの約80%は、中国で生産されています。一般的に、中国産の野菜は敬遠しがちですが、スーパーには中国産しか置いていない店舗が存在するのは、このためです。
日本国内では、海外が産地のものが6~7割程度、国産が3~4割程度流通しています。小さなスーパーでなければ、国産と中国産の両方を置いているでしょう。
日本では、青森で育てられている「福地ホワイト六片」が高品質のにんにくといわれています。品質が良く、大きくて料理がしやすいという特徴があります。
その他にも、「遠州(静岡県)にんにく」「土佐にんにく」「山口の赤にんにく」「宮崎にんにく」「博多にんにく」、「壱州(長崎県壱岐市)」「平戸(長崎県)」「大島(萩市沖合の離島)赤にんにく」「島にんにく(沖縄)」等があります。
◯人気の黒にんにくってどんなにんにく?
黒にんにくは、その名の通り、黒いにんにくです。もともと黒いにんにくが存在するのではなく、元は白いにんにくを加工して作ります。
黒にんにくには、アルギニン、S-アリルシステイン、シクロアリイン、プロリン、ピログルタミン酸他、各種アミノ酸等がにんにくより多く含まれているということで、非常に人気になりました。
黒にんにくは、元弘前大学医学部教授 佐々木甚一氏が世界中に広めたといわれています。黒にんにくの製法は様々ですが、家庭用の炊飯器でも作ることは可能です。記事の後半には、黒にんにくの作り方もご紹介します。
にんにく100g・ひとかけの栄養成分
にんにくの栄養成分は、次の通りです。
100gあたり | 1カケ(6g) | |
エネルギー | 136kcal | 8.16kcal |
たんぱく質 | 6.4g | 0.38g |
脂質 | 0.9g | 0.05g |
炭水化物 | 27.5g | 1.65g |
食物繊維 | 6.2g | 0.37g |
うち水溶性食物繊維 | 4.1g | 0.25g |
うち不溶性食物繊維 | 2.1g | 0.13g |
糖質 | 21.3g | 1.28g |
100g単位でみると、炭水化物が多く、食物繊維が比較的豊富であることがわかります。しかし、にんにくは、一般的に1回の食事で1カケ程度しか食べません。
そのため、1回の食事で、体に影響があるほど特定の栄養素をとることにはならないと考えられます。にんにくは炭水化物が多いですが、ダイエットであっても、1度くたくさんとらなければ問題ありません。
ただし、居酒屋によくある「にんにくの素揚げ」は炭水化物と、揚げたことによる脂質が非常に多くなりますので、注意が必要です。
にんにくの効果効能をつかさどる「アリシン」とは?
にんにくは、サプリメントの種類が非常に豊富で、複数の効果効能を紹介されることが多くあります。その効果効能の根拠は、アリシンという成分によるものがほとんどです。
アリシンは、にんにくの匂いのもととなる成分で、「栄養素」には含まれません。
日本では、栄養素を「エネルギーに変換される、タンパク質、脂質、炭水化物」「体の調整をする、ビタミン、ミネラル」としています。
その分類の根拠の1つに、「不足すると健康被害をおよぼすもの」という特徴があり、アリシンは不足しても体に不調をおよぼすことはないため、栄養素としては扱われません。
他に例をあげると、目に良い成分として有名なアントシアニンも栄養素ではありません。アントシアニンは目に良い効果効能を持っていますが、不足しても目に悪影響を及ぼすようなことはないため、栄養素としては扱われないのです。
アリシンの一部は、体内の反応で活性型ビタミンB1になるものもありますが、アリシン自身は栄養ではないので、『食品成分表示』でもアリシンの数字を見かけることはほぼないでしょう。
にんにくのアリシンによる効能効果5個
にんにくには、アリシンいう成分が含まれています。アリシンの効果を中心に、にんにくのもつ栄養素や成分に期待されている効果をご紹介します。
■①疲労回復効果
にんにくには、アリシンとビタミンB1が含まれています。これらの成分は、疲労回復に効果があるといわれています。
まず、ビタミンB1は、代謝の過程で乳酸をたまりにくくするための反応の酵素を助けるという性質があります。
次に、アリシンは、体内でアリチアミンに変換されます。このアリチアミンは、活性持続型ビタミンB1と呼ばれていて、これに変換されることで長時間血液中に留まることができるため、普通のビタミンB1よりも長時間疲労回復のための反応を助けてくれると考えられています。
■②冷えの改善
アリシンには、熱を加えることでスコルニジンという成分に変わるという性質があり、このスコルニジンは、血行をよくしてくれます。
冷え性の多くは血行不良により体の部位が極端に冷たくなることでおこります。特に女性は末端が冷えやすいという方が多いですよね。そして、冷え性が続くと、肩こり、肌荒れ、腰痛、関節痛などの原因にもなります。
■③動脈硬化予防
動脈硬化は、動脈の弾力が失われて、硬くなった状態のことです。これが進行すると、血管にコレステロールがたまって、血液の流れが滞りやすくなります。
にんにくに含まれているアリシンには、血行をよくする作用と、コレステロールを減らす働きがあるため、動脈硬化予防につながるといわれています。
■④免疫力を高める効果
にんにくに含まれるアリシンには、強力な殺菌作用があります。そのため、風邪などの感染症にかかりにくくなるという効果が期待できます。
■⑤美肌をサポートする効果
血行不良の状態が続くと、肌の明るさやツヤが失われ、くすんだ肌になってしまいます。にんにくのアリシンは、血行をよくしてくれる効果があるため、美肌作りのためにも積極的に、アリシンをとりたいですね。
漢方としてのにんにくの働き
にんにくは、漢方としても使われている食材です。
漢方とは、現在の医学である西洋医学とは別の、中国で発展していた医学の一種で、はり、きゅう、指圧などもと漢方薬での治療をまとめて漢方と考えます。
にんにくが、漢方として使われるときは大蒜(おおびる)と呼ばれています。
にんにくには、抗菌作用があるため、赤痢菌、黄色ブドウ球菌などに効果があるとされ、薬のように使われてきました。赤痢菌は、今でも衛生状態が発展していない国の幼児が、毎年何十万人も命を落としている恐ろしい病気です。現在のように医療や薬が発展していなかった時代には、にんにくの殺菌作用が重宝されていたでしょう。
そのほかにも、にんにくを漢方薬として使うと、胃を温めたり、消化機能を助けたりする効果があります。そのため、胃が冷えて、胃腸の動きが鈍くなっている人にも、使われてきました。
私たちは、日常生活の中で、薬としてにんにくをとることはなくなりましたが、漢方薬として使われてきた歴史があるため、今でも健康に良い食材としての高い支持を得ていると考えられます。なお、「古事記」ではヤマトタケルがにんにくを魔物に投げつけて退治したことが記されてます。にんにくはこの時代ではすでに食べられていたようです。
にんにくは加熱すると栄養素や吸収率が変わる?
加熱をすると、ビタミンCなどの一部の栄養素は壊れてしまうものもありますが、にんにくの場合は、加熱の影響を考慮する必要はないでしょう。
「ゆでる」「ゆでこぼす」ような調理をしたときには、ビタミンCの48%、が失われるという報告もありますが、にんにくでは、一般的に、そのような調理はしません。
にんにくは、炒め物の風味出しや、ぎょうざタネの風味出し、にんにくの素揚げ、などの方法で食べることが多いため、加熱による栄養素の損失を考慮する必要はないでしょう。
にんにくのおすすめの食べる頻度と量
にんにくは、薬ではなく食べ物なので、重篤な副作用は持ちません。ただし、刺激物ではあるので、胃腸が非常に弱い方には、お腹のトラブルを引き起こす可能性もあります。
一般的に、炒め物に使うのであれば、1カケ(6g程度)を使用しましょう。
にんにくが好きな方は、素揚げなどでにんにくを1個丸ごと食べても良いですが、翌日に臭いが強く残るため、休日の前日等に食べることをおすすめします。
にんにくを食べた後の臭いの原因と対策5つ
にんにくの臭いの原因は「アリシン」です。効果効能をもつアリシンですが、にんにくの欠点である強烈な臭いの原因になってしまっているという一面もあります。
そのため、にんにくを食べると、においの原因物質は、必ず食べることになってしまうのです。
①牛乳を飲む
牛乳に含まれるたんぱく質が、アリシンを包み込んで、臭いをやわらげる効果があるといわれています。できるだけ、にんにく料理を食べる前または食べている間に牛乳を飲むと良いでしょう。
②ポリフェノールやカテキンを含む食材を食べる
お茶のカテキンやりんごのポリフェノールには、消臭作用があるといわれています。カテキンやポリフェノールを含む食材を食べると、臭いをやわらげる効果が期待できます。
③水分をたくさんとって、成分を体外へ出す
体臭の原因は、血液や汗に臭いをもつ成分が含まれるからだといわれています。
口臭以外からの臭いは、血液や汗によるものと考えられているため、できるだけ水分をたくさんとって、汗や尿からにおい成分を体外へ出すようにしてください。
④市販の口臭対策商品を活用する
口臭が気になる場合は、市販の口臭対策商品も活用しましょう。ミントを使ったタブレットは、口の臭いを消してくれます。食品で対策をすることよりも、口臭対策専用の商品を使ったほうが、臭い対策としては有効と考えられます。
⑤低臭にんにくを使う
にんにくの臭いが気になる方のために、低臭にんにくというものが開発されています。食べるときににんにくの香りがある状態で、加熱すると臭いがのこらないという商品です。外食産業を中心に販売されており、ネット通販を使えば、一般の消費者でも購入することができます。家でにんにくを調理する場合は、一度試してみてはいかがでしょうか。
にんにくの健康に良い効果的な食べ方・調理方法4つ
にんにくを食べるときには、次のような食べ方がおすすめです。
1. 刻んだり潰したりする
2. 油で調理する
3. 生では食べないようにする
4. 加熱したものを2から3片食べる
まず、アリシンは細胞を壊すことで発生するという報告があります。そのため、刻んだり潰したりすることをおすすめします。次に、アリシンは油でコーティングされていると成分が壊れにくくなるため、アリシンを効率よく取り入れるために、油を使った調理をしましょう。
次に、生のにんにくは、食べにくいだけでなく、腹痛をおこしてしまうことがあるといわれていますので、できるだけ加熱して食べることをおすすめします。
また、食べ過ぎると匂い原因になりますので、2〜3片くらいの量を食べるとよいでしょう。
にんにくの健康や美容におすすめの料理レシピ5つ
にんにくを使ったレシピを5つご紹介します。
■①黒にんにく
<材料>
にんにく:適量
<作り方>
にんにくを炊飯器に入れ、蓋を閉じたら炊飯器を保温モードにする。10日から2週間で成熟する。
<ポイント>
成熟したかとうか見極めるためには、にんにくが完全に黒色になっているかを確認してください。にんにくがまだ白い場合や、黒色ではなく茶色に近い場合は、成熟期間を延長してください。そのため、成熟期間の10日以降は、毎日色味を確認すると良いでしょう。
<注意点>
炊飯器は、高価なものである必要はありませんので、専用の炊飯器を用意してください。古いものや、リサイクルショップで安く手に入れると良いでしょう。黒にんにくを作るために使った炊飯器には、にんにくの強烈な臭いが残ります。
特に炊飯器の釜の部分や蓋の部品の臭いは、洗っても、漂白剤につけたとしても、落ちることはありません。次亜塩素酸の強力な消臭力を使っても、消すことはできません。
そのため、黒にんにくを作るために使った炊飯器では、ご飯を炊くことはできません。間違って、家でご飯を炊いている炊飯器や、高価な炊飯器を使わないように注意してください。一度黒にんにくを作るために使った炊飯器では、二度とご飯は炊けません。
■②じゃがいものとベーコンのガーリックバター炒め
<材料>
・じゃがいも:200g
・ベーコン:30g
・タマネギ:150g
・にんにく:1/4個
・バター:10g
・しょうゆ:大さじ2
・みりん:大さじ2
・砂糖:大さじ1
<作り方>
1. じゃがいもは、泥を落としてきれいに洗い、皮を剥いて一口大に切る。切った後、レンジでやわらかくなるまで加熱する。
2. たまねぎは、1/2にカットした後、スライスする。
3. にんにくは、皮をむいてみじん切りにしておく。
4. ベーコンは、食べやすいサイズに切る。
5. バターをフライパンで加熱し、にんにくを炒める。
6. にんにくの香りがしてきたら、じゃがいも、たまねぎ、ベーコンを入れて炒める。
<ポイント>
じゃがいもは、炒めるだけでは火が通りにくいため、炒める前にレンジで加熱しておきます。
■③フライパンで作るにんにくの素揚げ
<材料>
・にんにく:適量
・オリーブオイルまたはサラダ油:適量
・塩
・ブラックペッパーまたはこしょう
<作り方>
1. にんにくの皮を剥き、根の部分を1粒ずつになるようにバラす。
2. フライパンにオリーブオイルまたはサラダ油を多めに入れる。小さめのフライパンで、大さじ2~3程度が目安。
3. 油があたたまってきたら、にんにくを入れて中火で揚げ焼きにする。フライパンを傾けて、にんにくが油につかるような角度にする。
4. こんがりとした茶色になったら、キッチンペーパーにとって油を切る。
5. 塩とブラックペッパーまたはこしょうで味を調整する。
<ポイント>
揚げ物用の鍋を使用しなくてもできる素揚げ風の揚げ焼きです。手軽に素揚げのにんにくを作ることができます。お酒のお供にぴったりですが、食べすぎると臭いの原因となりますので、注意してください。
■④炒め物や煮物に使えるにんにく味噌
<材料>
・にんにく:小~中サイズ1個
・味噌:100g(和え物等に使う味噌または、好みの合わせ味噌)
・砂糖:大さじ4
・みりん:大さじ2
・酒:大さじ2
<作り方>
1. にんにくの皮をむいてみじん切りにする。
2. 鍋でにんにくに火を通す。焦げてしまうのが心配な場合は、レンジで30秒から1分程度加熱してもOK。
3. にんにくの入った鍋に、すべての調味料を入れる。
4. とろみが出るまで煮詰める。
5. 粗熱がとれたら保存容器に入れて保存する。
<ポイント>
調味料やソースとしても使えるにんにく味噌です。炒め物や煮物に使ったり、冷奴にのせたりして使うと便利なアイテムなので、週末に作りおきをしておくような使い方をおすすめします。
■⑤常備保存に!にんにくのはちみつ漬け
<材料>
・にんにく:200g程度
・はちみつ:200~300g
・薄切りにしたレモン:適量
<作り方>
1. にんにくは、皮をむいてサッと湯にくぐらせるか、レンジで30秒~1分程度加熱する。
2. しっかりと冷ます。
3. 清潔な容器ににんにくを入れ、はちみつとレモンを加えて密閉し、冷暗所に保存する。
4. 3カ月~4カ月程度漬けてから完成。半年以上漬けこむと、マイルドにはなりますが、食感はなくなっていきます。
<ポイント>
生のレモンが無い場合は、レモン汁を入れてもOK.レモンが嫌いな場合は、入れておかなくても問題ありません。はちみつレモンのような味が嫌いな方は、レモン無しで作りましょう。
まとめ
にんにくは、古くから健康に良いとされ、漢方にも使われてきました。現在でも、冷え性の改善や、生活習慣病予防への効果が期待されています。
しかし、にんにくは強烈な臭いを持つため、たくさん食べることには適していません。そして、食べてしまったにんにくの臭いを消すことは、非常に困難です。にんにくをたくさん食べたい方は、できるだけ休みの前の日に食べると良いでしょう。
にんにくは、香味野菜なので、炒め物や焼き物に広く使われています。今回の記事では、にんにく味噌にしたり、はちみつ漬けにしたりと、少し変わった使い方をご紹介しました。いつもとは少し違ったアレンジをして、ぜひレパートリーを増やしてくださいね。
栄養士の資格を活かして、美容関係の仕事をしています。